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今回の「摂取基準2005」では、年齢区分を細分化したため、それぞれの年齢層に対し、総摂取エネルギーに対する脂質エネルギー比率が設定されています。このため、第6次に比べて、脂質エネルギー比率の範囲が広く設定でき、年齢に応じた献立が組立てやすくなっているといえます。
ここでは、適正な脂質エネルギー比率の考え方を説明します。
脂質エネルギー比率の下限
脂質エネルギー比率の下限設定に当たっては、次の事項が考慮されています。
(1)エネルギーの補給
脂質はエネルギー密度が最も高い栄養素のため、摂取量が少ないとエネルギー摂取不足になりやすい
(2)他の栄養素の吸収機能
極端な低脂肪食は、脂溶性ビタミンの吸収を悪くする
(3)必須脂肪酸摂取量の確保
n-6系脂肪酸やn-3系脂肪酸の必須脂肪酸の目安量(AI)が含まれる量であること
(4)日常の献立がたてやすいこと
(5)脂質全体の約10%を占めるグリセロール部分をエネルギーとして加算
これらのうち、(1)~(3)の事項を考慮すると脂質エネルギー比率は10~15%が必要であり, 更に、(4)~(5)を考慮すると20%が必要となることから、この値が1~69歳の人に適用する下限の脂質エネルギー比率とされています。
第6次改訂「栄養所要量」と比較すると、青少年層では25%から20%へ、70歳以上では20 %から15%へと下限が広がりました。脂質エネルギー比率は年齢により大きく変わり、成長期には高く、高齢になると低くなりますが、70歳以上で15 %エネルギーと20%エネルギーのどちらが健康的な生活(QOL)が維持でき、生存率が高いかを比較した研究がないため、70歳以上の生理的摂取量に近い15 %が目標量(下限)になっています。
また、0~4ヶ月児の乳児には、エネルギー源としての脂質の重要性を考慮し、母乳成分の平均値を目安量とし、この量を摂取すれば、エネルギー欠乏は起こらないことを強調しています。さらに、5~11ヶ月児は離乳期で、母乳と離乳食の両方を摂取する時期であることから脂質摂取量の把握が困難なため、1歳児の脂質エネルギー比率の中央値と母乳成分の平均値との平均を5~11ヶ月児での目安量としています。
一方、脂質エネルギー比率は年齢により大きく変わり、成長期には高く、高齢になると低くなりますが、70歳以上で、15%エネルギーと20%エネルギーのどちらが健康的な生活(QOL)が維持でき、生存率が高いかを比較した研究がないため、70歳以上の生理的摂取量に近い15%を目標量(下限)としています。
脂質エネルギー比率の上限
一般に、脂質エネルギー比率が増加すると、肥満が増加することを示す報告が多く見られます。また、日本人は軽度の肥満でも糖尿病を発症しやすい体質を有しているので、脂質エネルギー比率が高まると糖尿病罹患率が高まる可能性があります。肥満に悩む米国では、脂質エネルギー比率を30%以下に押さえた場合に体重の減少が認められるという多くの研究結果があります。
平成13年の国民栄養調査によると、1~29歳年齢層の脂質エネルギー比率の中央値(50パーセンタイル)は30%となっています。しかし、30歳以上年齢層では25%以下でとなっているので、より低い脂肪エネルギー比率の設定することが適切と考えられました。このため、脂質エネルギー比率の上限を、1~29歳年齢層では30%以下、30歳以上年齢層では25%以下と設定しています。
この結果、第6次「栄養摂取量」と比較すると、18~29歳年齢層では上限が25%から30%へと高く設定されることになりました。これは、年齢区分をより細分し、働き盛りである18~29歳では脂肪から多くのエネルギーを得る必要のある人がいることから設定されたのですが、肥満傾向の人に対しては、25%を推奨した方が良い場合もあり、各個人により判断することが必要になります。
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