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世界の植物油需給で注目されるのは、バイオジーゼル(植物油を原料とする燃料)生産の増加に伴う植物油需要の拡大で、特にEUの動向が注目されています。
EUは、2010年に700万トンのバイオジーゼル利用を目指して軽減税制などの優遇措置を講じています。バイオジーゼルは、既に数年前から生産が開始されていましたが、石油価格の高騰によって加速され、2005/06年には370万トンの植物油がこれに利用されると見込まれています。この趨勢は今後も続き、2006/07年には450万トン、2007/08年には540万トンに達すると予測されています。バイオジーゼルに利用される植物油の80%強が菜種油となっています。
EUは、菜種の主要生産地ですが、このような需要の増加をまかなう域内生産は不可能であるため、輸入によって充足することが必要となり、2005/06年には33万トンの菜種、25万トンの菜種油が輸入されると見込まれています。しかし、EUは、世界で流通している遺伝子組換菜種の一部が未認可の状態であるため、供給国の確保が大きな課題となっています。
このため、世界の主要供給国であるカナダの菜種油を受け入れるための条件整備を進めており、これが整えば菜種油の輸入需要が一気に拡大し、菜種及び菜種油の国際市場に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。
バイオジーゼルは、菜種油だけではなく相対的に低価格のパーム油を利用する試みが各国で展開されています。EUの菜種油のような状況には至っていませんが、マレーシア、インドネシアを中心に、パーム油を利用したバイオジーゼルの開発研究が進められています。
バイオジーゼルは、石油価格の動向や、優遇税制などの措置に影響されますが、再生産可能な資源であることから、バイオマス利用の一環として今後の植物油需給に大きい影響を及ぼす要素となりました。 |
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