●農業生産基地、中部地域へ農業政策の傾斜
中国は農政の中心である穀物を守っていくため、昨年から農業政策の転換を図りました。その中で、中部地域を重視しているのが特徴の一つです。
これまで、中国の農政は全国に不公平のないように実施されてきましたが、昨年は中部地域だけに農政を集中する政策が取られたのです。中部地域というのは13の省と自治区からなり、中国耕地面積の約65%、食糧生産量の70%を占め、流通している食糧の80%を提供している地域です。(地図の緑部)つまり、この地域の農業生産が安定すれば、中国に流通している食糧の8割が確保でき、穀物を基本とする農政の目的が達成できることになります。
例えば、n-6, n-3系脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれ、一定量以下の摂取しか行われない場合には皮膚炎、子供の成長障害などが認められます[これら以外の飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、コレステロールは、肝臓で他の炭水化物から合成できるので、必須ではありません]。したがって、必須脂肪酸は摂取量の下限の設定(摂らなければならない量)が必要になりますが、タンパク質で用いられる出納実験ができないため、推定平均必要量や推奨量という指標を用いることができません。このため、摂取量の中央値で表される目安量が用いられています。すなわち、大部分の日本人では皮膚炎の発症が認められていないという事実を踏まえて、日本人の各年代別、男女別の必須脂肪酸摂取量の中央値が、日本人の大多数で欠乏症状を生じることのない十分な量と考え、目安量という指標で示されています。
●食糧生産能力の維持
農政転換の二つ目は、食糧生産能力の維持という方向へ転換したことです。中国ではこれまで食糧自給率にこだわっていましたが、昨年からは、自給率にこだわるのではなく、食糧生産能力を維持する方向へと転換しました。その一つは耕地を守ること、もう一つは水不足問題への対応です。中国では97~2003年の7年間に各種の開発区が急増したため、耕地面積が約666万ヘクタール減少しました。この耕地面積の急減に歯止めをかけるため、2004年から世界一厳しい耕地の保護制度を実施しています。
また水不足問題は21世紀の中国にとって、さまざまな産業を制限する最大のリスク要因の一つです。北京ではすでに水を他の省から買っている状態で、このままでは北京は遷都せざるを得ない状況に直面します。そこで南の揚子江から大運河を作る大プロジェクトを計画し、北京及び水不足に悩む中国最大の耕地エリア華北大平野を守ろうとしています。
●企業的農業経営の育成
農政の転換の三つ目は、企業的農業経営の育成です。中国の食糧を確保することは、農業の競争力を高めることにより達成されます。中国の食糧生産量は約5億トンで、これはほぼそのまま中国の需要量と考えていいでしょう。一方、世界の穀物輸出量は2億5千万トン程度ですから、仮にその全部を中国が輸入しても、需要量の約半分しか満たせない状況にあります。96年に中国は初めて食糧白書を出しましたが、同年、中国が穀物を大量に輸入したところ、世界の農産物の価格相場は約3割暴騰しました。そこで中国は食糧サミットで「95%の自給率を守っていく」と宣言し、他の途上国に迷惑をかけないことを約束したのです。
この原因の一つに、13億人という中国の人口の多さがありますが、これからも人口は増えていきます。しかも、必要な食糧を世界から調達するのが不可能となれば、最大限の国内自給が重要になります。これが、中国の農政が穀物に基本を置いている最大の理由なのです。中国の穀物生産を維持していくには、農業の競争力を維持していく必要があります。つまり穀物のみならず、農業全般で競争力を維持していくことです。そのための政策が企業的農業経営の育成になります。日本で言えば株式会社の農業エリアへの導入です。具体的には、農業の門戸を開放して資本を導入し、規制緩和でいろいろな資金を導入し、農業分野での企業経営を育成するということで、要するに企業の育成を通じた農業競争力の維持・向上という発想です。これが近年の大きな政策の転換です。(下記折れ線グラフ参照)
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