一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

植物油の道

2.世界の植物油生産と貿易

(1)植物油の生産

 世界の植物油生産や貿易量に関しては、前述の10油糧種子から得られる油に、果肉から抽出するパーム油とオリーブ油、副産物利用のとうもろこし油を加えた13種の植物油の統計が整理されています。

図6 主な植物油の生産量の推移

(単位:千トン)

(単位:千トン)

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資料:図1に同じ

資料:図1に同じ

 2021/22年の植物油の生産量は全体で2億1,503万トン、この内、パーム油が7,766万トン、大豆油が5,988万トンで、この2つの油種が世界の植物油市場を主導しています。日本で最も多く生産・消費されている菜種油は、世界では第3番目に多い植物油となっています。

 主な植物油の生産量を油種別にご紹介しましょう。

大豆油
 大豆油は、世界最大の大豆生産国であるアメリカが同時に最大の大豆油生産国でもありましたが、最近では中国が膨大な大豆を輸入して搾油することとなり、アメリカを追い抜く存在となりました。以下、ブラジル、アルゼンチンと続き、上位5カ国で総生産量の8割弱を占めています。この内、アルゼンチンは、大豆より大豆油の輸出を優先する施策を取っていることから、ブラジルの生産量を上回ることもあります。

菜種油
 菜種油の生産も、主要な菜種生産国が上位を占めています。中国は、2008/09年から菜種油の生産が510万tの大台に増加。これは、中国の菜種搾油工場は菜種の生産地である内陸部に立地していましたが、2008年から中国の沿岸部にも輸入菜種を搾油する工場が建設され搾油開始されたことにより、2012年、2013年に580万t迄増加。この間、カナダから輸入する菜種が黒足病(Blackleg)の病原体を運び、中国国内の菜種生産に打撃を与えるとの理由で輸入制限を行ったこと、その後の、中国・カナダ間の協議による、国内産菜種に影響を及ぼす懸念がないとされる港湾輸入制限廃止による増減が生じた。その後、中国では、小麦転換による菜種の国内生産が減少や夾雑物問題による菜種輸入減少の影響もあり菜種油生産は減少し近年300万t台前半の生産量で推移しましたが、2021年から増加に転じ直近2022年では400万t台に増える動きとなっています。

 EU諸国は、拡大しているバイオディーゼル需要(後述)から、ドイツやフランスで菜種油の生産が増加した状態で推移しています。

 世界の菜種供給国となったカナダでは、国内における菜種油生産設備の増強が進んでおり、菜種油の生産が着実に増加しています。2021年産菜種の不作から2021/22年は大きく減少しましたが、2022/23年は原状には届きませんが回復に転じました。

 日本においては、菜種油の需要が底堅いことを反映して、菜種油の生産が増加する傾向にありましたが、近年は横這いで推移しています。2021/22年はカナダ産菜種の2021年産の不作影響もあり例年より減少し、2022/23年は原状には届きませんが回復に転じました。

パーム油
 パーム油の生産は2006/07年にインドネシアがマレーシアを追い越し、世界最大の生産国となっています。インドネシア、マレーシアの2か国で世界の生産量の8割を占めています(2021/22年)。パームはアフリカ原産の熱帯性の永年性樹木(常緑樹)で、一度植栽すると概ね40年間は高い生産力を保持するとされています。また、年間を通じて絶えず果実の収穫が可能です。この為、1年1作の油糧種子とは異なり、生産面積当たりの油の生産性が極めて高いという特徴があります。油糧種子の中で油分が相対的に高い菜種でも、1haの収穫面積から生産される菜種油は800kg弱に過ぎません。これに対し、収穫面積1ha当たりのパーム油生産量は3.7トンに達します。しかし、経済的生産樹齢(約40年)を超えると生産力が低下しますのでパーム樹の改植が必要となりますが、パーム油の価格高が続くと生産者は一時的に収入が無くなることに繫がる改植を控えることとなります。

 パーム油の高い生産力に着目し、原産地であるアフリカでは、産業振興の起爆剤の一つとするとの考え方からパーム生産を増加させる動きが広がっています。パームの生産は温暖多雨の気候条件が必要で、南北の緯度10度の範囲が栽培適地とされています。この為、この気候条件に適するタイ等の東南アジア、アメリカ南部、中米諸国でもパームを栽培する動きが広がっています。

 その他の油種も含め、最近の油種別・国別の植物油生産量を表3に示しました。

表3 主な植物油の国別生産量の推移

(単位:千トン)

(単位:千トン)

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資料:図1に同じ

資料:図1に同じ

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