一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

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植物油の道

6.日本の植物油事情

 ここまで世界の油糧種子や植物油に関して説明してきましたが、次に、日本の状況についてご説明しましょう。

(1)植物油の製造

植物油製造業とは、油糧種子などの原料から油分を抽出し、油と粕(ミール)に分離してそれぞれの需要先に供給する産業です。これまで、「搾油あるいは搾油業」という言葉を用いてきましたが、混乱を避けるためきちんとした定義が必要になります。植物油は、油糧種子などの搬入~原料から油分を悟り出す搾油工程~食用に適した油とするための精製工程~容器への充填~製品の搬送という製造工程を経て、皆様にお届けしています。
それでは、順を追ってこれらの工程をご紹介しましょう。

① 油糧種子などの搬入

 日本の場合、まず、港湾に油糧種子が到着することから製造工程が始まります。油糧種子のうち、大豆、菜種など大量に処理するものは、輸出国から大型の貨物船により港湾に立地する搾油工場の岸壁に接岸し、付設のサイロに搬入されます。図15の写真は、接岸した貨物船から油糧種子をサイロへ搬入するところを示しています。これをアンローディングと称します。内陸部に位置する搾油工場の場合は、港湾の商業サイロにアンローディングされたのち、トラックで搾油工場まで陸送されます。

図15 油糧種子のアンローディング
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 しかし、ごまなど取引単位が少量である種子の場合には、大型の貨物船ではなくコンテナで輸入されることが一般的で、港湾のコンテナ・ヤードから専用の運搬車で搾油工場へ運ばれます。

 これに対し、米ぬか、とうもろこしの胚芽は、精米所やスターチ工場で発生します。これらは品質の劣化が早く進むことから、製油企業はできるだけ新鮮なうちにこれらを集荷し、搾油工場へ搬入します。

 このほか、国内で搾油していない油種(パーム油、ひまわり油、サフラワー油など)は、主に粗油(パーム油の場合はRBDと呼ばれる精製油が主)が専用船で輸入され、タンクに保存されます。

② 搾油工程

 搾油とは、大豆、菜種、ごまなどの原料から圧搾や溶剤抽出によって油分を取り出し、油とミールに分離する工程です。圧搾は、油分を多く含む菜種、ごまなどが原料の場合に行う工程ですが、圧搾後の原料にはまだ多くの油分が残留しているので更に溶剤抽出により油分を採取します。一方、大豆のように油分の低い原料の場合は圧搾では油が採取できないので、最初から溶剤抽出を行います。ここで製造された油は、油脂としての不純物や浮遊物を多く含んでいるので「粗油(Crude oil)」と称します。浮遊物などを除去し、場合によっては遊離脂肪酸を除去した粗油を「原油」と称することもあります。これをタンクに貯蔵します。また、分離されたミールは、調製(乾燥、粉砕など)を行い、倉庫に保管します。植物油の国際流通のほとんどが粗油で行われており、CBOTで形成される大豆油価格も粗油の価格です。

③ 精製工程

 タンクに貯蔵した粗油は、次に精製工程に移ります。製造された粗油や輸入した粗油は油としての不純物を多く含み、色は濃い褐色で、強いにおいを有しています。精製とは、これら浮遊する不純物の除去(脱ガム)、遊離脂肪酸の除去(脱酸)、色の除去(脱色) 、臭いの除去(脱臭)を行う工程です。ここまでの工程を経た油が精製油です。さらに、油に含まれる天然成分であるワックス成分を除去したものがサラダ油で、サラダ油は広い意味で精製油の一形態ということになります。これらの段階を経て食用に適する植物油が製造され、タンクに貯蔵されます。

 しかし、オリーブ油やごま油は、大豆油などと異なり、それらが本来有している独特の臭いや色が好まれます。このため、これらの油では浮遊物を除去する程度で、その後の精製を行わないこともあります。バージンオリーブオイルや焙煎ごま油がその代表です。

④ 充填、配送

 タンクに貯蔵していた精製油(サラダ油)は、家庭用のボトルや外食産業などで主に用いられる1斗缶への充填が行われ、卸売業、小売店、外食店などに配送されます。また、食品加工業向けの用途の場合は容器へ充填することなくタンクローリーで需要者まで届けられます。図16は、1.5kgのボトルにサラダ油を充填しているところです。

図16 サラダ油の充填
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 以上の工程を図17に取りまとめました。植物油製造業はパイプ産業と称することができる産業です。油糧種子がサイロから搾油工程に移った段階からは、最終製品ができ上がるまですべて密閉状態のなかでで処理されていきます。パイプの中を移動しながら油が製造されていきますので、私たちが目にすることができる工程は、最初の油糧種子のアンローディングと最終製品となって容器に充填される工程だけになります。

図17 植物油ができるまで
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⑤ 日本の植物油製造業の特徴

 以上にご覧いただいたとおり、植物油製造業というものの、搾油工程と精製工程とは全く異なる工程です。アメリカなど油糧種子の大生産国では、搾油工場は油糧種子の産地や集積地に立地して搾油工程のみを専門的に行い、効率的に粗油を生産しています。これに対し、精製工場は消費地に近い場所に立地し、搾油工場から粗油を購入して精製することが一般的になっています。

 一方、日本では原料の集積地(輸入港湾)と消費地が近接していることから、同じ敷地内に2つの工場を併設することが一般的となっています。このため工場見学をすると、サイロから搾油工程に移された大豆や菜種が、そのまま最終の精製油(サラダ油)になるような錯覚を覚えますが、決してそうではなく、大豆や菜種などを原材料として粗油が製造されて貯蔵され、その粗油を原材料として最終製品が製造されます。食用油は一次加工品のように誤解されがちですが、実態はこのように二次加工品なのです。

 植物油製造業は、「製油業」、「製油産業」とも称することがあります。日本の製油企業は、上記のとおり搾油工程と精製工程の双方を有する形態が一般的ですが、どちらか一方だけを行う企業や工場もあります。日本の近代的な植物油製造業は、国産の菜種と満州(中国東北部)で生産されていた大豆を原料として発展した歴史がありますが、現在では、商業ベースで利用される国産の原料は米ぬかだけで、ほぼすべての原材料(油糧種子)を輸入に依存しています。地域産業として、少量の国産菜種、落花生などから植物油が生産されていますが、数量が1,000トンに満たない場合には、国の統計では0とされます。

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