一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
「クロワッサン No.1039号(2月10日発売)」に掲載されました!
食生活は健康と美容の基本。自粛生活で家での食事の重要度が増す今、注目すべき「植物油」について管理栄養士がレクチャーします。
イラストレーション・ナカイミナ 文・板倉みきこ 写真・Getty Images(オイル)
美才治真澄さん
管理栄養士、フードコーディネーター
びさいじ・ますみ●女子栄養大学生涯学習講師。レシピの提案やスタイリング、栄養相談などを中心に活動。スパイスやハーブの使い方が巧みで、各国料理に精通。
健康意識の高い人ほど、糖質制限に注目するあまり、栄養バランスが崩れる傾向にあり、太りたくないと油を控える人も多いはず。でも実は、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、1日の脂質の摂取量の8割は、油として意識せずに摂っている肉類や乳製品、加工品などに含まれる見えない油。見えない油も意識しつつ、消費者として自由に選択できる見える油については、バランスよく多様な植物油を賢く選ぶことが、健康管理にとって大切だ。そこでまず注目したいのが、植物油の一種のオリーブオイル。動脈硬化の原因となる酸化ストレスを抑える有効成分のポリフェノールを多く含んでいるので、効果的に料理に取り入れれば健康リスクを予防できるのだ。
またオリーブオイルだけでなく、植物油にはそれぞれ健康と美容に与する注目の有効成分が多種含まれている。さらに、食材との組み合わせによる相乗効果で、食材の栄養効果をパワーアップさせることもできる。
「油を使うと脂溶性のビタミンが吸収されやすくなり、旨みが増すなど健康と味の両面に様々なメリットがあります。日頃から、体によい油をバランスよく摂ることが大事なんです」(管理栄養士・美才治真澄さん)
代表的な植物油は下記の9種。それぞれが含む、主要な有効成分の力を知り、今回、美才治さんが考案した、作り置きやちょい足しで簡単にできる、植物油を使った健康レシピを取り入れてほしい。もともと植物油自体が体で作れない必須脂肪酸や、老化防止に役立つ大切なビタミンEの供給源。日々の食事に上手に賢く活用したい。
オレイン酸を多く含む油。小腸でコレステロール吸収抑制する作用がある植物ステロールを、米油・とうもろこし油と並び多く含有。
コレステロール低下作用が期待できる、必須脂肪酸であるn-6(オメガ6)系脂肪酸の一つ。リノール酸を多く含む。
米油に含まれるγ-オリザノールは抗酸化作用や血中コレステロール低下が期待できる。オレイン酸やリノール酸をバランスよく含む。
とうもろこし胚芽の油で、n-6(オメガ6)系脂肪酸であるリノール酸が多く含まれ、血中コレステロールの低下作用が期待できる。
血糖値の上昇を抑制するポリフェノールを含み、コレステロールに穏やかに作用するといわれているオレイン酸を多く含む。
抗酸化作用、老化予防効果が期待できるセサミンなどのリグナン類を多く含んでいる油。オレイン酸とリノール酸をバランスよく含む。
動脈硬化や血清脂質の改善が期待できる必須脂肪酸・n-3(オメガ3)系脂肪酸の一つであるα-リノレン酸を多く含む油。
家庭用のハイオレイック種のべに花油には、コレステロールに穏やかに作用するといわれているオレイン酸を豊富に含む。
あまに油同様、α-リノレン酸を多く含む油で、n-3(オメガ3)系脂肪酸は動脈硬化や血清脂質の改善が期待できる。
植物油から5種を選び、それぞれの油の特性を活かして、作り置きができたり、仕上げに足すことで栄養効果が増すお手軽レシピを考案。今回は年齢的に抱えやすい心身のトラブル改善にも役立つよう、食材の栄養成分との相乗効果も期待できる内容に。ぜひお試しを。
オリーブオイル
作り置き想定で作りやすい量 ドライマンゴー8枚(80g)と軽くこすり洗いしたごぼう1本は細切りに。オリーブオイル小さじ2で炒め、油が回ったらナンプラー大さじ1、一味唐辛子少々を加え炒め合わせ、仕上げにごまをふる。
「オリーブオイルと、血中のコレステロールを吸着・排出してくれる水溶性食物繊維を含む食材の組み合わせ。作り置き惣菜でおなじみのきんぴらを、エスニック風の味付けでひと工夫しました」(美才治さん)
ごま油
作りやすい量(ご飯茶碗4杯分程度) 30分浸水して水切りした米2カップ、100%にんじんジュース440㎖、粒マスタード大さじ2、ごま油大さじ1、ターメリックパウダー小さじ1、塩小さじ½を炊飯釜に入れてよく混ぜ、通常モードで炊く。好みでパセリを散らして。
「抗酸化作用の高いビタミンEやβカロテンが豊富なにんじんと、同じく抗酸化作用があるクルクミンを含むターメリックを使いました。ごま油はリグナンの抗酸化作用に加え、コクと艶をプラスしてくれます」
えごま油
使い切り量(2人分程度) パセリの葉大枝2本分、玉ねぎ¼個、にんにく½かけはみじん切りにし、えごま油大さじ2、ワインビネガー小さじ1、塩小さじ⅙、粗びき黒こしょう少々と混ぜ合わせ、しんなりするまでおく。器に鯛の刺身を並べソースをかける。
「チミチュリソースは、アルゼンチンで定番の香味ソース。刺身以外にも、焼いた魚や肉にも合う万能ソースです。玉ねぎやにんにくに含まれるアリシンは、血液をサラサラにする効果があると言われています」
米油
作り置き想定で作りやすい量 乾燥したままの干ししいたけ(香信)10枚と菜の花1束に片栗粉を薄くはたく。170℃に熱した米油で揚げ、熱々のうちにめんつゆ(ストレート)100㎖、おろし生姜大さじ½、酢小さじ1を合わせた漬け汁につける。
「精神を安定させ、抗ストレス作用が期待できるカルシウムとビタミンD、抗酸化作用があるビタミンCを含む食材を使い、米油のγ-オリザノールの心の健康ケアに役立つ力をアップさせます」
あまに油
2人分程度 めかじき1切れ、にんじん¼本、大根2㎝、さつまいも¼本はさいの目切りにし、出汁400㎖、薄口醤油小さじ1、塩小さじ⅓で煮る。仕上げにすりおろした皮むきさつまいも¼本分を加えてとろみをつける。あまに油適量をかけ、彩りに万能ねぎなどを散らす。
「肌の乾燥対策に効くビタミンA、ビタミンB2、肌を作るタンパク質がバランスよく摂れるスープです。根菜類や油の力で、体が芯から温まります。あまに油は加熱に弱いので、仕上げにひとたらしが鉄則」