一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
「植物油っていろいろあるけれど、使い方がもう一つ分からなくって・・・。」
「あのお店の天ぷらは美味しいけど、家庭であの味を出すのは無理よね・・・。」
「油をもっと上手に使うコツってあるのかしら・・・。」どなたでも、こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
確かに、油の使い方は調理方法や素材によって千差万別。お料理の本でも丁寧に解説しているものは少ないように思います。
このコーナーでは、「和・洋・中」の料理の達人に「植物油の上手な使い方、生かし方」をお聞きし、皆様の疑問やお悩みにお答えいたします。
食通をうならせる熟練の技を持つ達人たちの「逸品」。その隠された創意工夫の一端を知るだけで、いつもの料理が得意料理に変身するかもしれません。
そして、変身したお味にご家族のみなさんも大満足!さあ!達人の知恵を知り、四季を通じて「植物油を生かした美味しい料理」をお楽しみ下さい。
タイ料理店は都内にはたくさんありますが、インドネシア料理店の数はとても少ないのはどうしてでしょうか。確かにタイほど食に関して華やかなイメージこそありませんが、インドネシア料理もタイ料理に近い特色を持っているようです。
「タイ料理に比べると酸味が少なく、どちらかと言えば、甘味を意識した味つけが多いんです。スパイスやハーブ類をたっぷりと使用するのも特徴的ですが、一方で日本人の口にも馴染みやすい甘辛い料理や、あっさりとした味つけのものもあります」
と語っていただいたのは、料理長のマデ・スギタさん。最初にご提供いただいた「ナシゴレン」は、大きな半熟の目玉焼きが乗せられているバリ風の炒飯です。
「目玉焼きをご飯とトローリと絡めて美味しい、インドネシア料理の代表的な人気メニューです。付け合わせにはトマトと海老せんべいも添えられ、スパイシーなご飯の辛味と卵の甘味、トマトの酸味などが相まって、ボリュームたっぷりですけれども飽きることなく食べ切ることができます」
「ナシゴレン」を炒める際に使われている植物油は、サラダ油です。
「フライパンに、サラダ油とおろしニンニクと卵を入れて弱火にかけ、香りがたってきたら、みじん切りにした玉ネギを加えて、しんなりとするまで炒めて、ピーマンなどのお好みの野菜を入れていきます。そして火を止めてからご飯を入れるんですが、溶き卵が固まってしまう前に、卵が温かいうちにご飯を入れて手早く和えないと、全体の味が馴染まずに美味しくならないので注意して下さいね」
この「ナシゴレン」だけではなく、どの料理もマデさんの味つけのセンスが良いと評判で、特に辛味・甘味・酸味・香りのバランスが素晴らしいとの声が聞こえてきます。
「本場ならではの料理を、あえて日本風にアレンジしないように心がけています。たとえば、付け合わせのスープにセロリやココナッツが豊かに香るようにさせたり・・・。エスニック料理が苦手な人はもしかしたら耐えられないかもしれないのですが、逆に少しでもお好きな人だったらきっとハマってしまうと思います。言い方を変えると、辛さだけを少し減らして、味わいはそのままにした本場バリの家庭料理、という感じでしょうか。インドネシア料理は、辛味と甘味のバランスをいかに取るかが重要だと考えています」
次にご提供いただいた料理は「テンペゴレン」。テンペとは、煮た大豆をハイビスカスなどの葉の表面に付着しているテンペ菌(※クモノスカビ)で発酵させたインドネシアの伝統的な無塩の発酵食品。しっとりとした厚みのある「お豆腐」のようなイメージのものです。これを、やし砂糖(※椰子の木の花から汁を取って作る砂糖)、醤油、唐辛子、サラダ油、エビの燻製などが入った特製の辛口ソースで食します。納豆に似た味わいですが、それほど粘り気を感じることなく美味しくいただけます。
「インドネシア料理の特徴のひとつは、揚げ物の種類が多いこと。その中でもテンペを薄く植物油でカリカリに揚げるテンペゴレンは、揚げ物の代表的なメニューです。日本でも一時ブームになったテンペは、大豆の発酵食品なので高タンパクな割には低カロリーで、健康志向の方にはピッタリの食材。付け合わせるソースは香辛料をきかせて、スパイシーな味に仕上げた方が、テンペの素朴な味わいと好対照となり美味しくいただけます。カラッと揚げたテンペゴレンは、ビールのおつまみとしては最高ですよね」
作り方は、厚さ3~5ミリ(※お好みで)に切ったテンペを塩、ニンニクをすったもの、ウコン(※ターメリック)を漬け込んだものの中に浸しておきます。塩味は濃い目に。それを表面がカリッとなるまでサラダ油で揚げれば出来上がり。このほかの食べ方としては、小さ目の短冊状に切ったテンペをカリカリになるまで油で揚げて、揚げたピーナツや小魚などを砂糖(※入手可能であれば、やし砂糖)と一緒に混ぜ合わせて食しても美味しいそうです
「手間はかかりますが、テンペゴレンはテンペを揚げる前に、塩やニンニクなどで下味をつけてから3時間ほど寝かしておくことが大切です。180℃位に熱したサラダ油でカラッと30秒程度、あまり時間をかけ過ぎると美味しくできません。大きな中華鍋にたっぷりのサラダ油にくぐらせ、表面がキツネ色に変わったら取り出します。地元ではパーム油を使うことが多いですが、こちらでは入手しにくいので、サラダ油でも充分に同じような味わいを得ることができると思います」
最後にご提供いただいたのは「サンバルシーフード」。別名は“シーフードのチリトマトソース”です。“サンバル”とはチリソースの総称で、唐辛子・トマト・コリアンダー・カピ(※小エビの塩辛)などを合わせた、インドネシアの代表的な調味料。インドネシア料理はサンバルという調味ソースで始まると言っても過言ではないそうです。「サンバルシーフード」の作り方をうかがってみました。
「ニンニクや玉ネギなどの具材をサラダ油で炒めて、エビやアサリやイカを入れ、途中で鍋に半分程度に水を入れて1分くらいグツグツさせてから、サンバルソースを入れ、さらにここへ甘味としてのケチャップマニス(※インドネシアの甘い醤油)を入れさらに3分程度煮込んで、味わいを複雑化して美味しくしていきます」
サンバルソースにはかなり辛い種類もあるそうですが、この店のものはとても上品な辛さ。サンバルソースを、一段とマイルドな味わいに仕上げるのがサラダ油とのこと。バリ島のハーブ類をふんだんに盛り込みながら、サラダ油で味を馴染ませているそうです。「サンバルシーフード」の具材にはぶつ切りのトマトも使っていて、シーフード類やオクラや茄子とも抜群の相性で、ピリッとした辛味ばかりではなく酸味や甘味もほど良い、いわゆる“あとを引く”ような、ご飯がすすむ美味しさです。
「この他のメニューでもサラダ油は活用していますよ。たとえばサテ(※鶏肉などの串焼き)。サラダ油はサテの味の仕込みにも使われ、お肉をジューシーに柔らかく変化させてくれます・・・。エスニック料理においても、植物油は欠かせない引き立て役と言えるんです」
一般のご家庭でも、普段作っている唐揚げや春雨サラダなどの醤油をナンプラーに、酢をライム汁に、添えるタレをスイートチリソースに変えて、パクチーや砕いたピーナツを飾ったりするだけでエスニック風になるとのこと。ともかくこちらの料理は、ひとつひとつ丁寧に作られたお料理のスパイスの使い方が絶妙で、仕込みから仕上げまで、すべてマデさんの手作りだそうです。
「インドネシアにおけるスパイスというものは、日本では言えば、漬け物やふりかけ、もしくは薬味に近い存在で、インドネシアの食卓には無くてはならないものですね。 ナシゴレン、ミーゴレンなどを含め、 炒め物やスープなどにもよく使われています。鶏の炒め物であるアヤムゴレンや、焼き魚のイカンバカールなどの付け合わせとして食す事もありますよ。やはりたっぷりのスパイスで食欲を湧かせることは、暑い地域ならではの知恵と言えるでしょう。そして温度が高いですから保存をきかせるため、植物油を使った揚げ物、炒め物、焼き物の料理が多いお国柄なんです」
東京都内で数少ない本格的なバリ・インドネシア料理を堪能できるお店。スパイス(調味料)はすべて自家製で、現地で食べるのに可能な限り近く作られている。席数は、カウンター5席とテーブル7卓15席程度と小じんまりとしているが、インテリアなどの小物にも異国情緒が感じられ、特にランチ時は行列ができるほどの人気店。
東京都港区北青山2-12-27 ハレクラニ北青山2F
http://blimade.net/