台湾の植物油業界は、「企業の生産部門統合」によって業界の構造改善を進め、国際競争力を強化する途を選択してきました。
かつて、台湾の植物油製造業は、多くの小規模企業が存在し、総需要量に比較して供給力が過剰な状況にありました。
1981年に大豆を搾油する企業数は15、大豆油生産量は17万2千トン、1企業当たり生産量1万1千トン余りで、台湾の製油企業が平均的には小規模なものであったことが明らかになります。このことは、市場の規模に対して企業数が多すぎるためにフル操業ができず、少量生産に甘んじなければならないことをも示しています。
規模が大きく、効率のよい植物油製造業への脱却は、大規模な生産部門の統合により実現されました。
1992年、4製油企業の共同出資による大統益股_有限公司(略称TTETユニオン)が設立され、台南市の内陸部に1日当たりの大豆処理能力が2,200トンという大型工場が建設されました。ちなみに、TTETとは、当時の出資4製油企業の頭文字を並べたものです。TTETは、その後新たな出資者の参加を得、更に1998年に、2,500トンの処理能力を有する第2工場を建設し、台湾最大の製油企業に成長しました。
TTETが第2工場を建設した1998年、もう一つの生産部門統合が行われました。TTETの場合と同様に、小規模な製油企業4社の生産部門を一つに統合した中聯油脂股_有限公司(セントラル・ユニオン油脂、CUOC)が発足しました。CUOCはTTETとは異なり、台中港に位置する台湾最初で現在唯一の“海工場”で、1日当たり2,500トン大豆処理能力を有しています。
これら2社の統合は、企業統合ではなく生産部門のみの統合であることを特徴としています。共同出資を行ったそれぞれの企業は、引き続き精製工程のみを有する製油企業として活動を続けています。株主でもある個々の企業は、TTET及びCUOCに大豆油の生産を委託し、販売はそれぞれのブランドで行います。また、大豆油以外の油とのブレンドによる独自の商品開発を行っています。ただ、CUOCがこのような出資企業による生産委託のみを行う会社であるのに対し、TTETは自らも販売する形態を有している点が異なっています。
2大製油企業の登場と競争により台湾で大豆油の圧搾を行う企業はわずか5社に減少し、製油産業の構造は大きく変化しました。2社を併せた市場占有率は85%とされており、これら2社が市場を牽引する構造が確立されました。
これまでのところ、原料(大豆)購入の合理化、製品の品質向上と安定、市場の透明性の向上、製造コストの削減、従業員福祉の向上などの効果が顕著に出てきているようです。
しかし、前途には口蹄疫とその後の畜産の低迷による大豆ミールの需要低下、今後の人口減少による市場規模の縮小懸念という厳しい現実が待ちかまえています。
製油企業の立地条件が日本と似通っているものの、台湾の植物油製造業は大豆油に依存し、生産部門統合という構造再編を志向し、結果として、港湾部と内陸部という全く異なった立地を選択した2大企業が牽引する業界に変貌しました。これからも、この2大企業が競争を展開しながら、業界を発展させていくことが期待されています。
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