一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
令和7年の幕開けに当たって(年頭所感)
―食料安全保障とサステナブルな植物油業界の発展に向けて―
明けましておめでとうございます。皆様には、令和7年の幕開けをお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。
昨年は元日に能登半島地震が発生し、また、台風等による大雨の被害等の災害が頻発しました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、早期の復旧・復興を祈念するものです。
昨年6月に食料・農業・農村基本法が改正されました。農業関係者、農村地域の方々だけでなく、私ども食品産業に携わる者にとっても国の施策の基本となる法律であり、1999年に制定されて以来、四半世紀振りの見直しとなりました。改正の内容は多岐にわたりますが、基本理念の一つに「国民一人一人の食料安全保障の確保」が掲げられたことは大きなポイントであるとされています。ここで「食料安全保障」とは、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人が入手できる状態」と規定され、FAO(国連食糧農業機関)などの国際機関と同じ考え方です。
現在、世界では7億人を超える人々が飢餓(慢性的栄養不足)状態にあることに加え、その他にも23億人を超える人々が中程度(お金の不足などで1年間に食料の質・量を減らさざるを得ないことがあるレベル)または重度(食料を使い果たし、1日以上食料を摂取できない状態で過ごしたことのあるレベル)の食料不安に直面し、新型コロナ禍の2020年に急増して以降状態は改善されておらず、また、我が国においても、経済的理由、地域の公共交通機関の整理等により、食品アクセスの機会が必ずしも十分確保されていないという実態があります。
こうした状況の中で、私ども植物油業界は、植物油という国民生活、食品産業にとって不可欠な基幹的な物資を、
という責務を負っており、我が国の食料安全保障の確保に当たって、極めて重要な役割を果たすことが求められています。
一方、植物油業界を取り巻く環境をみますと、国内の家庭用、業務用、加工用いずれも新型コロナ禍前の出荷量水準には戻っておらず、生産国における天候の影響等による大豆、菜種等油糧種子の生産量の変動やオリーブ油価格の高騰、バイオ燃料需要の着実な拡大等を反映した原料価格の変動リスクの増大、原料調達・搾油・製品輸送等事業活動全般にわたるエネルギーコストの高騰、為替の円安継続等サステナブルな企業運営に当たって依然として厳しい試練とリスクに直面しています。
こうした状況を踏まえ、私ども日本植物油協会としては、日加なたね協議、日米パートナーシッププログラム、日豪なたね情報交換会という二国間での協議等を油糧輸出入協議会と共催し、当年産の大豆、菜種の生育状況と生産の見通し、品質の状況、サステナブルな生産への取組の状況、バイオ燃料等非食用需要の動向、鉄道ストライキなど輸送に係る状況等会員各社が原料調達に当たって必要となる情報の収集、生産国関係者との意見交換の場を設けて参りました。
収穫期前の気温、降雨等の気象条件は収穫量・品質に大きな影響を与えますが、USDA等公的機関の見通しには直ぐには反映されませんので、協会会員各社が正確な情報を生産国の関係者から直接伺うことはとても貴重なものですし、また、私も出席された各国の関係者の方々と個別に意見交換しているところです。
昨年で日加なたね協議は48回、日米パートナーシッププログラムは28回を数え、こうした取組を通じて築かれた輸出国の関係者との信頼関係は、平時はもちろん、有事の際の原料の安定調達に際しても有益であることは間違いなく、食料安全保障の確保の重要な柱であると確信しており、将来に繋いでいくべく、本年においても確り対応していきたいと考えております。
協会会員各社は、原料調達・製造・販売環境の各段階で大きな変動リスクに直面する一方、原料調達を含めたサプライチェーン全体における温室効果ガスの排出量削減に向けた取組についてのステークホルダーに対する情報開示等の地球環境に対する社会的な要請、植物油の賞味期限の延長技術や包装容器の改善、「2024年問題」等の物流改革等様々な要請や課題に対応しつつ、サステナブルな事業活動の実現を求められており、協会としても産業、国際、表示、技術、広報等の各部会の活動を通じて会員各社のサポートに努めて参ります。
本年も国の内外、分野を問わず、様々な事態が重層的に生じてくることが予感されます。こうした時こそ共通する課題に対応し、会員相互がコンプライアンスに留意し、フェアな競争を行いつつ、確りとした事業基盤を構築して参らねばなりません。
植物油を提供する各業界の皆様と連携し、将来にわたり国民の命と健康を守るために不可欠な植物油を、消費者の皆様、加工・業務用にご使用いただいている事業者の皆様に、高い品質を維持しながら、適切な価格で安定的に供給することを通じて我が国の食料安全保障の確保に貢献し、サステナブルな植物油業界に向けた事業展開に鋭意努める所存です。
本年も皆様の倍旧のご交誼とご指導を賜りますことをお願い申し上げ、更に皆様にとりまして良い年になることを祈念して年頭のご挨拶とさせていただきます。
(以上)