一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
日本植物油協会では、去る7月28日の理事会において、地球温暖化防止に貢献するため、「製油産業における環境自主計画」を策定いたしました。これにつきましては、「植物油INFORMATION38号」で解説を含めてご紹介しています。
当製油産業は食生活における基礎素材である食用植物油を製造する産業であり、年間約190万トンの植物油を供給しているが、その97%は輸入原料から搾油・精製したもの又は輸入原油を精製したものである。
植物油の製造は、油糧種子と称される原料から油を抽出し原油を生産する工程と、原油を精製し最終消費製品を製造する工程に分けられる。我が国の製油工場の多くはこれらの工程を一貫処理しているが、それぞれの工程が分離された工場も存在する。また、大豆・菜種のように大量の原料を処理する大規模装置産業型工場と、ごま油、米油など規模的には大きくないが、特徴ある製品を製造する工場が併存する構造となっている。
エネルギー使用の面からは、圧搾・抽出など高出力の装置を必要とする工程が多く、食品産業の中では相対的にエネルギー消費が多い産業と位置づけられる。このため、1990年代から大型工場を中心に、自家発電、コージェネレーション設備等省エネルギーもしくはエネルギー効率のよい設備への更新並びにCO2負荷の少ない燃料への転換を進めてきた。
一方、搾油後の種子粕は主に飼料として全量が有効活用され、ソーダ油滓、廃白土等の排出物は、有効成分の抽出や他用途利用が行われ、再資源化率は94%を超えている。
このような実績を踏まえ、地球温暖化問題に対し一層の貢献をするため、以下に掲げる環境自主行動計画を策定し、その実行を推進する。
【 1 】 エネルギー消費量・CO2排出量の現状
( 1 )エネルギー消費量・CO2排出量
製油産業の環境自主行動計画の策定のため、我が国の植物油供給量の90%を占める企業についてエネルギー使用等の実態調査を行った。これら調査対象企業の植物油生産量(原油ベース、非食用を含む。)は漸増の傾向にあり、1990年度1,943千トンから2002年度に2,272千トンと、1990年度に対して16.3%増加した。
しかし、この間のエネルギー消費量(原油換算)は、1990年度278千klに対し2002年度には305千klと9.6%の増加にとどまった。2002年度の燃料別消費量は、多いものから都市ガス、C重油、購入電力、A重油の順となっている。これら燃料別エネルギー使用量は、1990年度から2002年度に大きく変化し、C重油及び購入電力が減少し、都市ガス等のガスが増加した。
また、CO2排出量(t-CO2)は、1990年度に675千tであったが、2002年度は687千tとわずかな増加(1.7%)にとどまり、上述の燃料切り替えがCO2排出削減に大きく貢献している。
2002年度のCO2排出量を燃料別にみると、多いものからC重油、都市ガス、A重油、購入電力の順であるが、C重油からの発生量が大幅に減少し、都市ガス等のガスからのものが増加する傾向にある。
( 2 )エネルギー消費原単位・CO2排出原単位
植物油製造におけるエネルギー消費原単位(原油換算消費量kl/植物油生産量t)は、1990年度0.14に対し、2002年度0.13に低下した。
また、CO2排出原単位(CO2排出量t/植物油生産量t)は、1990年度0.35に対し、2002年度には0.30と1990年度に対して14.3%低下した。
製油企業における燃料の切り替えが、エネルギー消費及びCO2排出の抑制に寄与したものと推定される。
【 2 】CO2排出削減目標と対策
( 1 )C02排出削減目標
製油産業においては、エネルギー多消費型産業という基本的産業特性の下で、1990年台初頭から大型工場を中心として省エネルギー対策を推進し、エネルギー消費抑制の徹底を図ってきた。一方、植物油の生産量は引き続き増加することが予想されるため、更に大幅なCO2排出の削減は難しい段階に置かれている。
しかし、環境保全の面から温暖化防止対策に寄与することは社会の一員として重要な課題であることから、下記のとおり一層の削減に取り組むこととする。
目標 | |
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目標年次 | 2010年 |
削減目標値 | 1990年度対比CO2排出原単位を15%以上削減 |
( 2 )具体的な削減対策
製油産業は製造形態が多岐にわたり、これまでの取り組みにも差異があることから、産業界一律の対策を講じることは困難な状況にある。このため、各企業の実情に即したエネルギー消費量及びCO2排出量の削減に寄与しうる対策を選定・実行し、製油産業の総計として目標の達成に努める。現時点で想定できる有効な削減対策は、以下に掲げるとおりである。
イ. 使用燃料削減・転換 | C重油よりCO2負荷の少ない他のガス燃料やバイマス燃料への転換。 |
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ロ. 高効率設備の導入 | コージェネレーション設備の導入、インバーター等省エネ型機器の導入。 |
ハ. 運転管理の徹底・省エネ活動の推進 | 最適操業の追及及び工場・事務所における省エネ管理の強化。 |
【 1 】 工場排出物の排出量及び再資源化の現状
2002年度において、製油工場における17種類の排出物の総排出量は121千トンであった。これらは多い順に、ソーダ油滓(63千トン)、廃白土(27千トン)、汚泥(13千トン)、廃油(8千トン)であった。これらは、廃油がほぼ100%再利用されているのをはじめ、114千トンが再資源として利用され、全体の再資源化率は94.2%であった。排出量の80%以上を占めるソーダ油滓及び白土滓の再資源化率はそれぞれ96.7%、97.9%と高水準であった。
【 2 】 排出物の減量目標及び削減対策
( 1 )排出物の減量目標
製油産業の工場排出物の再資源化率は非常に高い水準にあるが、排出物の種類別及び企業別には再資源化が十分でないものが見受けられるので、一層の再資源化を進め、排出物を減量することを目指す。
目標 | |
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目標年次 | 2010年 |
削減目標値 | 産業排出物の再資源化率95%以上 |
( 2 )具体的な削減対策
各企業は、次の掲げる対策をはじめ、それぞれの実情に応じた適切な減量対策に取り組み、産業総体として目標数値の達成に努める。
イ. ソーダ油滓、廃白土、汚泥、廃油について、高い再資源化率の維持・向上 |
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ロ. その他の工場排出物の再資源化の推進 |
ハ. 事務所排出物の減量化の推進 |
【 3 】 環境自主行動計画の管理
本環境自主行動計画に掲げる目標達成のため、ISO14000シリーズの活用、環境管理委員会の設置等により、各企業において環境自主行動計画の進捗管理に努める。