一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
プロが選ぶには訳がある
-植物油の美味しさ大発見-
こちらの短期連載では、オリーブオイル、亜麻仁油、ごま油など、今注目の植物油にこだわりを持つ飲食店のオススメ料理を紹介するとともに、油への思いや家庭で油を上手に使うコツを伺っています。
今回は、えごま油を大胆に使った「革命つけそば」など、さまざまなアレンジ蕎麦がいただける人気店「SOBA CAFE IKEMORI」をフィーチャーするのですが、じつは同店、〈このまま君だけを奪い去りたい〉などのヒット曲で知られる、人気のロックバンドDEENのボーカリスト・池森秀一氏がオーナーを務めるお店なのです。
で、お店に取材依頼したところ、「メニューの開発はほぼ池森がやっています。蕎麦のことは池森に直接お尋ねください」と回答が! そんなわけで、今回はいつもと少し趣向を変えて、池森さんの言葉をふんだんに交えながら、「SOBA CAFE IKEMORI」のこと、池森さんの蕎麦、そして、えごま油への思いをご紹介します。
「約15年間、昼は毎日ほぼ欠かさずに蕎麦を食べています」と語る池森秀一さんは、自他ともに認める“芸能界随一の蕎麦好き”。2022年には、ついに、東京・港区赤坂にある所属事務所の1階に、自身がプロデュースする「SOBA CAFE IKEMORI」をオープンしました。
池森さんが蕎麦に開眼したのは約15年前にさかのぼります。デビュー15周年を記念する、武道館ライヴが決まり、「パーソナルトレーナーについて、ボディーメイクすることにしたんです。めちゃくちゃ鍛えて筋肉を付け、約6㎏増量しました」。
武道館ライヴ終了後もマッチョな体型をキープしていた池森さんですが、「だんだんと周りの人たちが困惑するようになってきて、“いったい僕はどこに向かっているんだろう?”と考え始めるようになりました(笑)」。
やがて、「DEENの世界観に筋肉は必要ないのでは?」と思い至り、増やした筋肉を“元に戻そう”と決意。そんな時、目にしたのが、政治家や経営者からも信頼の篤い、医師・石原結實(いしはら・ゆうみ)先生の著書でした。
「朝は野菜ジュース、昼は蕎麦にして、でも夜は好きなものを食べていいといったことが書かれていて、これを実践することにしました。空腹の時間を長くする、いわゆるプチ断食です。僕のカラダに合っていたようで、1ヵ月で元のカラダに戻すことができました。体調も良く、これをきっかけに、1年ほぼ365日、昼に蕎麦を食べ続ける生活を続けています」
音楽業界は14時前後から仕事がスタートすることが多く、家で乾麺から茹でた蕎麦を食べてから出かけるという毎日を過ごしていた池森さんに、2018年、さらなる大きな転機が訪れます。蕎麦好きの代表として、人気TV番組に出演したのですが、その反響の大きさは本人と周囲の予想を遥かに凌駕するものでした。
「番組で紹介した乾麺は欠品続きでスーパーから姿を消し、紹介したお店は大行列ができ、警備員を置くようになりました。〈このまま君だけを奪い去りたい〉のヒットに続き、第2の奇跡の扉を開けてしまったのです(笑)」
以来、蕎麦に関する仕事が急増。音楽と蕎麦の「二刀流」生活がスタートします。さまざまなメーカーとタッグを組んで蕎麦をプロデュースするにとどまらず、2020年には蕎麦に特化した公式YouTubeチャンネル「池森チャンネル」や、自身がプロデュースした乾麺蕎麦などを販売するECサイト「池森そば公式ショップ」を開設。そして、2022年6月、「SOBA CAFE IKEMORI」の開業に至りました。
その「SOBA CAFE IKEMORI」の看板商品が、えごま油を使った「革命つけそば」(1,400円)です。蕎麦の取材に行った際、「そば湯に、ブラックペッパーと魚粉、えごま油を加える食べ方を教えてもらい、とてつもない衝撃を受けました」。えごまの栽培がさかんな戸隠では、擦ったえごまを薬味にして蕎麦をいただくことも多く、また、えごま油はもちろん、クッキーや味噌、おまんじゅうなど、えごまを使った加工品も頻繁に目にします。
つまり、この斬新なそば湯をアレンジして主役にしたいと、池森さんが試行錯誤を重ねて完成させたメニューが、この「革命つけそば」なのです。そして、池森さんは、そのレシピを惜しげもなくHPや著作などで公開しています。懐が深すぎますっ!
「まず器に底面が隠れるくらいブラックペッパーを入れます。“これくらいかな?”と考える量の10倍(笑)、そうですね、30振りくらいは入れてください。それくらい入れないと、インパクトが出ません(笑)。
次に、電子レンジで約1分半温めて水分を飛ばしたかつお節を細かく砕いたかつお節100%の魚粉と、たっぷりのネギを入れ、熱々のつゆを加えます。そこに、えごま油を大さじ1杯入れれば完成です。
つゆはできるだけ熱くすることがポイントです。このつゆに蕎麦を付けてよ~くかき混ぜながら食べてみてください。革命が起こりますよ」
レシピを製作する過程では、「えごま油の代わりに、オリーブオイルやアマニ油を試してみましたが、やはりえごま油がダントツに美味しかったですね。コクとまろやかさが違います。定期的に食べたくなる、中毒性もあります(笑)」と池森さん。ご自宅にも、えごま油を常備しているそうですよ!
さて、気になるお味ですが、池森さんの言葉を借りれば、まさに「刺激的でロックな味わい」。あれだけ大量のブラックペッパーを入れているのに、辛さはほとんど感じません。「動物性の食品は一切使ってないのに、ガツンと来るでしょう?」。
DEENは5年に1回、47都道府県ツアーを開催しており、全国の有名な蕎麦店は、ほぼ食べ尽くしたと豪語する池森さん。「SOBA CAFE IKEMORI」は「全国でもほとんど見かけない、アレンジ蕎麦をメインにする店にしたかったんです」とのこと。
かけそばやもりそばもありますが、「そういった、ほかの蕎麦屋にも置いてあるメニューは、5、6回目くらいの来店で食べていただければ(笑)」と満面の笑みをのぞかせます。ちなみに、蕎麦は、つゆではなく、塩とわさび、えごま油を混ぜた薬味に付けていただいても美味しいそうですよ!
同店唯一の揚げ物である、分厚い「特製かき揚げ」(450円)も紹介しておきましょう。こちらは、キャノーラ油(菜種油)で揚げているそうです。じつは、池森さんは「蕎麦に天ぷらは不要」というスタンスで、こちらのかき揚げは、調理担当者が開発したのだとか。「僕は必要ないと思っていたのですが、とても人気があります(笑)。野菜とエビがどさどさと入っていて、とても美味しいんですよ」と今では池森さんも太鼓判を押します。調理担当者によると、キャノーラ油を使用している理由は、「油切りが良く、カラっと揚がるから」。口内で暴れ出さんばかりに、サクサクに揚げたかき揚げは、池森さん特製の、麺つゆとの相性も抜群です!
「メニューの8割は僕が開発しています」と池森さん。現在のイチ推しは、「スープナポリタンそば」(1,600円)。「池森考案の秋の新作です。フライパンひとつで作る「ワンパンパスタ」を蕎麦に置き換えました。具材を炒めたフライパンに多めの水を入れ、ケチャップ、麺つゆ、更科粉で作った乾麺の蕎麦を入れて作っています。蕎麦のナポリタン味が完成しました!」。
「撮影後、池森さんは、ご自身のお店で、「うまい、うますぎる!」と言いながら、マネージャーさんと蕎麦を食べていました。並々ならぬ蕎麦への愛情、見事です(笑)。そして、えごま油を自宅に置いておけば、自宅での蕎麦ライフが、これまで以上に、充実することを確信しました。
1969年生まれ、北海道出身。1993年、ロックバンドDEENのボーカリストとしてデビュー。1stシングル〈このまま君だけを奪い去りたい〉がミリオンヒットを記録。2023年にデビュー30周年を迎えた。蕎麦好きとしても知られ、そばメーカーとコラボレーションし、数多くの乾麵を開発、蕎麦に特化したYouTubeチャンネル『池森チャンネル』で様々なアレンジレシピを提供中。レシピ本『分とく山・野﨑洋光監修 DEEN池森の「創作」乾麺蕎麦レシピ』(小学館)など蕎麦に関する著作も上梓している。
絵画の中には姿が描かれている奥の壁一面に広がるアートは、店内の壁画は、長野在住のアーティストTOMOYAARTS氏によるもの。長野と新潟の県境近くに位置する戸隠連峰やそば畑に加え、ブラジルやハワイの要素を盛り込み、南国のリラックス感がある空間で、DEENの2人が歌っている!
SOBA CAFE IKEMORI(ソバカフェイケモリ)
住所/東京都港区赤坂6-10-4 1F
定休日/土・日曜、祝日
営業時間/11:00〜20:00(19:30 L.O.)
Tel./03-5573-2011
https://soba-cafe.jp/
取材・文/長谷川あや 撮影/中庭愉生