一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
令和6年の幕開けに当たって(年頭所感)
―「植物油の更なる価値向上を目指して」―
明けましておめでとうございます。皆様には、令和6年の幕開けをお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。新しき年が皆様にとって希望に満ちたものでありますことを心より祈念申し上げます。
長きにわたって世界中を席巻し、内外の経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルスの影響も、5類移行以降ようやく収斂の方向が見え、ポストコロナの新たな時代を迎えています。
コロナ禍が続いた、この数年において、私ども植物油業界を始めとした食品産業は、国民の命を守る為、安定した食料生産と供給というサプライチェーン機能の維持へ役割を果たしてきましたが、外食産業等への影響は大きく、業態によっては未だにコロナ禍前の水準を取り戻せていない状況です。
私ども植物油業界は、家庭用、業務用共に販売数量が低迷する中、油糧種子等の海外市況による原料価格高騰やエネルギーコストの高騰に加え、為替の円安継続、物流費の高騰等に伴い、企業運営にあたっての基礎的な与件に大きな変動が生じる等、依然として厳しい試練とリスクに直面しています。
国連食糧農業機関(FAO)は世界の食料価格の動向を示す数値として、植物油等主要5品目で構成される価格指数を公表していますが、指数は一昨年の歴史的な価格水準からみれば、現在は少し落ち着きを取り戻しているものの、過去平均に比べ、依然、高水準で推移しています。
背景には、ロシアによるウクライナ侵攻等の特殊要因もありますが、世界的な人口増加に伴い食料に対する需要が増加しているにも関わらず、供給面では温暖化に伴う異常気象に対応する為のカーボンニュートラルの世界的潮流を受けバイオ燃料等の工業用需要が拡大する等、需要と供給面での構造的変化が影響を及ぼしています。とりわけ、バイオ燃料需要の着実な拡大に伴い、食料と工業原料の競合が激しくなってきている状況です。
FAOを含む国連5機関による最新の報告書によれば、2022年の飢餓人口は7~8億万人程度と推定され、コロナ禍前から1億万人強増加しています。また、世界人口の約3割に当たる24億人程度が中度または重度の食料不安に陥り、9億人以上が深刻なレベルの食料不安に直面している事態に対して警告を発しています。
こうした変化の中、食料の安全保障という概念が、これ迄以上に重要になりつつあり、農林水産省においても、こうした事態を踏まえ、昨年より「不測時における食料安全保障」に関する検討会を立ち上げ、今後の方向が鋭意検討されたところです。食用油脂の需給はタイト化しつつあり、これらの変化の多くは、構造的な変化とも言えるもので、不可逆的な事象であることを、原料輸入者・食品製造者から消費者に至るまで広く認識を共有し、国及び産業界全体で対策を講じていく必要があります。
我が国においては、コロナ禍という未曾有の事態に直面し、生活様式や食のスタイルも変化していますが、ポストコロナにあって、所与とされてきたパラダイムが、今、内外ともに大きな変革を遂げようとしています。安全・安心と健康の維持向上に対する要求水準が一層高度化、複雑化しており、高齢化が進展する中、一方で、近年、仕事や趣味にも非常に意欲的なシニア層の増加、更には新たなライフスタイルの模索など、消費動向の変化が指摘されています。まさに、これ迄のルールや前提、常識といったものが大きく揺さぶられてきています。
植物油業界は、我が国フードサプライチェーンのコア産業の一角を占める存在であり、国民の命と健康を支える価値ある植物油を安全、安心、安定的に消費者の皆様にお届けする責務を有しています。
植物油関係各社は、コスト・販売環境の両面での大きな変動リスクに直面する中で、非価格競争に通じる多様な商品開発に努めると共に、植物油の美味しさを生かす利用法の提案力の強化、脱炭素化への取組みを始めとした地球環境に対する社会的な様々な要請への対応、植物油の使用期間の延長技術や包装容器の改善、「2024年問題」対応等の物流改革、企業間連携による最適サプライチェーンの創出を含め、更なる生産性向上と高付加価値化、サステナビリティ確保等の努力を通じて、業界全体の更なる発展を目指す所存です。
本年も国の内外、分野を問わず、様々な事態が重層的に生じてくることが予感されます。こうした時こそ共通する課題に対応し、会員相互がコンプライアンスに留意し、フェアな競争を行いつつ、業界の健全な発展を推進して参らねばなりません。植物油を提供する各業界の皆様と共に、将来にわたり世界最高の長寿国ニッポンを支え、命と健康を守ると共に、多様な機能を有する植物油の価値の再認識と、更なる向上を目指し、安全、安心で確かな品質の製品の持続的な安定的供給体制の維持に総力を挙げて取り組むことが益々重要になってまいります。
今後、業界内部はもとより、内外の関係者と積極的な対話と情報共有等を行うことを通じて、共に活力に満ちた活動を展開する必要があると考えております。私どもはこうした活動を基本に、業界全体の持続的成長に向けた事業展開に鋭意努める所存です。
本年も皆様の倍旧のご交誼とご指導を賜りますことをお願い申し上げ、更に皆様にとりまして良い年になることを祈念して年頭のご挨拶とさせていただきます。
(以上)