アメリカの幾つかの調査報告では、家庭で消費される食品に比べ、家庭外で提供される食品は栄養の質が劣る(lower nutritional quality)ことが示されています。一般的に、家庭外食料は高脂質、高飽和脂肪、高塩分、高コレステロール、低食物繊維、低カルシウムになりがちで、これを消費することはカロリーの摂取を増やし、食事の質を低下させるというのがその理由です。
したがって、図1に見られたような家庭外食料への支出の減少は、食事の質にとっては好ましい影響(positive impact)と、それに伴う食事由来の健康的な効果(health outcome)をもたらすと考えられています(アメリカの家庭外食料は、このように観念されています)。
とはいえ、そのことを食料支出額の変化だけで実証することはできません。このため、経済調査局は、2年を単位として継続的に実施されている国民健康栄養調査の調査個票を用いて、これらを実証することを試みました。
(1) 対象とする調査期間を次の3期に分けて比較する。
経済不況の直前(2005~06年度)
不況のさなか(2007~08年度)
不況の終焉後(2009~10年度)
*公式に認定された不況期間と比較すれば、2007年度の上半期は不況前に当たり、2009年度の上半期は
不況中に該当しますが、得られるデータの限界ということになります。
(2)対象とする調査個票
コーホート分析とするため、勤労世代とみなされる1946年から1986年に生まれた人の個票を用い、(1)の期間における同一世代の食生活の変化を観察する。勤労世代について観察するのは、この年代層が失業、所得の減少など不況の影響をもろに受けた世代であると考えられることによります。これとともに、不況の影響を受けることが少なかったと考えられる1946年以前に生まれた人(2005~06年時点で60歳以上の退職年齢層であり、不況の影響をもろに受けなかったと見られる)についても同様の観察を行い、勤労世代との相違を検証する。
(3)調査する項目
① 毎日のカロリー摂取量
② そのうち、家庭外食料からのカロリー摂取量
③ ファストフードからのカロリー摂取量
④ 毎日の食事回数
⑤ 毎日の家庭外食料の摂取回数
⑥ 脂肪及び飽和脂肪からのカロリー摂取割合
⑦ 全コレステロール摂取量
⑧ 食物繊維摂取量
さて、これらのデータを分析することによって、アメリカで一般的に観念されている「家庭外食料消費の減少は、食事の栄養的な質を高める」ということが検証できたのでしょうか。
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