“省エネ・節約・時短”でエコクッキング
まだ食べられる食材を捨ててしまう「食品ロス」は、資源やエネルギーの無駄遣いにもつながり、地球温暖化の原因にもなります。
ただ、食材を無駄なく使い切りたいと心がけていても、うっかり冷蔵庫でしなびさせてしまったり、食べ切れなくて残してしまったり、といった経験を持つ人も多いはず。
そこで、エコクッキングのエキスパート、ほりえさわこ先生のキッチンを直撃訪問!祖母、母、娘と3代にわたって料理家のほりえ家の食卓には、食材を余さずおいしく食べ切る技に加え、食費・光熱費まで節約できてしまうエコな技が当たり前に駆使されています。
その一端を担うのが、植物油の存在。色々な種類の植物油をバランス良く上手に使うと、食材が長持ちしたり、おいしさもアップ、
さらに時短にもつながるってどういうこと?ほりえ家のモッタイナイをなくすエコクッキングをご紹介します!
食材選びは「地産地消」を意識!
食材を選ぶときに、ぜひ意識したいのが「地産地消」という考え方です。地産地消とは、地域で生産されたものを、その地域で消費すること。旬の新鮮なものが手に入るのはもちろん、輸送にかかるエネルギーなども抑えることができるため、環境への負荷も減らせます。スーパーではなるべく国産のもの、できれば地元産のものを選ぶようにすると、地域の農産業・食品産業の活性化にもつながりますね。
「庭やベランダでの家庭菜園もおすすめ! わが家では、庭できゅうりやトマト、ゴーヤなどを育てているほか、父が貸し菜園で野菜づくりをしています」とほりえさん。
太陽の恵みをいっぱいに浴びて大きく育った野菜は、形はふぞろいでもおいしさは抜群! 食材高騰が叫ばれる今、家計の助けになる点も見逃せません。ハーブ類やミニトマトなどはプランターで手軽に栽培できるので、楽しみながら挑戦してみるのもいいですね。
電子レンジ活用で省エネ&時短
ほりえ家のエコクッキングに欠かせないのが、電子レンジです。
「わが家では祖母の代から電子レンジを活用していて、私も筋金入りの電子レンジャー(笑)。電子レンジを使うと、調理時間が短縮できるし、洗い物も減らせます。火を使わないから、キッチンが暑くならないのもいいですね。電気・ガス・水道などのエネルギー使用も抑え、ラクしておいしいを叶える便利家電です。温め直しだけではもったいない、もっと調理に活用してほしいな、と思います」
電子レンジは、食材自身が持つ水分を利用して加熱します。上手に加熱するコツは、ラップをかけて蒸気を逃さないこと。加熱後も、しばらく蓋やラップをしたままにしておくと、野菜や肉、魚も蒸気でしっとり!パサつかず、ふっくらやわらかく仕上がります。
「電子レンジ調理の失敗で多いのが、加熱のしすぎによって水分が抜け、パサパサと硬くなってしまうこと。加熱が足りないときは、数十秒ずつの追加加熱で様子をみて」
ポリ袋を使って節水&調理効率アップ
時短とエコの両面で効くアイテムとして、ほりえ先生がもうひとつ挙げてくれたのがポリ袋です。
「ポリ袋は、もはや調理道具のひとつです。 食材を混ぜあわせたり、下味をもみこんだりするのに便利。手も容器も汚さず、水の使用量を削減でき、洗い物の時間も丸ごとカットできますね。あえたり、もみこんだりするなら、スーパー等で食品を入れて持ち帰ったものの再利用で十分です」
また、料理用の厚手のポリ袋を使えば、電子レンジでの加熱や、鍋で袋ごと茹でることも可能です。
「ポリ袋が優秀なのは、料理の仕上がりもアップさせてくれること。たとえば肉の下味をつけるのにも、ポリ袋なら少量の調味料でまんべんなく食材に行き渡って、短時間で味がしっかり入るんです」
排水を汚さず、水の使いすぎを防いで、さらに時短とおいしさアップにも貢献してくれるポリ袋、使わない手はありませんね。
レンジ&ポリ袋でらくらく! 野菜たっぷりチキンラタトゥ−ユ
電子レンジとポリ袋の合わせ技で作る、ゴロゴロ野菜とチキンのラタトゥーユをご紹介します。鶏肉の下味はポリ袋で、煮込みは電子レンジが担当!
しっとりやわらかなチキンに、ジュワッとジューシーな野菜のうまみがからむ絶品です。
●チキンラタトゥーユ
材料(2人分)
- 鶏もも肉…1/2枚(150g)
- しょうゆ、かたくり粉…各大さじ1/2
- ズッキーニ…1/2本(100g)
- 玉ねぎ…1/2個(80g)
- じゃがいも…1/2個(50g)
- トマト…小1個(80g)
- にんにく…1かけ
- 塩…小さじ1/2弱
- オリーブオイル…大さじ1
- こしょう…少々
作り方
- ①鶏もも肉は一口大に切ってポリ袋に入れ、しょうゆをよくもみ込み、かたくり粉を加えてまぜる。
- ②ズッキーニ、玉ねぎ、じゃがいもは1cm幅に切る。トマトは横半分に切り、にんにくはつぶす。
- ③耐熱容器にトマト以外の野菜を入れ、塩、こしょう、オリーブオイルをかけて軽くまぜる。1を加えてひと混ぜし、トマトの切り口を下にしてのせる。
- ④ふんわりとラップ(またはフタ)をかけ、電子レンジで7〜8分加熱する。トマトの皮をつまんでむき、全体を軽くまぜてそのままあら熱がとれるまでラップをかけておく。
POINT
加熱前の野菜にオリーブオイルをからめることで、加熱中に温度がすばやく上がり、野菜の甘みが引き出されます。また乾燥を防ぎ、風味をアップする効果も。
「野菜は、かぼちゃ、ピーマン、パプリカ、なすなどでアレンジしてもOK。野菜のトータルの重量が変わらなければ、電子レンジの加熱時間も同じままで大丈夫です。秋は、旬のきのこを加えてもおいしいですね」
使った植物油はコレ!オリーブオイル
オリーブの果肉に含まれる油分を採取した油。血糖値上昇を抑制、LDLコレステロールへのゆるやかな作用や老化防止など、生活習慣病の予防や、お通じを改善する作用なども期待されています。酸化しづらく、独特のフルーティーな香りは、生食・加熱用問わず、調味料的な利用も含めて幅広い用途に使われます。
余った食材をムダなく活用! 簡単副菜&作り置きレシピ2種
主菜に使った野菜の残りで、手軽な副菜を作りましょう。植物油のパワーを活用すると、傷みやすい野菜もぐんと長持ちします。
●角切り野菜のココナッツオイルマリネ
材料(2人分)
- ズッキーニ…1/2本
- じゃがいも…1/2個
- 玉ねぎ…1/2個
- 鶏ガラスープのもと…小さじ1
- ココナッツオイル(無香タイプ)…小さじ1
作り方
- ①野菜はすべて1cm角に切り、じゃがいもは水にさらす。
- ②耐熱容器に1を入れ、鶏がらスープのもと、ココナッツオイルをかけ、ラップ(またはフタ)をして電子レンジ(600W)で5分加熱する。とり出したらひと混ぜし、そのまま冷めるまでラップをかけておく。
- ③清潔な保存びんに入れ、ココナッツオイルを野菜が浸るまで注ぐ。冷蔵庫で1週間ほど保存可能。
「パンにつけたり、パスタにからめたりしてもおいしいマリネです。オイルに浸すことで、雑菌の繁殖を防いで、野菜が長持ち! エリンギ、れんこん、にんじんなどの野菜でアレンジするのもおすすめです。ココナッツオイルはクセのない無香タイプを使いましたが、香りのあるタイプならアジアンな雰囲気になってこちらも美味!」
使った植物油はコレ!ココナッツオイル
ココヤシの果実から採取した油で、やし油とも呼ばれます。体内で消化・吸収されやすいいため体脂肪のつきにくい油と言われ、美容効果も期待されています。熱に強いので、マーガリンやアイスクリーム等いろいろな料理に利用できます。独特の甘い風味が魅力ですが、無香タイプもあります。
●トマトとえごまのサラダ
材料(2人分)
- トマト…1個
- えごまの葉…5枚(または大葉10枚)
- 砂糖、酢…各小さじ1
- 塩…少々
- えごま油…大さじ1
- ※アマニ油でも代替可
- 松の実…適量
作り方
- ①トマトは皮をむき、塩、砂糖、酢をかけて冷やしておく。
- ②えごまの葉をちぎり、1とあえる。えごま油をかけ、松の実を散らす。
「トマトの甘みとえごまの葉の清涼感が口いっぱいに広がる、夏らしいサラダです。えごま油はすっきりした口当たりでしつこさがないので、油っぽさを感じずにさっぱり食べられますよ。えごま油やアマニ油など、オメガ3系の油には、血液をサラサラにする効果などが期待できるそう。仕上げのひと回しで、おいしく健康をめざしましょう」
使った植物油はコレ!えごま油
しそ科のえごまの種子から作られるえごま油は、体内で作り出すことができない必須脂肪酸・オメガ3系に分類される健康油。えごま油に含まれるオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸は動脈硬化や血清脂質の改善が期待できると言われており、また、脳の大切な機能の多くに関わっているため、最近では、認知機能を改善する効果が期待されるなど、人体機能の維持に重要な役割を果たすことが期待されています。酸化しやすく熱に弱いため、生で摂ることが基本。クセがないため、他の調味料とブレンドして使っても。
「三種の神器」をかしこく使って、フードロスをおいしく解決しよう
電子レンジにポリ袋、そして植物油は、フードロス解決の「キッチン・三種の神器」とも呼べそう。ラクしておいしいを叶えてくれるから、普段から気負いなく実践できるのもうれしいポイントですね。
「油はハイカロリー」というイメージを持たれがちですが、良質な油脂を毎日、適量摂ることは、私たちの美容・健康にとっても大切なこと。
ビタミン吸収を良くして栄養効果をアップさせたり、髪やお肌にうるおいをもたらしてくれる上に、食物繊維が豊富な野菜や海藻などのカサを減らし多く摂取できることで、便秘解消の有力なサポーターになったりもします。
食材を無駄なく使い切るためにも、ヘルシーな食生活のためにも、植物油を上手に活用しつつ、省エネ・節約・時短のエコクッキングを取り入れていきましょう!
教えてくれた人
ほりえさわこ先生
料理研究家・栄養士。家庭料理研究のパイオニアである堀江泰子さんを祖母に、堀江ひろ子さんを母に持ち、幼少期から料理に親しんで育つ。イタリア、韓国への料理留学の経験も。50年以上続く料理教室を引き継ぎ、テレビや雑誌、書籍などでも活躍。家庭で作りやすく、家族に喜ばれるレシピに定評がある。廃棄されるもったいない食材を「日持ちのするおいしい食品」に加工して食卓に届けるプロジェクト「あすまるさんキッチン」の活動も。『おいしい味つけ1:1:1の便利帖』など著書多数。