一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
「植物油っていろいろあるけれど、使い方がもう一つ分からなくって・・・。」
「あのお店の天ぷらは美味しいけど、家庭であの味を出すのは無理よね・・・。」
「油をもっと上手に使うコツってあるのかしら・・・。」どなたでも、こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
確かに、油の使い方は調理方法や素材によって千差万別。お料理の本でも丁寧に解説しているものは少ないように思います。
このコーナーでは、「和・洋・中」の料理の達人に「植物油の上手な使い方、生かし方」をお聞きし、皆様の疑問やお悩みにお答えいたします。
食通をうならせる熟練の技を持つ達人たちの「逸品」。その隠された創意工夫の一端を知るだけで、いつもの料理が得意料理に変身するかもしれません。
そして、変身したお味にご家族のみなさんも大満足!さあ!達人の知恵を知り、四季を通じて「植物油を生かした美味しい料理」をお楽しみ下さい。
辛いだけではなく、様々な味わいの約100種類の本格タイ料理を、アジアの手仕事の家具や雑貨に囲まれて楽しめるのが東京・幡ヶ谷の『セラドン』。この道一筋30年のベテランシェフ・パンヤーさんが大胆さの中にも繊細を感じられるレシピを提供されています。
「うちの料理は、バンコク中心のスタンダードなものに加えて、東北地方のイサン料理が中心となっています。他の地方の料理と比べて辛味が強く、パンチの利いた濃い目の味付けは日本人の舌によく合うんです」
最初にご提供いただいた「マナガツオのチリソースがけ」は、赤唐辛子と砂糖の入った辛さと甘さの双方を交互に感じられる深みのある一品です。
「この一皿は、ソース(※ニンニクと赤唐辛子を植物油で炒め、レモン汁や砂糖、ナンプラーなどを加える)さえ作ってしまえば意外と簡単。ソースはナムチムガイ(※市販のタイのチキンソース)で代用しても美味しいです。中華鍋に約400ccたっぷり植物油を注いだら、そこへ魚を泳がすような感覚で高温でカリッと空揚げするのがポイント。マナガツオが入手できなければ、カレイなど他の白身魚でも美味しく仕上がります」
「植物油はタイ料理においてレシピにコクや香りを与える重要な役割を占めています。暖かい国なので、植物油で栄養素を補うことも必要なので、利用する機会が多くなります。植物油を使った調理法も、揚げもの類にダイナミックに使うことが多く、サラダなどへのドレッシング的な活用は少ないですね」
タイ料理の味を一言で表現すれば“複雑”という言うことができるそうです。
「唐辛子や胡椒がピリッと刺激を加える“辛味”、レモンやライムなどの“酸味”、ココナッツミルクやパームシュガーなどのまろやかな“甘味”、味を引き締めるナンプラーなどの“塩味”、そしてこれらが相乗効果となって“うま味”を引き出しているのです。さらにレモングラス、コブミカン、パクチーなどで“香り”を添えるのがタイ料理の特徴。植物油はこれら様々な味覚を取りまとめる指揮者のようなポジションにあると言えるのではないでしょうか」
店名の『セラドン』とは、タイが誇る青磁器(陶磁器)の名称。この陶器のごとく、この店の料理は一般的なタイ料理よりも一段と磨かれている印象があります。続いてご提供いただいた「トムヤムクン」は、その代表格ということができるでしょう。チキンをベースにした香り高い濃厚で濁ったスープは、辛さよりもレモン風味の強い酸っぱさが際立ったもの。それでいてほんのりと甘く、これぞ世界でも指折りのスープという味わいを堪能できる絶品です。
「老鳥まるごと一羽と、少量の豚スペアリブでスープを取っています。辛さの中にもレモンやハーブのさわやかな後味が残るのが特徴です。トムヤムクンは、あえて大胆に申し上げれば“香り”の料理。レモングラス、ガランガー、コブミカンの葉など新鮮なフレッシュハーブや、ふくろだけなどの採れたてのキノコ類を惜しみなく入れることで、仕上がりの風味が違ってきます。市場に並ぶ新鮮な食材を美味しく食べることのできる醍醐味こそ、タイ料理の真髄ということができます」
日本の味噌汁と同様に、いろんな具材を合わせて楽しめるのが「トムヤムクン」の最大の利点とのこと。エビの代わりにホタテやイカを使っても良いし、鶏肉、豚肉のスペアリブなど好みの素材を入れて食す楽しみは限りなく広がっています。そしてこの料理のもうひとつの決め手はチリインオイル。タイ語では“ナンパリックパオ”と言われ、パオとは焼くという意味。ニンニクや干し海老などを大豆油と一緒に熱して、ペースト状にしたものです。
「じつは、このチリインオイルがパクチーなどのハーブ類やナンプラーと融合することで、味わい深いトムヤムクンが出来上がるのです。タイでは炒め物やスープに使われる欠かせない調味料。エビやカニなどをこれで炒めれば、簡単にチリソース炒めを作ることもできます。辛味、甘味、そしてうま味と三拍子揃った調味料ですから、ゆでた魚介類や生野菜につけたりしても美味しいんですよ。ぜひご家庭でもオリジナル・ソースを作っていただくことをおすすめします」
タイ料理というと、味は美味しくとも雰囲気は今一歩というイメージもありますが、こちらは雰囲気も味もサービスもよいとの評判です。
「開店して11年になりますが、味がぶれないといいますか、味が変わってこないように注意しています。タイの良さを伝えることをお店のコンセプトにしていますので、料理だけでなく、器や内装などトータルにタイの良さを演出し、少しでも多くの日本人の方々にタイという国に関心を持ってもらえるように心がけています」
最後にご提供いただいたのは「タイ風玉子焼き」。玉子焼きといえども、日本のものとは全く異なる作り方となります。
「始めにフライパンを煙が出るくらいに良く熱してからサラダ油を入れるのですが、フライパンのまわりにも丁寧にサラダ油をまわしておくことが大切です。良く熱したフライパンにたっぷりの植物油で焼かないと、玉子焼きがサクサクっとした食感に仕上がりません。分量としては200cc程度でしょうか・・・。具材(※溶き卵、豚挽き肉、万能ネギ、ナンプラーなどをよく混ぜたもの)をフライパンに入れて広げたあとは、必ず温度を中火にしてから、3分位かけて表裏を交互にゆっくりと焼き揚げていきます」
お好みで、豚挽き肉の代わりにトマトや玉ネギを入れて、ベジタリアン風にしても良いとのこと。付け合わせるソースはチリ・ソースが一般的です。
「私たちセラドンの厨房では、この玉子焼きに“チャオム”というタイ・ハーブを混ぜて、辛くて臭い“ナムプリック・カピ”をつけて食べます。そう、タイ人にとって“ナム・プリック(※チリをベースにした各種ディップ)”と生野菜、揚げなす・アジなどの魚、そしてこの玉子焼きがあれば、誰もが大満足のご馳走となるんです」
タイの食卓には、砂糖、ナンプラー、唐辛子の酢漬け、そして粉唐辛子を入れた容器のセットが必ず置かれ、各々が供された料理にさらに味をプラスして、好みの味付けに調味してから食すのが通常とのこと。タイという国の食文化は、日本食には見られない自由な魅力に溢れていることを実感しました。
2000年7月にオープン。『タイセレクト』という、タイ国商務省が認定した本場のタイ料理を味わえるレストラン。食器は全て店名にもなっているタイの青磁器セラドン。仏像やアジアのぬくもりのある家具を配した店内で本格的なタイ料理を楽しめ、アジア雑貨の購入もできる。とあるグルメサイトのタイ料理部門で都内ナンバーワンを獲得するなど、その味とこだわりは折り紙つき。
東京都渋谷区幡ヶ谷1—8—3 GSビル本館1F
※現在お店は閉店しております。