一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

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植物油サロン

食に経験や造詣が深い著名人、食に係わるプロフェッショナル、植物油業界関係者などの方々に、自らの経験や体験をベースに、
食事、食材、健康、栄養、そして植物油にまつわるさまざまな思い出や持論を自由に語っていただきます。

第2回 愛する人とおいしいものを食べる喜びを一人でも多くの人に知ってほしいですね 江上料理学院副院長 江上佳奈美さん

祖母の江上トミさんが創設した江上料理学院を、母の江上栄子さんとともに受け継ぐ江上佳奈美さん。専門とする家庭料理への思い、食を通してすべての家庭へ、そして世界へと広がる夢を、愛情たっぷりに語ってくださいました。

家庭料理は家族を思って作る“オーダーメイドの食事”

ソプラノ歌手 島田祐子さん

毎日お母さんが作ってくれたおみそ汁から、クリスマスの特製ローストチキンや誕生日のお寿司まで、それぞれのご家庭には“我が家の味”というものがあります。それこそが大人になっても忘れられない家庭料理の味。江上料理学院ではそんな家庭料理をお教えしていますが、プロの料理と家庭料理にはそれぞれ違うよさがあります。プロの料理はお金をいただいて、いつも味の変わらないおいしいものを提供する“契約”の料理。一方、家庭料理はオーダーメイドの食事です。

たとえば、同じ肉じゃがでも家庭によって味はさまざま。「お父さんがじゃがいもより里芋が好きだから、うちの肉じゃがは里芋で」ということもあるでしょう。また「お父さんの血圧が心配だから、うちのおみそ汁はだしが濃いぶん、塩分は減らして薄味に」とか、「うちは子供が運動をしているから、クエン酸たっぷりの酸っぱいサラダなの」というような工夫をすることもあります。それが「売り物にはならないけれど我が家オリジナルの家庭料理」なのです。だから私たちは、ちょっとした料理のコツを身につけるためのお手伝いをするだけ。我が家の味を作るのはそれぞれの家庭の皆様なのです。

料理とは楽しいもの!それを生徒さんたちに伝えていきたい

江上料理学院を創設した祖母の江上トミは明治生まれの古い人間でした。しかも九州人ですから、「台所は女の城」「家庭の幸せは愛情をこめた料理から」という、今からみれば極論を信条としてしていましたし、「自分はあまり美人ではないから、夫は胃袋でつなごう」と考えていたようです(笑)。そんな祖母の口癖は「自分の好きなものは作るな」で、今日は夫、明日は子供、あさっては姑の好物を作るようにしていたほどでした。

でも当時に比べて、時代は大きく変わりました。夫のために料理を習いに来るという方はほとんどいません。今では自分が人生の付加価値としておいしいものを食べたいからというかたが一番多く、二番目は子供のため、三番目が友人や夫のためです。教室に通えなくなった奥さんの代わりにご主人が見えたり、婚約者の女性に言われて若い男性がやってきたりと、男性の生徒さんも増えました。私たちの一番の願いは、そんなすべての生徒さんに料理は楽しいものだとわかっていただくことです。

おいしいものはいつでも大事なコミュニケーションの手段

おいしくて体にいいものは、いつの時代もコミュニケーション手段のひとつ。今ではたった一人で食事をするほうが気楽だという子供も増えていますが、おいしいものを食べて怒る人はいないでしょう。世の中がますますギスギスしないように、おいしいものをみんなで一緒に食べることの楽しさをもっと知ってほしいと思うのです。

たとえば学院で春にお教えするお花見弁当。「お花見で手作り弁当をふるまったら喜ばれた!」と生徒さんたちが報告してくれます。またクリスマスにはローストチキンのクラス。ご飯や栗を詰めた焼きたてのチキンをすぐ持ち帰り、家族で楽しんでいただけるようにしているので、私たちは毎年12月23~25日は大変! この季節のために岩手の鳥屋さんに育ててもらった100羽の鶏を取り寄せ、ひたすらローストチキンを焼き続けて……。冷たい水で洗いものをしながら、「まるで変身前のシンデレラみたいね」と笑っています。でも、それでもたくさんのご家庭の食卓でおいしいコミュニケーションが生まれると思うと、嬉しくて嬉しくて。「今日もみんなを幸せにしたぞー!」と思うんです。

世界の国々が誇る食文化と知恵を伝えていくのが私たちの役目

時代が変わった今、私たちの仕事は“学校”でなく“サービス業”。スタッフにも「生徒さんはお客様。自分たちは接客業と思いなさい」と教えています。そんな私たち江上料理学院の別名は“江上旅行学院”。祖母は「“だそうです”ではいけない。行って見てこい」が口癖で、中国との国交正常化の際には車椅子で中国を訪れたほどでした。今もその信条の下、海外の料理のクラスではレシピだけでなく、その国で体験したナマの情報をお話するようにしています。海外では日本と違い、文化・食生活・宗教がとても密接。それを理解・尊重し、文化マナーをわきまえなければ、真の国際交流はありえません。

また、それぞれの国には環境や生活習慣から生まれた食の知恵があります。たとえばミャンマーのカレーはインドのものより油が多いのですが、これは“油返し”と呼ばれるもの。大量の油の中で煮るわけですが、それが保温もし、ラップ代わりの虫除けのふたにもなるのです。また学院には中国の知恵・医食同源のクラスもありますが、医食同源とは何も漢方薬を使うことではありません。たとえばスパイスを油と合わせて調理すれば成分が溶け出て効用がアップ。にんにくを油で炒めれば食欲を増進させるいい香りが立ちますし、唐辛子なら体を温める効果が増すのです。こうした古今東西の食の知恵を楽しく取り入れて、おいしく体にいい家庭料理をお伝えしていくことが私たちの務めだと思っています。

プロフィール 江上 佳奈美

江上 佳奈美(えがみ かなみ)

江上料理学院副院長
料理研究家 フードアドバイザー

1959年東京生まれ。江上料理学院長・江上栄子の長女。2児の母。
学習院大学仏文科、パリ・コルドンブルー料理学校卒業、フランス鑑評騎士の会会員。

1989年より江上料理学院副院長を務め、祖父母・江上トミ、母・江上栄子から受け継いだ、伝統をふまえながらも、より現代的な料理を発表している。

食品メーカーや外食、流通のアドバイザーを務め、商品の開発や企画も行いながらニュースや情報番組、バラエティ番組などでも幅広く活躍。現在NHK「首都圏いきいきワイド」料理コーナーに出演中。

著書に「スパゲティとピザ(グラフ社)」、「ワインのおかず(柴田書店)」、「大人の味のパウンドケーキ(世界文化社)」、「おいしい!かんたん!超初心者レシピ(主婦と生活社)」、「江上佳奈美のはじめての料理(日本文芸社)」、「わが家で楽しむ世界のチーズ(素朴社)」他多数発刊。またCD-ROM「お料理かんたんノート(タカヤマ)」、「おしゃべりワイン(テイチク)」など多数発売。

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