伝統食品のそうめんに食用植物油

5.手延べめん製造業の悩み

 手延べそうめんは、製造に2日間の工程を必要とし、最後に寒い戸外でめんを延ばし、さおに吊るして乾燥させる門干し(かどぼし)で仕上げとなりますが、その一連の作業にはかなりの熟練を要し、しかも肉体的にもきつい労働でした。このため若い世代がこうした作業を敬遠しがちで熟練職人が次第に少なくなり、後継者や人手の不足が深刻な問題になるにつれて、この分野にも機械化の波が押し寄せています。


【 図7 熟練が要求されるめんの門干し作業 】
図7 熟練が要求されるめんの門干し作業

 乾めん全体の消費は停滞していますが、その中で手延べそうめんだけは順調に消費が伸びていますので、“手延べ”とはいえ、その特徴を失わない範囲で機械化を図らなければ、消費の拡大に供給が対応できないことが懸念されています。反面、機械化を進めることは純然たる手づくりのめんが少なくなっていくことになり、「手延べ」という言葉の使用に疑問をもたれるかもしれません。

 手延べそうめん製造業は専業的な工場もありますが、もともと農家の冬場の副業として発展してきた歴史から、現在もその形態が多くを占めています。このため手延べそうめん製造者がどれぐらい存在するか定かではありませんが、概ね1400工場と推定されています。それぞれの工場の規模は一般的には零細規模が多いのが特徴です。そんな大きい悩みを抱えていますが、日本の食文化を支え夏の風物詩を彩る手延べそうめんが、これからも植物油と手を携えて発展していくことを期待しています。

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