●高次生活機能障害を予防する食事
老化の速度は食生活と密接に関連していることを、生命の総量(長寿)だけで断定することには少し無理があります。すなわち、長寿とともに先に述べた高次の生活機能の自立性を備えていなければなりません。そこで筆者(熊谷教授)らは、余暇活動、創作、探索に代表される高次生活機能である「知的能動性」(表1の6~9の項目)について、加齢に伴って生じる障害と食品摂取頻度パターンとの関係を、地域高齢者約600名の2年間の縦断調査に基づいて明らかにしました。
図4は,食品摂取頻度パターンごとに「知的能動性」が低下する危険度を示しています。この図で数値が1.0以下であることは、それぞれの食品を高頻度に摂取するグループは、低頻度に摂取するグループより知的能動性の低下する危険度が低いと解釈することができます。図から明らかなように、肉類、牛乳、油脂類を高頻度に摂取するパターンの危険度が有意に低いことがわかります。また、高次生活機能の総合的な自立度(表1の1~13の項目)との関連を分析すると、肉類、卵、油脂類を高頻度に摂取する食事のパターンが障害を予防することがわかりました。すなわち、肉類、卵、牛乳などの動物性食品と油脂類を摂取する多様性に富んだ食事を営む高齢者ほど、高次生活機能の障害リスクが低いことになります。この関係は、都市部、農村部のいずれでも認められるわが国の高齢者における普遍的関係です。生命の質の前提条件である高次生活機能の自立性と余命を予知する食生活要因が共通していることもわかります。
【 図4 高次生活機能「知的能動性」の変化と食品摂取頻度パターンの関連 】
|