●食糧の輸出国から輸入国へ
中国は穀物生産の国内自給を最大限確保する必要がありますが、そのパーセンテージに関する意識が変わってきています。現在の自給率は約100%ですが、今では「90%でもよし」とする意識が強まり、さらに食糧生産能力つまり耕地面積と水問題を解決し、品種改良などさまざまな科学技術を維持すれば、80%は維持できるのではないかという発想にまで転換されています。
また輸出国から輸入国への転換ということで言えば、94年に2000万トンの輸出国であったのが、2004年には約5000万トンの輸入国へ転換しました。その理由は幾つかあります。中部地域への農政の集中、沿海地域の経済開放に加えて、WTO加盟により市場を開放せざるを得なくなったことによる政策の調整などです。さらに食品産業の振興という産業構造の調整といった背景もあります。
●世界の食品加工基地へ
中国には、農産物市場の開放と食品産業の振興へ向けて、中国を世界の食品加工基地へと転換していこうという発想があります。可能かどうかは別として、すでに加工基地へ向かうための中央政府の方針が随所に現れています。
その方針の一つはさまざまな資本を導入して企業を育成することで、すでに海外、国内の規制緩和による外資系資本や企業の導入が始まっています。さらに「物はどこからでも来る」という意識があります。実際、原料は世界中から輸入されています。その典型が大豆です。近年は原料となる農産物を輸入して国内で加工し、海外へ輸出することも行われています。基本的に中国の輸出の内訳を見ると、貿易分類16の肉類・魚介類等調整品、20の野菜・果物等調整品の輸出の比率が高くなっています。つまり余剰労働力を労働集約的に使い、食品加工産業を発展させていくということです。今後、中国は国外や国内の生産物を用いて食品産業を育成し、世界へと輸出していくことになるでしょう。(「中国の農産物(食料品)輸出額」の表参照)
平成17年6月23日開催のJOPAセミナーで、農林中金総合研究所 阮 蔚 主任研究員に講演いただいた内容の要約です。
|