“迷子ボックス”で使いきれない食材をなくす
にんじん1/3本、ピーマン半分、玉ねぎ1/4個……。日々の料理では、食材が使いきれずに残ることもよくありますね。また「お買い得!」と飛びついた特売の肉や魚が、使われないまま冷凍庫の奥に眠っている、なんて声も聞かれます。
そこで、「ほりえ家のモッタイナイをなくす技」企画の第3回は、“迷子ボックス”で使いきれない食材をなくす方法と、皮や根っこまで余さず食べ切るホールフード調理術をご紹介。
まだ食べられる食材を捨ててしまう「食品ロス」は、資源やエネルギーの無駄遣いにもつながり、地球温暖化の原因にもなります。
この短期連載では、ほりえさわこ先生のキッチンを直撃訪問。母、娘と3代にわたって料理家のほりえ家の食卓には、食材を余さずおいしく食べ切る技に加え、食費・光熱費まで節約できてしまうエコな技が当たり前に駆使されています。その一端を担うのが、植物油の存在。色々な種類の植物油をバランス良く上手に使うと、食材が長持ちしたり、おいしさもアップ、時短にもつながります。
使いかけ野菜は「迷子ボックス」へ!
半分残ったパプリカや玉ねぎ、食べきれなかったミニトマトやみょうが、一度に使いきれないしょうがやにんにくなど、使いかけの野菜はすべてひとつのボックスにまとめて保存するのがほりえ家のお約束です。その名も「迷子ボックス」。冷蔵庫のあちこちで食材が迷子になり、いつのまにか傷んでしまうのを防ぐことが名前の由来だそう。
「大きめの保存容器にキッチンペーパーを敷き、残った野菜をどんどんここに入れていきます。野菜は収穫後、カットしてもまだ生きていて、水分を蒸散させています。ボックスに敷いたキッチンペーパーは、野菜が呼吸のたびに出す水分を吸収して、ボックス内を適度に加湿する役割をしてくれます。ひとつずつラップに包まなくても乾燥しにくいですよ。ラップの使用量を抑えられるから、プラスチックゴミ削減にも」
料理を始める際、まず迷子ボックスをチェックする習慣をつければ、使いかけ野菜の在庫が一目瞭然、傷んで捨ててしまうことがなくなりますね。
野菜は傷みやすい部分から先に使う
「万能ねぎやニラなどは、葉先からいたんでいきます。スープの彩りに万能ねぎを散らしたいというような時は、葉先から先に使うのが鉄則。残りは元の袋に入れて、軽く口を縛って冷蔵庫で保存します。野菜が入っている包装袋は、野菜が呼吸しやすいように考えて作られていて、実はとても優秀なんですよ」
また、にんじんや大根などの根菜類は、頭のほうから使うのがおすすめ。葉元が残っていると、葉っぱを伸ばそうと可食部の栄養が失われていってしまいます。
レタスやキャベツ、白菜などは、買ってきたらすぐに芯を繰り抜いたり、楊枝を刺したりしておくと、成長が止まり、日持ちしやすくなります。
「野菜の鮮度をキープする小ワザを知っていると、『早く食べ切らなきゃ!』とプレッシャーに感じることも少なくなりますね」
皮・茎・種も実はおいしい! 野菜をムダなく食べ切る技
多くの野菜は、皮の付近に栄養が豊富に含まれています。また、種は、植物が芽吹き、成長するための栄養がたっぷり蓄えられている部分です。
「野菜の皮はむくもの、種はかたいから食べられない、という固定概念を捨てて、ぜひ料理に活用してみてください。油を使って調理すると、繊維質が多い野菜の皮や茎部分もやわらかくなり、ぐっと食べやすくなりますよ。風味豊かで味の濃い皮や茎、捨てちゃうなんてもったいないです! 茎や皮だけでおいしい1品が作れるし、メニューによっては皮ごと、茎ごと調理するのもいいですね」
うまみたっぷり! 野菜の皮とじゃこのかき揚げ
野菜の皮と茎を主役に、香ばしいかき揚げを作りましょう。サクサクの食感とふわっと広がる甘味で、「あともう一個」と箸が止まらなくなる味わい。おかずの1品にはもちろん、お酒のつまみにもぴったりです。
●野菜の皮とじゃこのかき揚げ
材料(2人分)
- かぶの皮、にんじんの皮、ブロッコリーの軸…合わせて100g
- かたくり粉…大さじ1/2
- ちりめんじゃこ…大さじ3
- A:
- 小麦粉…大さじ1
- かたくり粉…大さじ1/2
- 牛乳…大さじ1.5
- 塩…少々
作り方
- ① かぶの皮は太めのせん切り、にんじんの皮は斜め切りにする。ブロッコリーの軸は、斜め切りにしてからせん切りにする。
- ② ポリ袋に1、かたくり粉1/2、ちりめんじゃこを入れて振り、全体に粉をまぶす。
- ③ ボウルにAをまぜ合わせ、2にまぶす。
- ④ フライパンに高さ1cmくらいまでコーン油を注いで180度に熱し、3をひと口大に落として両面をカリッと揚げる。
油に入れたら、表面がカリッとかたまるまで触らずに。こんがりきつね色になったら裏返す。
「コーン油はクセがなく、揚げ物をカラっと軽い食感に仕上げたい時におすすめです。かぶやにんじんの皮のほか、大根の皮、皮つきのさつまいも、細切りにしたかぼちゃの皮、ごぼうなどでもおいしいですよ」
使った植物油はコレ!コーン油
とうもろこしの胚芽に含まれる油分を抽出した植物油。抗酸化ビタミンであるビタミンEと、血中コレステロールを低下させる効果があると言われる植物ステロールを豊富に含んでいるのが特長です。加熱に強いため揚げ物や炒め物等に向き、また劣化しにくいので揚げものの保存性に優れています。風味が安定していて、ドレッシングやマヨネーズにも活用されています。
食材をムダなく活用! 簡単副菜&作り置きレシピ2種
「ゴロゴロ野菜のサラダを作る日に、残った皮と茎はかき揚げにすれば、同じ素材で2品できてムダもなく便利ですね」とほりえ先生。野菜サラダには、1:1:1の比率でつくる自家製ドレッシングをかけていただきます。
●菜種油使用! にんじんとかぶのサラダ
材料(2〜3人分)
- にんじん…1/2本
- かぶ…1〜2個(150g)
- ブロッコリー…5房(約50g)
- 削り節…1パック
■しょうゆドレッシング
作り方
- ① にんじんは皮をむいてひと口大の乱切りに、かぶは茎1cmくらいを残して切り、皮をむいて6つ割にする。
- ② 鍋に湯を沸かし、1%の塩を入れ、にんじんを入れてかためにゆでる。かぶとブロッコリーも加えてひと煮立ちしたら火を止め、2〜3分おき、ざるに上げて水けをきる。
- ③ ボウルにしょうゆドレッシングの材料をまぜ合わせ、2の野菜を入れてざっとまぜ、冷やす。器に盛り、削り節をたっぷりかける。
使った植物油はコレ!菜種油(キャノーラ油)
原料は黄色い菜の花の種で、主にカナダで品種改良されたキャノーラ種を使用した脂肪酸バランスのとれた植物油。コレステロールへのゆるやかな作用が期待される必須脂肪酸を含みます。軽い風味でクセが少なく、香りもよいのが特徴。加熱にも強いため、揚げ物や炒め物、スウィーツなど幅広い料理に。特に野菜の揚げ物はあっさり軽い仕上がりになり、うまみを引き立ててくれます。
●紅花油使用! カリカリじゃこふりかけ
かぶの葉は、実は栄養豊富な緑黄色野菜。葉つきのものが手に入ったら、新鮮なうちに常備菜にしておくのもおすすめです。電子レンジで水分をとばし、カリッと香ばしく仕上げます。
材料(作りやすい分量)
- かぶの葉…200g
- ちりめんじゃこ…20g
- 塩…小さじ1/4
- いりごま…大さじ1~2
- 紅花油…大さじ1
作り方
- ① かぶの葉は洗い、ゆでで水にとり、水けを固くしぼって5mm幅にこまかく切る。さらに水けを固くしぼり、塩をまぜる。
- ② キッチンペーパーに1を広げ、電子レンジで(600W)で4分加熱し、一度かぶの葉をまぜて広げ、再び3分加熱する。
- ③ その後、水分が抜けるまで、1回ごとにかぶの葉をまぜて広げ直しながら、1〜2分ずつ加熱する。
- ④ ちりめんじゃこを耐熱容器に入れ、紅花油をかけてラップなしで電子レンジで1分加熱し、キッチンペーパーの上に広げ、ごまをまぜる。
- ⑤ 3と4をまぜる。
使った植物油はコレ!紅花油(サフラワー油)
染料としてお馴染みのベニバナ(サフラワー)の種子が原料。オレイン酸を約7割含有したハイオレイック種も。血液中のLDLコレステロールを下げ、抗酸化作用により動脈硬化予防、老化防止、血流改善効果も期待されています。軽やかでクセのない風味が特徴で、サラダのドレッシング等にも使われます。
食材を無駄なく、余さず、丸ごと味わおう!
「使いかけ野菜は、すべて迷子ボックスに!」と行き場を明確にしておくと、冷蔵庫にしまうのもラップ不要で簡単、使う時に探すこともなくなります。せっかく買った野菜の鮮度をキープし、おいしく食べ切るためのテクニックとして、ほりえ家のワザをぜひ取り入れていきたいですね。
今回の連載では、食の「もったいない」を植物油でおいしく解決するワザを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。野菜をゆでずに植物油で短時間調理すると、水溶性であるビタミンCがお湯に流れ出てしまう損失が少なくて済んだり、脂溶性ビタミンなどの吸収率をよくして栄養効率をアップさせてくれる働きもあります。また、老廃物の代謝をうながし、抗酸化・老化防止など、健康維持にも役立つと言われています。植物油の注意点は、保存方法。油は熱や空気(酸素)・光によって酸化しやすい性質をもっていますので、冷暗所など、商品に記載された保管方法を守ることが大切です。
食材のうまみを引き出し、日持ちを良くしたり、栄養価をアップさせるなど、私たちの食卓に欠かせない植物油。食材を無駄なく使い切るためにも、健康的な食生活のためにも、色々な種類の植物油をバランスよく活用し、省エネ・節約・時短のエコクッキングを実践していきましょう!
教えてくれた人
ほりえさわこ先生
料理研究家・栄養士。家庭料理研究のパイオニアである堀江泰子さんを祖母に、堀江ひろ子さんを母に持ち、幼少期から料理に親しんで育つ。イタリア、韓国への料理留学の経験も。50年以上続く料理教室を引き継ぎ、テレビや雑誌、書籍などでも活躍。家庭で作りやすく、家族に喜ばれるレシピに定評がある。廃棄されるもったいない食材を「日持ちのするおいしい食品」に加工して食卓に届けるプロジェクト「あすまるさんキッチン」の活動も。『おいしい味つけ1:1:1の便利帖』など著書多数。