いつまでも元気は、適正な食生活と運動から
1.からだの老化がもたらす健康障害

●からだの老化による生活機能の低下

  人が年齢を重ねるにつれて、からだの老化(体力や運動能力の低下)が進むことは避けられないことです。しかし、自分の老化の程度を客観的に知ることは、なかなか難しいことかもしれません。
  世界保健機関(WHO)は、高齢者の健康状態を生活機能の自立度で評価するよう提唱しています。生活機能には、まず「歩行」、「食事」、「入浴」、「排泄」ならびに「着脱衣」の基本的な日常生活動作能力があります。これらの項目の可否は高齢者の障害の程度を知るのに用いられます。

  しかし、地域社会で独立した生活を営むためには、これらの基礎的な能力に加え、「交通機関による移動」、「余暇活動」ならびに「社会交流」などのより高い水準の能力(高次生活機能)が必要になります。
特に、後者の高次生活機能は、生活の質の前提条件となります。高齢期の栄養管理の目標は、これら高次生活機能を維持増進し、地域で活発に楽しく暮らすことに置かれねばなりません。
  高次生活機能の自立度、つまり高齢者の元気度を計る指標として表1に示す「老研式活動能力指標」があります。

【 表1 老研式活動能力の判断指標 】

手段的自立
(1)バスや電車を使って一人で外出できますか 1.はい 0.いいえ
(2)日用品の買い物ができますか 1.はい 0.いいえ
(3)自分で食事の用意ができますか 1.はい 0.いいえ
(4)請求書の支払いができますか 1.はい 0.いいえ
(5)銀行預金,郵便貯金の出し入れが自分でできますか 1.はい 0.いいえ
知的能動性
(6)年金などの書類が書けますか 1.はい 0.いいえ
(7)新聞を読んでいますか  1.はい 0.いいえ
(8)本を読んでいますか  1.はい 0.いいえ
(9)健康についての記事や番組に関心がありますか  1.はい 0.いいえ
社会的役割
(10)友達の家をたずねることがありますか  1.はい 0.いいえ
(11)家族や友達の相談にのることはありますか  1.はい 0.いいえ
(12)病人を見舞うことができますか  1.はい 0.いいえ
(13)若い人に自分から話しかけることはありますか  1.はい 0.いいえ

「はい」が1点で13点満点。

  それぞれの質問項目への回答が「はい」の場合に1点、「いいえ」の場合に0点を与え、満点が13点になります。さまざまな病気を抱えている方であっても、この指標の点数が高ければより健康であるといえるのです。
  図1は、「地域高齢者の追跡調査」によって、生活機能の障害リスクと最大歩行速度の間に深い関係のあることを明らかにしています。この図から、追跡調査を開始した時点で、最大歩行速度の速いグループほど生活機能に対する障害リスクが低いことをおわかりいただけるでしょう。

【 図1 最大歩行速度ごとにみた生活機能障害発生危険度 ー N村縦断研究(1992-1996)ー 】


  また、現在は自立した生活を送っている高齢者であっても、歩行能力によって介護の要・不要の差が生じることが明らかにされています。
  1kmの歩行と階段の2階段昇降のいずれにも障害のないグループを基準とすると,これらのいずれか一方に障害のあるグループでは2.3倍、両方に障害のあるグループは3.2倍の介護認定リスクがあることが示されました(女性の場合)。
  これらの二つの研究成果で認められた関係は、脳卒中、心臓病、高血圧及び糖尿病などの主要な病気の罹患とは無関係でした。したがって、高齢者のからだの老化の程度が歩行能力の速度や持続力に直接的に映し出され、高齢期の健康状態は生活習慣病などとは関係なく、からだの老化によって規定されていることがわかります。

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