一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
「植物油っていろいろあるけれど、使い方がもう一つ分からなくって・・・。」
「あのお店の天ぷらは美味しいけど、家庭であの味を出すのは無理よね・・・。」
「油をもっと上手に使うコツってあるのかしら・・・。」どなたでも、こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
確かに、油の使い方は調理方法や素材によって千差万別。お料理の本でも丁寧に解説しているものは少ないように思います。
このコーナーでは、「和・洋・中」の料理の達人に「植物油の上手な使い方、生かし方」をお聞きし、皆様の疑問やお悩みにお答えいたします。
食通をうならせる熟練の技を持つ達人たちの「逸品」。その隠された創意工夫の一端を知るだけで、いつもの料理が得意料理に変身するかもしれません。
そして、変身したお味にご家族のみなさんも大満足!さあ!達人の知恵を知り、四季を通じて「植物油を生かした美味しい料理」をお楽しみ下さい。
店名の「ラ・カシータ」とは、スペイン語で“小さな家”という意味。かつて一世を風靡したテレビ番組『料理の鉄人』に出演されたご経験もあるオーナーシェフの渡辺さんに、店名の由来を次のように語っていただきました。
「あえてメキシコのイメージを売り物にしないで、料理としての価値をしっかりと提供していきたいと思って考案しました。食べている人が幸せそうな顔をしているのを見るのが、料理人として一番の喜び。お客様の表情を目で確認できるスペースを保ちながら、食べる意識はアットホームな“家”であってほしいという願いから“小さな家”とネーミングしたのです」
まず初めにご提供いただいたのは「ノパリートスサラダ」。オリーブオイルを使用して、いかにもメキシコらしい食材であるサボテンと、トマト、インゲン、そしてカブを組み合わせたみずみずしいサラダです。
「食用サボテンは、日本で言えばインゲンとオクラの中間のような青野菜っぽいもので、アロエのような食感があります。メキシコでも健康食材として定着している食用サボテンは、牛乳の何倍ものカルシウムを含み、美肌効果も期待できるそうですよ」
食用サボテンは、サラダに使う場合でも茹でて火を通してから使用し、他の野菜とともにドレッシングで和えることが多いとのこと。あまり長く火を通してしまうと、グニャグニャになって味が良くならないので、軽くしなる程度で氷水に取り、火の入りを止めるようにして使われています。
「メキシコでは、基本的に生野菜を食べる習慣が無いんです。このお料理は、ドレッシングにあえてコショウやスパイス類を使用しないで、オリーブオイルと酢と塩だけでシンプルに味付けすることがポイント。ブレンドの目安は、オリーブオイルが「4」(約800cc)に対し酢は「1」(約200cc)をベースとして、塩は12g位(※オリーブオイル1000ccに対し15gが基準)の比率を保つようにしています」
食用サボテンの食感は層になっていて噛みごたえもあり、味は淡白で食べやすく、これらを芳醇なオリーブオイルの香りが包み込み、あっという間に一皿を食べ終えてしまった印象があります。
「ご家庭でフレッシュな食用サボテンが入手しにくく缶詰を用意される場合には、保存のための塩分が強いので、調理される前日にたっぷりの水に漬けて塩抜きされた方が良いでしょう。いずれにしても、メキシコ料理というとタコスに代表されるスパイシーな料理というイメージが強いのですが、本国では野菜をどう上手に使うかが秘訣になる、ヘルシーな料理という側面もあるんですよ」
メキシコ料理をあえて一言で表現すれば、それは、香味野菜の代表格である唐辛子(チレ)を生かした料理ということができるそうです。この唐辛子の文化は、中南米広しといえどもメキシコ独特のものであり、“プレ・イスパニカ”(スペイン文化到達以前)の時代から数千年にわたり、見事にその食における主役の地位を築いてきました。
「日本では鰹だしやいりこだし、昆布だしに相当するのが、メキシコ料理における唐辛子です。唐辛子の持っている“うま味”を最大限に引き出すことが、メキシコ料理の真骨頂と言えるでしょう」
こちらのお店では、鷹の爪に似た「チレ・アルボル」や、青唐辛子の「ハラペーニョ」、そして日本でも市民権を獲得した激辛の唐辛子「ハバネロ」をはじめ、約30種類以上の唐辛子を料理によって巧みに使い分けていきます。唐辛子はすべてが一様に辛いのではなく、種類によって風味も辛さの度合いも歯ごたえも異なるとのこと。そのため、焼く、焦がす、蒸すなど調理法も多岐に渡っています。
「二品目にご提供する『ポージョ・アル・アヒージョ』は、苦味・香り・うま味がバランス良く同居した、昆布だしに近い存在の唐辛子『チレ・パスィージャ』を使った“若鶏の唐辛子風味”と訳されるお料理です。鶏モモ肉を『チレ・パスィージャ』とサラダ油とニンニク、そして塩で焼き上げたシンプルな一品ですが、このオイルソースには絶妙の香りと味わいが存在しています」
そのソースの作り方のポイントは、若鶏のうま味をいかに植物油に溶け込ませるかにあるとのこと。
「若鶏を最初からニンニクで炒めないで、まずは塩をふった若鶏を皮目から焼いて充分に焼き目をつけたら、そのまま裏返して蓋をして焼き、若鶏のうま味を充分にサラダ油へ移していきます。そして鶏肉に9割ほど火が通ったら、そこへニンニクと『チレ・パスィージャ』を加えていく・・・。こうして、サラダ油そのものにすべての食材のうま味を与えていくのです」
エビやタコなどのシーフード類を調理する際も、植物油を単なる調味料とは捉えずに、食材のうま味や香りを植物油に移すことを心がけて欲しいとのこと。これこそが、そのレシピの美味しさの鍵を握っていると言っても過言ではないそうです。
「メキシコ料理というのは、本来は唐辛子のスパイスを利かせる料理というよりも、食材の全体のバランスを図る料理。優先されるべきはスパイスの良し悪しではなく、そのレシピがトータルで美味しく仕上がるかどうかですから」
最後にご提供いただいた「真鯛のフリッター」も、二品目と同様にサラダ油を使った一品。真鯛の香りとほど良い塩味がフワッと口の中に充満し、完熟トマトとハラペーニョのみじん切りの「サルサ」と合わせながら食せば、酸味や辛味など様々な味覚が相まって、口内に新鮮な美味しさが広がっていきます。
「真鯛の身の部分にライムを絞って香りを浸透させてから、軽く塩をふって、泡立てた卵白に卵白や小麦粉を合わせた衣を作り、150℃位のあまり熱し過ぎないサラダ油で揚げていきます。調理のポイントとしては、塩をあまり濃く付け過ぎず、かといってあまり薄く付け過ぎないようにすること。塩が媒体となって、白身魚のみずみずしい甘みまで感じとることができます」
白身魚の生臭みは、ライムで全体を柔らかくこすって消すようにし、衣を作るときは卵白を泡立て、七分立てのメレンゲを作るのがコツ。揚げる温度は、菜箸を入れたとき、細かい気泡がサッと表面に上がってくる位の温度を目安とすると良いそうです。
「スパイスや調味料も含め食材同士が上手に手をつながないと、その料理に美味しいゴールは生まれません。だからこそ、私はあまり主張し過ぎることのないサラダ油を積極的に活用しています。個性が強いもの同士が集合してもバッティングしてしまいますから・・・。あまり植物油や塩が主張し過ぎると、料理としてまとまりに欠けたものになってしまうんです」
サラダ油を使ったメキシコ料理のひとつに「メキシカンライス」がありますが、これはシンプルなようでいて、非常に手間隙がかかるそうです。
「お米を一回サラダ油で揚げて唐揚げのように色をつけてから、1時間位かけて油分を切っていきます。その後、レモンとトマトを合わせて3時間ほどかけて炊き上げていくのです。こうして、お米一粒一粒にじっくりとスープのうま味を吸わせていくことで、一段と美味しく仕上がるんです」
炊く前にお米をサラダ油で揚げることによりパラパラに仕上げられたメキシカンライスは、ここでしか食べることのできない逸品。こちらも、完熟トマトや玉ネギなどに青唐辛子を効かせた「サルサ」と一緒に召し上がるスタイルです。
「かつてはメキシコ料理に使われる油脂はラードが多かったのですが、最近はヘルシー志向からサラダ油を中心とした植物油を使うことがほとんどですね。食材それぞれの価値を認めた上で、その一皿をベストの状態にまとめ上げていくことがメキシコ料理の本質。そのベースとなっているのは、唐辛子と塩、そしてサラダ油なのです」
1976年にオープン。メキシコ直輸入の唐辛子をふんだんに使った数々のお料理を、リーズナブルなお値段で気軽に楽しむことができる。日本における本場メキシコ料理の第一人者として、現地の高級レストラン「アシエンダ・デ・ロス・モラレス(Hacienda De Los Morales)」「メソン・デル・カバージョ・バーヨ(Meson Del Caballo Bayo)」などで修業を積んだ渡辺シェフが腕を振るう。食欲を刺激するメキシコ仕込みの多彩なメニューは、親子三代にわたって通うファンがいるほど。
東京都渋谷区代官山町13-4 セレサ代官山2F
電話番号:03−3496−1850
http://www.lacasita.co.jp/