ひまし油のお話し

2.ひまし油の構造と用途

 ちょっと専門的になりますが、ひまし油の構造は他の植物油と同様に脂肪酸とグリセリンがエステル結合した物質ですが、その脂肪酸の約90%がリシノレイン酸(Ricinoleic Acid)という他の植物油では見られない特殊な脂肪酸であることが特徴です。リシノレイン酸は人体内では小腸粘膜に著しい局所刺激作用を与えるため、腸管がぜん動作用を起こし、瀉下作用(下痢を起こす働き)が起こります。これが、ひまし油を食用にできない理由です。

 リシノレイン酸は1分子中にヒドロキシル基と二重結合を持つために、他の植物油とは異なったユニークな性状を示し、化学的な反応性に富むため工業用途で広範囲に展開されています。

【 表1 ひまし油の一般性状 】
表1 ひまし油の一般性状

【 表2 ひまし油の脂肪酸組成 】
表2 ひまし油の脂肪酸組成

 ひまし油は、淡黄色の粘稠な不乾性油で、脂肪族炭化水素系溶剤を除く、ほとんどの有機溶剤に溶け、特に含水アルコールにも可溶性を示すという他の植物油には見られない特徴があります。また、可塑剤として用いられるように、種々の樹脂との良好な相溶性を有しています。

 ひまし油は、含まれるヒドロキシル基、二重結合およびエステル結合を利用して多くの化学反応を行わせることができ、得られた生成物は塗料、プラスチック、ゴム、建材、金属及び機械など広範な工業用の用途に利用されています。

 ひまし油が、化学工業などでどのように広く利用されているかを一覧表にして示すと、表3のとおりです。実は、私達の身の回りに気付かないままに、ひまし油を利用した多くの製品があることがお分かりいただけるでしょう。

【 表3 ひまし油の用途の広がり 】
表3 ひまし油の用途の広がり

 このように化学用語で示すと少し難解に見えますが、次に示すような製品となって皆様の身近なところでお役に立っています。夜、寝る前に歯を磨き、口臭防止液で口をすすぎ、ウレタンマットに布団を敷くと、歯磨き粉、口臭防止剤、マットを通じてひまし油製品を利用していることとなりますね。

【 図2 ひまし油の用途例 】
貼り薬 天ぷら廃油の凝固剤
貼り薬 天ぷら廃油の凝固剤
金属加工油剤 電子部品の封止材
金属加工油剤 電子部品の封止材
人工透析器 ウレタンフォーム
人工透析器 ウレタンフォーム
印刷インク用添加剤 塗料用添加剤
印刷インク用添加剤 塗料用添加剤
写真:伊藤製油(株)提供
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