わが国で植物蛋白食品が誕生したころ「21世紀の食品」、「未来型食品」などとその発展に大きい期待が寄せられていました。それにはいくつかの理由がありました。主な理由を並べてみましょう。
(1)食料摂取として非常に効率的であること。
動物性蛋白質の供給源である家畜の飼育には大量の穀物や草資源を必要とします。1kgの豚肉を得るためにはその6~7倍の量の飼料を、牛肉では同じく10倍の量の飼料を必要としますが、植物蛋白は植物から直接に蛋白質を製造することとなるので、動物性の蛋白質を摂取する場合に比べ効率的な資源利用になるという考え方に基づくものでした。特に世界の食料需給が逼迫するという長期展望のなかでこの説は説得性を有するものでした。
(2)蛋白質のみを摂取できること。
動物性蛋白質を摂取する場合には、同時に動物性脂肪を摂取することになりますが、植物蛋白食品であれば蛋白質のみを摂取することが可能になり、脂質の過剰摂取を防止できるという考え方です。
(3)産業の発展にも寄与すること。
当時、小麦粉や植物油の需要が更に増加するということが予測されていましたが、それらの副産物利用の途が広がることは、新たな食品産業の発展に寄与すると考えられていました。
(4)植物蛋白が健康増進に寄与する食物であるという期待があったこと。
植物蛋白が健康増進に寄与する食物であるという期待があったこと。この時期には未だ明確な根拠は得られていなかったのですが、経験的にそのような知見がありました。このことは後年になって明らかになりますが、これについては後に述べることとします。
まさに様々な課題に応える可能性を持った夢の食品として登場したと言っても過言ではありませんでした。農林水産省も植物蛋白食品の育成に高い期待を抱いていました。
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