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世界No.1のひまわり油生
植物油産業はアルゼンチンの基幹産業であるばかりでなく、世界における植物油生産でも重要な位置を占めています。FAOのデータでは、2002年における世界のひまわり油の生産量は835万トン、そのうちアルゼンチンは148万トンで17.7%を占め、世界No.1の生産を誇っています。大豆油では、世界の14.6%を占め、米国、ブラジルに次ぐ第3位の生産国になっています。サフラワー油では、世界の5.2%で第5位、同じくとうもろこし油は1.6%で第11位、オリーブ油は0.2%で第15位の位置にあります。
アルゼンチンの植物油産業は、原料のすべてを自国で生産していることも大きな特徴でしょう。FAOのデータでは、2002年のひまわり種子生産量は384万3,579トンで世界生産の16.1%を占めて第1位、同じく大豆の生産量は3,000万トン、16.7%で、米国、ブラジルに次ぐ第3位、とうもろこしの生産量は1,471万352トン、2.4%で第6位、サフラワー種子は2万6,000トン、4.1%で第8位、オリーブは9万3,000トン、0.7%で第14位の位置を占めています。アルゼンチンは、紛れもなく世界有数の“油量種子と植物油生産大国”なのです。
植物油は重要な輸出産品
植物油の貿易では、アルゼンチンの位置付けはさらに高いものになります。FAOのデータでは、2001年にアルゼンチンから輸出された大豆油(原油及び精製油)は333万8,140トンで世界の輸出量の39.8%を占め、最大の輸出国となっています。ひまわり油も輸出量が98万8,950トンで32.7%を占め、大豆油とともに第1位でした。サフラワー油の輸出量は1万3,799トン、24.7%で米国に次ぐ第2の輸出国となっています。とうもろこし油とオリーブ油はそれぞれ世界輸出の1.3%、0.3%を占め、輸出国としての順位はそれぞれ13位、8位でした。
世界の植物油貿易における位置付けだけではなく、植物油はアルゼンチンの輸出産品として極めて大きなウェートを占めています。国家統計・センサス局によると、2002年の植物性油脂の輸出額は前年比27.5%増の20億8,670万ドルで、国の輸出総額の8.2%を占めました。油糧種子の輸出も多く、2002年の輸出額は12億8,240万ドルで輸出総額の5.1%を占めました。搾油過程で生じるミール(ペレット状のものを含む。)の輸出も大きいものとなっています。食品産業全体の副産物輸出額は2002年には27億9,120万ドルで輸出総額の11.0%を占めましたが、その多くが搾油ミールと見込まれます。したがって、アルゼンチンの輸出総額の2割近くが植物油産業によるものと推測されます。
遺伝子組換え品種の導入で伸びる大豆生産
大豆生産は過去30年間にわたり成長を続けてきましたが、1996年に遺伝子組換え品種(GMO)が導入されたことによって、その勢いが増しました。現在、GMO大豆の作付面積は、全体のおおよそ90%に達していると推測されています。無論、導入されたGMO大豆は日本やEUで食品・飼料としての安全性が確認されたものです。
2001/2002農業年度(7月~6月)における大豆の作付面積は1,164万ヘクタール、収穫面積は1,141万ヘクタールでした。州別の作付面積では、コルドバ州が344万ヘクタールで最大、これに315万ヘクタールのサンタフェ州、215万ヘクタールのブエノスアイレス州が続いています。全国の作付面積は1996年以降、年平均約12%増の勢いで伸びています。再近年の伸び率は、2000/2001年度が前年比21.3%増、2001/2002年度が9.1%増でした。
単位面積当たりの収穫量も向上しています。1ヘクタール当たり収穫量は、1999/2000年度の2,339.4キログラムから2000/2001年度には2,584.7キログラムに増加し、2001/2002年度には2,630.4キログラムに達しました。このような単位面積当たりの収量が増加したのは、主にGMO大豆を導入によるものと考えられています。また、GMO大豆の導入は、サンティアゴ・デル・エステロ州、チャコ州、サルタ州などへの大豆生産の拡大をもたらしています。
大規模投資による生産性向上が進む大豆油生産
大豆油の生産は、過去30年間持続的に増加し、最近では国内植物油総生産量の約4割を占めるようになりました。
2001年の大豆の圧搾量は1,830万トン(前年比7%増)、製品の生産は大豆油が340万トン(同9%増)、ミールが1,440万トン(同7%増)でした。1997年まで200万トンを下回っていた大豆油の生産量は、1998年に250万トンを超え、1999年には300万トンを上回りました。これは、1995年の生産量の2倍を超えるもので、近年の成長ぶりをよく象徴しています。
国内搾油工場数は54、その処理能力は日量9万3,000トンとされています。これらの多くがサンタフェ州のパラナ川沿いのロサリオ近郊に集中しています。原料の搬入地域は、おおむね半径300キロメートル以内となっているため、輸送コストが低く抑えられる有利性があります。原料の80%以上をトラック輸送に頼り、鉄道輸送は限定的なものとなっていますが、1991~92年に鉄道事業がコンセッション方式で民営化されて以降徐々に増えてきています。鉄道輸送の増大は輸送コストを一層低下させることから、搾油工場から遠隔の地でも大豆の円滑な輸送が可能になります。
大豆油関連産業への投資もめざましいものがあります。1993年から1999年の期間に、大豆油関連で130億ドルの投資が実行され、搾油工場、港湾、リフト、倉庫などの建設、改修が行われました。これらの投資に伴う先端技術の採用により、アルゼンチンの大豆油産業は米国、ブラジルと並んで世界的にみても優れた競争力を備えたものとなりました。アルゼンチンの搾油産業は高度に機械化が進んだ装置型産業ですが、雇用にも大きな貢献をしています。搾油産業における雇用者数は直接雇用だけで5,000人に達し、間接雇用を加えるとその数はもっと大きくなっています。
ロサリオ近郊にある最先端技術を用いた12工場の処理能力は日量5万7,000トンに達しています。1工場当たりの平均処理能力4,750トンの工場が集積する地域は、世界でもここでしか見られない光景でしょう。搾油コストはトン当たり6~8ドルと価格競争力においても優れたものとなっています。
大豆油の国内消費は生産の6%程度
大豆油の大生産国という呼称が適切なアルゼンチンですが、意外にも国内の植物油消費における大豆油の比重は10%前後に過ぎません。国内需要が主としてひまわり油によって満たされているからです。1人1年当たりの大豆油消費量は、2001年には6.26キログラムで、生産量のわずか6.6%が国内消費に振り向けられています。大豆油は極端な輸出志向型産業として発展してきたことが分かります。
大豆油の国内消費は年によって大きい変動がありますが、徐々に増加する傾向にあります。
過去10年間の消費量をみると、1992年から1994年まで1人当たり2キログラム台で推移し、1995年から1997年にかけて1キログラム台に落ち込み、1998年に8.56キログラムへと急増した後、1999年は3.71キログラム、2000年は4.53キログラムとなりました。生産の増加に伴って、これからも国内消費が徐々に増えていくと予測されます。
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