一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

植物油の道

1.植物油の原料

(3) 世界の油糧種子の生産

 植物油の原料の内、最も重要となる油糧種子は世界中の国々で生産され、その種類は多岐にわたっています。思いがけない種子から植物油が抽出されていることもあります。従って、油脂原料に利用されている種子の全てを把握することは不可能なことですが、国際的に取引される主な油糧種子(10種)について統計が整理されています。

 主な油糧種子の世界の生産量は、人口増加等による油脂需要の増加を追いかけるように増加しています。油糧種子の生産は、天候の変動と生産農家の播種意向によって左右されます。特に、油糧種子の生産に適する地域は他の農産物にとっても生産に適した地域となることから、生産農家は、限りある耕地をどの様な作物に配分して利用すると経営として最も効率的であるかを考慮して、生産の意思決定を行います。

 生産農家は、播種の数か月前に市場価格等の指標によって他の農産物との経済性の優劣比較を行い、自らが有する農業機械や労働力の配分を考慮して作物を選択します。そして、現実の播種時期における気温と土壌水分という天候条件を考慮して、最終的な作物別の播種面積を決定します。一旦播種しても、天候条件が不良で発芽しない様な場合には、急いで別の作物に切り替えることもあります。播種が終了すると、その後は生育中の気温、日照、水分が生産量と品質を決定する要因になります。

 世界の油糧種子生産量を図1に示しましたが、2007/08~2008/09年にかけて生産量が減少し、2009/10年から急増していることが分かります。2007/08年にはアメリカ産大豆の減産、2008/09年には南米産大豆の減産があったことが大きく影響しています。そして、世界的な信用不安から投機資金が農産物市場に流入したこともあって、2007/08年にとうもろこし、小麦、油糧種子等の農産物の国際価格が高騰して史上最高値を記録し、その後急落するという激しい変動がありました。この変動の中で、油糧種子の価格については急落後も高騰前の水準に戻ることなく、相対的に高い価格が維持されました。この為、他の農産物に対して高い経済的優位性が維持され、農家が油糧種子の生産を増やす行動に出た結果が2009/10年の増産に結びついたと見られます。その後、2011/12年には不調な天候によりアメリカ産大豆がやや減産となり、続いて南米産大豆が大幅に減産となりました。続く2012/13年度は、アメリカ全土が56年ぶりと伝えられる干ばつに襲われ、とうもろこし等に大きい被害が生じました。この為、油糧種子の国際需給は逼迫感を強め、農産物価格が再び高騰し、とうもろこし、大豆ともに史上最高値を更新。しかし、アメリカ産大豆はハリケーンのもたらした雨により大幅減産を免れ、その後、南米大豆が増産に転じたことから、2012/13年の油糧種子の生産量は前年度より増加することとなりました。その後、2013/14年から2018/19年にかけて概ね増産傾向。2019/20年は減産も高い水準を維持し2020/21年以降は回復、増産傾向にあり高水準を維持しております。この背景として、大豆油へのバイオ燃料需要増が、農家の大豆増産意欲増に繋がっていると思われます。植物油は、世界的に人口増等により食料需要の増大が続いていた事に加え、再生可能燃料としての需要も重なっている事等から、国際価格は以前に比べ高い水準にあります。

 世界の油糧種子生産量約6億トンの内、大豆が過半を占めています。この為、世界の油糧種子市場は大豆によって主導されていると言っても過言ではありません。油糧種子の国際価格は、大豆の価格変動につれて他の種子の価格が並行的に動くことが一般的です。

図1 世界の油糧種子生産の推移

(単位:百万トン)

図1

資料:ISTA Mielke社「Oil World」2022/23年報ほか各年報

資料:ISTA Mielke社「Oil World」2022/23年報ほか各年報

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