「東アジア植物油シンポジウム」(平成19年5月24日開催)に参加したCNVOA代表は、WTO加盟後の中国の植物油市場について興味ある報告を行いました。
中国は、2001年末にWTO加盟を果たし、2002~2005年の移行期間を経て2006年から貿易の自由化が実行されました。WTO加盟以前、中国の油糧種子と植物油の貿易は、国家機関である中国糧油公司が一元管理していましたが、2001年から民間に対する輸入の関税割当枠を徐々に増加させ、2006年から完全に自由化することとなりました。このような動静を見極めていた国際製油資本は、1990年代半ばから、単一あるいは国内製油資本との合弁により製油工場建設を加速化させ、この結果、中国の主な港湾には大型の製油工場が林立することとなりました。
WTO加盟による最も大きい変化は、植物油需要の急速な増加でした。表3はシンポジウムで示された中国の植物油需要の変化を示しています。
【 表3 中国の植物油需要の変化 】
1999年に1,175万トンであった植物油需要量は、2006年(見込み)には2,140万トンと82%増加しました。平均では毎年138万トンの増加で、日本の年間総消費量の概ね2分の1ずつの増加を続けたことになります。この需要量の変化は、大豆油とパーム油に牽引されています。この2つの油種は、いずれも輸入に依存していることから、中国の需要増加は輸入の増加によって支えられているということができます。
また、同じ期間における中国国内の油糧種子の生産量を見ると(表4)、年による若干の変動はあるものの、国内の油糧種子生産はほとんど変わらない水準にあることから、植物油需要の増加が輸入に支えられてきたことが分かります。
【 表4 中国における油糧種子生産量の推移 】
中国植物油業者協会の代表者は、2006年に輸入された植物油と、輸入原料から製造された植物油の合計数量が1,281万トンに達していると推計しています。したがって、総需要量の約6割が輸入に依存していることとなります。
「中国の植物油需要は、今後もこのような急速なペースで増加するのでしょうか?」という問いに対し、同協会は、「今後の需要の伸びは鈍化する。」との見解を示しています。その要因は、
【1】 WTO加盟に伴う輸入枠の拡大により、潜在的な需要が一気に吹き出したと考えられること。
【2】 中国の一人1年当たり植物油需要量は16kg、都市部では18kgに達しているが、これは、栄養政策当局が目標とした2010年の数値を超えていること。
にあるとしています。しかし、伸びが鈍化するとはいえ、1年当たりの増加量は100万トン程度になると見込まれており、今後も、この巨大な胃袋が世界の植物油消費を押し上げていくことには変わりがないようです。 |