一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。

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-植物油の美味しさ大発見-

美味しさの決め手は植物油!油の達人に聞く植物油の魅力 vol.9/
@和乃食 ここから【オリーブオイル、サラダ油、菜種油】

Vol.9美味しさの決め手は植物油!~油の達人に聞く植物油の魅力

少し大きめのスーパーマーケットに行くと、植物油の売り場には、たくさんの種類の油が並んでいます。でも「名前は知っているけれど、使ったことがない」「どうやって使ったらいいんだろう?」という人もきっと多いはず。こちらの短期連載では、そんな植物油の使い方にこだわりを持つ達人の飲食店に伺い、オススメ料理を紹介するとともに、油への思いや家庭で油を上手に使って美味しくご飯をつくるコツを伺ってきました。

いよいよ最終回となる今回は、東京・信濃町にある和食店「和乃食 ここから」にお邪魔しました。大通りから1本入ったところにある、隠れ家的なお店です。本格的な割烹料理の味を気軽にいただける同店。知っていると、ちょっと自慢できそう⁉

コンセプトは、「カジュアル割烹」

「和乃食 ここから」。2024年には開店10周年を迎えました

京都をはじめ全国の料理店で研鑽を積んだ石井英行さんが、東京・信濃町に「和乃食 ここから」をオープンしたのは2014年9月のこと。外苑東通りから1本入った住宅地のビルの2階にある同店のコンセプトは、「カジュアル割烹」。気仙沼や喜界島など、全国各地から仕入れた新鮮な魚介類、鎌倉野菜や奈良の大和野菜などといった四季折々の食材を用い、和食の美味しさ、楽しさを気軽に体感できる料理を提供しています。ディナータイムはコース(4,500円~)のほか、アラカルトでもオーダー可能。ひとりでしっぽり訪れてカウンターで美酒美食を味わうも良し、個室もあるのでビジネスの会食で利用する人も多いそうです。日本酒も充実していますよ!

店主の石井英行さん

このご時世1,100円から楽しめるランチセット(しかもごはんとみそ汁はおかわりできる!)も大好評。12時前から満席になることも少なくないそうです。近くに住んでいる人、働いている人が本当にうらやましいです。ちゃんと美味しくヘルシーな日本食を、手軽な料金でいただける──、そういう店、ありそうであまりないんですよね。

オリーブオイル、大根おろし、レモンの組み合わせは鉄板

「ハーモニカの塩焼き(または煮付)」(1,300円)

「和乃食 ここから」では、料理によって複数の植物油を使い分けているそう。今回は、店主の石井さんに、ランチではなくアラカルトのメニューから、植物油を印象的に使った料理を紹介してもらいつつ、家庭で美味しく作るためのアドバイスについてもじっくり聞いてみました。

宮城県の郷土料理である、カジキマグロの背びれの付け根部分を使った「ハーモニカの塩焼き(または煮付)」(1,300円)は、毎回、必ず頼む常連もいるという、同店の看板メニュー。大型魚の背びれの付け根の部分の形状と、両手に持って食べている様子がまるでハーモニカを吹いているように見えることから、このネーミングがついているそう。その希少性と独自の調理法で現地でも人気なのだとか。「和乃食 ここから」では、カジキマグロをわざわざ気仙沼から仕入れているそうで本格的です!

こちらの料理に使用しているのはオリーブオイル。
「オリーブオイルに叩いたニンニクと大葉を漬け込み、2、3日ほど置いておきます。しばらく時間をおくことで、オリーブオイルに、ニンニクと大葉の風味が染み込むんです。その後、そのタレをつけ焼きしながらカジキマグロを焼き上げます。そこに、大根おろしとレモンを添えています。オリーブオイル、大根おろし、レモンの組み合わせは、間違いのない美味しさですから、ぜひご家庭でも試してみてください」と石井さん。

いただいたカジキマグロは香り高く、身はふっくら。手に持って骨までかぶりつきたくなるのがわかります(笑)。自宅でもぜひ食べてみたいけれど、カジキマグロの背びれの付け根を入手するのは、なかなか難易度が高そう。

「オリーブオイルに叩いたニンニクと大葉を漬け込み2、3日ほど置いたソースは、脂ののった魚ならなんでも合うと思いますよ。カジキマグロであれば背びれの付け根ではなく、身の部分でも美味しく仕上がるかなと。パスタソースにもおすすめ。最後にレモンを絞るのをお忘れなく。その応用編として、以前、少し太めの冷たい蕎麦にこのソースをかけ、レモンを搾ったメニューを提供していたこともあります」
想像しただけで、お腹が空いてきます(笑)。これなら自宅でも簡単に美味しくできそうです!

真っ白な黄身の卵を使った、上品な出汁巻き

「白い出汁巻き卵 雲丹乗せ」(1,300円)

「白い出汁巻き卵 雲丹乗せ」(1,300円)も同店の名物メニュー。愛媛県から取り寄せた、お米を食べて育つ鶏が産んだ、白い黄身で作る出汁巻き卵に贅沢に雲丹を乗せています。こちらはサラダ油で焼き上げているのだとか。あっさり上品な味わいの真っ白な黄身の卵を使った出汁巻きは、出汁の美味しさが際立ちます。出汁巻き卵を自宅で美味しく作るポイントは、「ふんわり仕上げるため、卵はかき混ぜすぎないことです」と石井さん。

煎餅は揚げ物の衣に活用できる!

「エビの歌舞伎揚げ/アナゴの柿ピー揚げ」(コース料理の中の一品)

「エビの歌舞伎揚げ/アナゴの柿ピー揚げ」はコース料理の一品。エビは、歌舞伎揚げのお煎餅を、アナゴは柿の種のお煎餅を砕いて衣にして揚げています。サクサクの食感に、思わずビールが欲しくなる味です(笑)。
「おかきを使った、おかき揚げから着想を得ました。煎餅的なものはたいてい衣にできます。醤油味のお煎餅は焦げやすいかもしれませんが、サラダ煎餅もイケますよ。 具材は、エビはなんでも合わせやすいのでおススメです」
コンビニでも買えるお煎餅、いろいろ試してみたくなりますね。

なお、「和乃食 ここから」では、揚げ物には菜種油を使用しているそう。「うちでは、ずっと揚げ物は菜種ですね。和食の油には、やはり植物油が合います」(石井さん)

オリーブオイルを使ったソースの活用方法は無限大

「牛ハラミ肉の低温ロースト 玉ねぎソース添え」(2,000円)

最後は、ソースにオリーブオイルとタマネギのすりおろし、醤油を合わせて作ったソースを使った「牛ハラミ肉の低温ロースト 玉ねぎソース添え」(2,000円)。

「香り高くフレッシュなオリーブオイルの特性をいかしたソースです。少し火を入れるのもポイント。コクが出て、タマネギの甘みも出てきます。さらに、キリっとさせるために、レモンも加えます。うちは和食の店なので醤油をベースにしていますが、ほかの素材とも合うと思います」

「和乃食 ここから」の洗練された料理には、煎餅揚げやオリーブオイルを使ったソースなど、食欲をそそる、そして調理意欲も掻き立てる要素が随所に組み込まれていました。

植物油を使ったプロのアイディアによる、普段の料理が美味くなるコツを生かして、食卓に新鮮な味わいを取り入れていきたいですね!

和乃食 ここから
住所/東京都新宿区信濃町3-1 シャトレ信濃町別館 2F
営業時間/昼:月~金11:30~15:00 (L.O.14:30)、 夜:月~土17:30~23:00(L.O.22:00)
定休日/日曜・祝日定休
TEL/03-6709-8798
http://www.wanoshoku-kokokara.com/

取材・文/長谷川あや 撮影/中庭愉生