一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
家庭からのお問い合わせで最も多い質問の一つが、油は何回ぐらい反復利用できるのかというものです。国民生活センターの報告書(平成4年6月)などで具体的な回数を示したレポートがありますが、油の種類、揚げる素材(揚げダネ)とその量、油の温度、揚げる時間、一度使用してから次回に使用するまでの保存状態と時間経過など条件が大きく異なるため、一律に「○回」と特定することはできません。
油は加熱され、揚げる作業を行うことによって劣化が進み、風味の低下だけではなく、分解物や重合物などの食べると体に好ましくない成分が生成されます。 これをどの時点で廃棄するかについては、化学的な判定と官能的な判定がありますが、両者が一致するとは限りません。
家庭では化学的判定は不可能ですので、油の味の変化、粘り具合、揚げる力などによって判定するのが適切で、一律に「○回」まで使えると明確にはできるものではありません。
加工食品産業では、農林水産省・厚生労働省が油を利用する場合の品質管理の基準を定めていますので、これに基づいてマニュアルを作成し、油の使用回数、差し油の量などの管理を行うことが必要です。
油を連続的に使用する場合には、油が揚げ物に吸収されて次第に減ってきます。これに応じて新しい油をつぎ足すのが差し油で、油量を一定に保ち、揚がりの状態を均一にコントロールし、油の酸化を抑えることができます。
家庭で少量の油で揚げ物をするときは、こまめに差し油を行うことがからっと揚げるコツです。また前に揚げたものの臭いや味がつかないように、揚げる素材(揚げダネ)の順序を工夫する(野菜類を先に、魚介類を後に。天ぷらを先に、唐揚げを後に)こと、一度に多くの揚げダネを入れず(油面の1/3〜1/2程度にとどめる)、油の温度を一定に保つこと、揚げ粕をこまめにすくい取ることなどがおいしい揚げ物を作るために大切です。
惣菜業者の場合には、フライヤーを天ぷら糟、フライ糟、唐揚げ糟等に分けて使用し、差し油の回数を均一に維持し(新油添加率または回転率。一般的には1時間当たりの入れ替わり量が10%程度であれば、廃油がほとんどでないとされています)、品質を一定に管理していくことが必要です。図2は、揚げ油の品質劣化に対する差し油の効果を概念的に示しています。