拡大を続ける東アジアの植物油市場
2. 中国の植物油製造業の二重構造

 ところで、東アジアの国・地域は、漢字を主体とするコミュニケーション、米を主食とする食文化などの共通点が見られます。それでは、植物油に関して共通点はあるのでしょうか。台湾、韓国そして日本は、植物油原料となる油糧種子の国内生産がほぼ皆無に近く、輸入に依存しているという点で共通しています。

 では、中国はどうでしょうか。中国は、世界最大の菜種生産国であり、大豆、綿実、落花生なども世界有数の生産国です。しかし、これらの原料が生産される農業地域は内陸部に位置しています。

 また、外観は広大な耕作地が広がっているように見えますが、個々の農家の小さな耕作地に分割されているのが実態です。収穫はそれぞれの農家が行うのが主体で、農家は収穫した種子を袋や俵に詰め、製油工場に販売するか、集荷業者に販売しています。

 アメリカやカナダで見られるサイロなど集荷装置や広範な集荷システムも整備されていません。このため、国内で生産される油糧種子は、生産地近くに立地する小規模の製油工場で処理されています。

 一方、大消費地である都市部は海岸部に位置し、この10年余りの間に内外の製油資本が相次いで大型の製油工場を建設し、輸入される大量の油糧種子(ほとんどが大豆)を処理する体制が構築されました。中国の植物油製造業は、大まかに言えば、国産原料を圧搾する内陸部と輸入原料を圧搾する海岸部との二重構造となっており、強い競争力を有する海岸部の製油工場で製造される植物油が内陸部へ流通し、内陸部の製油工場を圧迫する現象さえ見られます。

 したがって、中国は油糧種子の生産国であるものの、海岸部に限定すれば、原料を輸入に依存する他の東アジア諸国と共通する構造にあります。

 基礎的な構造が似通っていることから、産業が抱えている課題も似通ったものになります。このような視点から、中国植物油業者協会(CNVOA)、台湾区植物油精煉工業同業公會(TVOA)と日本植物油協会(JOPA)は、協力して東アジア植物油シンポジウムを開催し、意見交換を通じ相互の友好・協力関係を深めていくこととしています。

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