一般社団法人日本植物油協会は、
日本で植物油を製造・加工業を営む企業で構成している非営利の業界団体です。
ここには、植物油を理解する上で必要と思われる用語の意味を簡単にご紹介しました。
私たち関係者が日頃から何気なく使っている用語ですが、改めて問われますと簡単に説明できないこともしばしばあります。
この用語集が、皆様に植物油を理解していただくために少しでもお役に立つことを願っています。
油糧種子 |
植物の種子のうち、油分の含有量が多く、植物油の原料として利用されるものを「油糧種子」と総称している。世界の主な油糧種子は、大豆、なたね、ごま、ひまわり、サフラワー(べに花)、綿実、落花生、パーム核等がある。 |
その他の油糧原料 |
オリーブ及びパーム(油やし)は、果肉に油分を多く含んでおり、それぞれオリーブ油、パーム油の原料として用いられる。 |
温帯油脂と熱帯油脂 |
油糧原料の生産地域に着目して、パーム油、パーム核油、やし油など主に熱帯地域で生産される常温で固型の油脂を「熱帯油脂」と称している。これに対し、大豆油、菜種油などその他の植物油を、日本では「温帯油脂」と称することがある。 |
粗油 |
油糧原料から圧搾又は抽出した状態の油を言うが、国際貿易で定義される粗油は、ガム質を除去したものも含まれる。粗油は、一般的に食用には適しない。 |
精製油 |
粗油には、揚げ物や生食には好ましくないさまざまの不純物が含まれている。この不純物を除去することを精製と言い、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭等の工程がある。この精製工程を経たものを「精製油」という。なお、油種ごとの独特の香りや風味を生かすため、このような精製工程を経ず、濾過などによる不純物の除去にとどめている製品もある(バージン・オリーブ油、焙煎ごま油、赤水など) |
サラダ油 |
融点の高い成分(天然由来のロウ分等)を含まず、耐冷性(低温度でも固まらない)を有し、風味がよく、色調の淡い植物油である。JAS(日本農林規格)では、0℃の温度で5.5時間清澄であることとされている。生食だけでなくマヨネーズ、ドレッシングなどの材料に用いられる。油脂中に高融点成分が多い植物油は、脱ロウ工程を経てサラダ油が製造される。 |
調合油 |
2種類以上の油種を混合した油の総称。 |
天ぷら油 |
精製油のうち家庭用のものを、天ぷら油と称したことがある。現在では、家庭用向けの植物油はほとんどがサラダ油となっているため、業務用の植物油の一部に姿をとどめている。 |
白絞油 |
精製油のうち、業務用のものを業界用語で「白絞油(しらしめゆ)」と称することがある。代表的なものに大豆白絞油、菜種白絞油がある。語源は、 油問屋が仕入れた菜種油を加熱(炊き直し)、上澄みを採取した油の色が薄く透明に近いものであったことから、その当時一般的に流通していた赤水(後述)に対して、このような名称で呼ばれた。 |
赤水 |
一般的には軽度の精製を行った菜種油を指す名称である。菜種を焙煎してから搾油し、湯洗いしたのち乾燥(水分の除去)したもので、菜種油独特の風味を遺した油で、色が赤みを帯びていることからつけられた名称。主に、油揚げに使用される。 |
バージンオリーブオイル |
オリーブの果肉に含まれる油分を、加熱せず、機械的に搾って得た油で、水洗、濾過、遠心分離、デカンター以外の処理をしていないもの。バージンオリーブオイルのうち、一定品質以上のものをエクストラ・バージンオリーブオイルと称する。 |
ピュアーオリーブオイル |
上述のバージンオリーブオイルと精製したオリーブオイルとをブレンドしたオリーブオイル。日本独特の呼称で、海外では単にオリーブオイルと呼ばれる。 |
加工油脂 |
食用動植物性油脂を、水素添加、エステル交換、分別、乳化、可塑化などの加工を加え、製菓、ベーカリー、その他の用途に適した性状を付与した油脂製品の総称。JASの農林規格では、水素添加、エステル交換、分別処理による加工油脂で、一定の品質のものについて「精製加工油脂」として規格が定められている。 |
機能性油脂 |
油脂そのものが有する栄養機能とは別に、熱安定性の良い油脂や加熱時の臭いが少ないなどの特徴を付与した油脂を機能性油脂と称している。 |
香味油 |
油脂に、スパイス、ハーブなどを加えて油に香味を付加したもの。ラー油、ガーリック油、ねぎ油、バジル油、バター風味油などが代表的な製品。 |
健康油 |
法的には明確な定義はなく、市場の造語である。 |
ミール(脱脂粕) |
油分を抽出した油糧種子の粕から、油分抽出に用いた溶剤の残滓を除去し、乾燥・整粒したものをミール又は脱脂粕(一般的には、元の原料名を付して、大豆粕、大豆ミールなどと称する)のこと。大豆ミールは主に配合飼料、大豆たんぱく食品、醸造などの用途に、菜種ミールは配合飼料、有機肥料などの用途に利用される。 |
圧搾及び抽出 |
油糧種子から油分を取り出す工程で、菜種など油分を多く含む種子は強い圧力をかけることで一定の油分を搾りだすことができる。この工程を圧搾と言う。この搾り粕には多くの油分が含まれているので、溶剤(ノルマルヘキサン)で油分を溶出させる工程を抽出と言う。大豆のように油分が少ない原料の場合は、圧搾工程はなく、抽出工程のみである。圧搾・抽出の工程を総称して「圧抽」と称している。「搾油」も、両方の工程を含む用語として用いられる。 |
抽出溶剤 |
上述の抽出工程で、油分を抽出するために用いる溶剤。製油業においては、食品添加物として認められているノルマルヘキサンという有機溶剤を使用している。 |
精製工程 |
搾油によって得られた粗油から、油分以外の不純物を除去する工程で、次の順序で行われる。 [脱ガム] [脱酸] [脱色] [脱臭] [脱ロウ] |
エステル交換 |
油脂は、主としてグリセリンに3つの脂肪酸が結合した物質(トリ・グリセライド、または、トリ・グリセリド)である。この結合した脂肪酸を、酵素あるいは化学触媒を利用して分子内または分子間で再置換、再配列することにより油脂の物性を変化させる手法をエステル交換と言う。これにより、様々な用途に適合する加工油脂を製造することができる。 |
水素添加 |
油脂の酸化安定性の向上、物性の変化などのために行う手法の一つ。油脂に触媒存在下で水素を吹き込むと、脂肪酸の不飽和結合の部分に水素が結合する。この水素添加の程度により、油脂の性状を液体から固形状まで変化させることができる。この機能を利用した代表的な加工油脂が、マーガリン、ファットスプレッドである。同義語・関連語として、硬化・硬化油がある。 |
抗酸化(酸化防止)剤 |
植物油は、それ自体に酸化を防止する物質(トコフェロール、トコトリエノールなど)を含むが、更に酸化安定性を高めるため、酸化防止機能を有する物質を添加することがある。食品衛生法では、酸化防止剤としてトコフェロールやBHA(ブチルヒドロキシアニソール)などが認められているが、JAS法の農林規格では、家庭用の植物油に酸化防止剤を利用してはならないとされている。 |
脂肪酸 |
油脂を構成する主成分の一つで、炭化水素鎖(水素が結合した炭素が連鎖状に結合したもの)の末端にカルボキシルが結合した有機酸。この連鎖の炭素数と不飽和結合の数により脂肪酸(後述)の名称が決められている。大豆油、菜種油など普通の植物油では炭素数が16~18、パーム油、やし油などでは6~12のものが多く、前者を長鎖、後者を中鎖と称する。 |
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸 |
炭化水素鎖の炭素のすべてが飽和結合している脂肪酸を飽和脂肪酸と称し、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などがある。これに対し、炭化水素鎖の一部が不飽和結合(二重結合)状態にあるものを不飽和脂肪酸と称し、二重結合が一つのものを一価不飽和脂肪酸、二つ以上あるものを多価不飽和脂肪酸と言う。 |
必須脂肪酸 |
人体の生理機能に不可欠の脂肪酸であるが、体内で合成されないため、食事として外部から摂取しなければならない脂肪酸を「必須脂肪酸」と称する。多価不飽和脂肪酸のうち、特に重要なリノール酸、α-リノレン酸を言うが、体内での合成が十分に行われにくいEPAやDHAも必須脂肪酸とする考え方もある。 |
植物油に含まれる微量成分 |
[植物ステロール] [リグナン] [トコフェロール] [γ-オリザノール] [トランス型脂肪酸] 食品安全委員会HP:www.fsc.go.jp |
シカゴ市場 |
アメリカのシカゴに位置する商品先物取引所の通称。Chicago Board of Tradeの頭文字をとってCBOTとも称されることがある。2001年7月、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に合併され、CMEの一部門となったが、機能は変化していない。さまざまな食料・農産物の先物取引が行われており、油糧種子の代表である大豆とその派生品である大豆油(粗油)と大豆ミールが上場されている。大豆は容量を表す単位である1ブッシェル(およそ27.4kg)、大豆油は1ポンド(およそ454g)、大豆ミールは1ショートトン(2,000ポンド。およそ908kg)当たりの価格で取引されている。 |
ボード・マージン |
シカゴ市場で形成される価格に基づいて、1ブッシェルの大豆から、11ポンドの大豆油と44ポンドの大豆ミールが製造されると仮定し、これらに市場で形成された価格を乗じ、大豆油及び大豆ミールの価額から、大豆の価額を差し引いたもので、大豆搾油業の大まかな収益性を判断する指標とされる。 |
オイルバリュー、ミールバリュー |
1ブッシェルの大豆から製造される大豆油(粗油)と大豆ミールの価額の総額に対する、それぞれの価額の相対比。 |
アメリカ大豆協会 |
アメリカの大豆生産農家で構成する農業団体。American Soybean Associationを略称してASAと呼ぶ。アメリカの大豆関係組織の改編により、2005年10月から、農業団体として生産農家に対する教育や政府に対するロビー活動を行っている。 |
全米大豆基金 |
アメリカ農務省の外郭機関。United Soybean Boardの頭文字をとってUSBと呼ぶ。大豆生産農家からチェック・オフ(大豆の市場価格の0.5%)を徴収し、政府補助金を加えて、大豆生産の振興や市場開拓などの活動を実施している。 |
アメリカ大豆輸出協会 |
2005年10月のアメリカの大豆関係団体の再編により、それまでASAが担ってきた大豆の市場開拓を担う団体として発足した団体。U.S Soybean Export Councilを略称してUSSECと呼ぶ。旧ASAの海外事務所は、USSEC発足後も歴史的な認知度を踏まえて、「ASA○○事務所」と称していたが、2013年から「アメリカ大豆輸出協会○○事務所」と改称された。活動資金は全米大豆基金とアメリカ農務省から支給される。 |
カナダ菜種協会 |
カナダの菜種生産者、流通・輸出業界、搾油業界などで構成する協会。Canola Council of Canadaの頭文字をとってCCCと称する. |
BDF |
菜種油、大豆油、パーム油など植物油から製造されたディーゼル燃料。生物資源を原料とするため、Bio Diesel Fuelの頭文字をとってBDFと略称される。石油から製造されたディーゼル燃料は経由であるが、BDFは脂肪酸をメチル基にエステル結合したメチルエステルである。とうもろこしやサトウキビから作られるバイオエタノールと併せて再生可能燃料(RF)と総称されることもある。植物がその生育過程で二酸化炭素を吸収して光合成をおこなうため、BDFが燃焼して発生する二酸化炭素と量的に相殺されるという考え方(カーボン・ニュートラル)に基づき、地球温暖化防止対策の有効な方策としてEUなど多くの国で生産されている。 |