●からだの老化がもたらす健康障害のリスク
また、からだの老化が病気を引き起こすという追跡調査の結果があります。
図2は、高齢者の移動能力障害の程度ごとに、将来心臓病で死亡してしまうかもしれない危険度を比較しています。これは、からだの老化が病気と深い関係にあることを明らかにしたとても貴重な研究成果です。歩行能力に障害のないグループに比べ、1kmを続けて歩くことができないグループでは、心臓病で死亡する危険度が男性で1.8倍、女性で2.2倍となり、基本的日常生活動作能力に障害のあるグループではさらに危険度が高くなります。すなわち、高齢になると、からだの老化そのものが心臓病を引き起こす原因となることがわかります。
これまでに紹介してきた研究結果は、高齢期においては,からだの老化そのものが生活機能の自立障害と病気の罹患との二つのリスクファクターとなることを明らかにしています。したがって、高齢者に対しては、わずらっている病気を「老化の結果である」と捉える視点が必要になります。言い換えれば、高齢期の病気の管理に際しては、老化が進んでいないかどうかをチェックすることがとても重要になります。老化が進みはじめると、これまで共生できていた病気が急に悪くなるということもしばしば見られるようになります。
【 図2 生活機能障害と冠状動脈硬化性心疾患死亡危険度 】
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