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社団法人栄養改善普及会(近藤とし子会長)が実施されている「高校生による食生活改善研究活動、“I&You食生活”― 包丁の先から食文化をうみ育てよう ―」の研究成果発表会が、去る1月24日東京都品川区で開催されました。全国6高校が参加したこの研究活動で、「植物油」をテーマに活動に取り組んだ、広島県立大崎海星高等学校が高い評価を集め、全国家庭科教育協会会長賞を授与されました。
息の長い実践―高校生による食生活改善研究活動
舌を噛むような長いタイトルの活動ですが、高校生による食生活改善研究活動は、社団法人栄養改善普及会が推進されている活動の一つで、平成15年度で41回を数えた息の長い実践活動です。第1回目の参加者は、やがて還暦の年を迎えます。
戦後まもなく開始された同協会の栄養改善活動は、多くの消費者が分かりやすく実践できることに特徴があります。最も基本となっている活動は、“栄養三色運動”で、栄養素のバランスという理解しにくい概念を、具体的な食物を3色に分類し、それぞれをまんべんなく食べるという分かりやすい概念に置き換えられています。戦後の栄養改善に、この運動が大きい役割を果たしてきたことはよく知られています。時代の変遷と共に、この活動は栄養の改善から健康的な食生活の実践へと発展してきました。
この運動を、次代を担う高校生にも広げる目的を持って開始されたのが、高校生による食生活改善研究活動です。高校生に特定のテーマを与え、それぞれの研究を深める過程で、食生活と健康について考えさせようという理念に基づいています。日本植物油協会もこの趣旨に賛同し、高校生に植物油への理解を深めていただくため、財団法人日本油脂検査協会とともに、この活動にこころばかりの協賛をしています。
「植物油」を課題とする研究活動
この活動には、植物油だけではなく、米、小麦粉、牛乳、醤油、マーガリンの各業界も協賛されています。それぞれの分野で研究活動を実施した各高校の内容は優れたもので、審査員の皆様からも優劣付けがたいとの評がありました。
植物油をテーマに選んだ広島県立大崎海星高校は、瀬戸内海芸予諸島に属する大崎上島に位置する学校です。研究に取り組んだのは、この春卒業を迎える4人の女生徒で、お二人の先生が指導に当たられました。41年間の積み重ねの中で、研究活動の進め方には一定のパターンができていますが、彼女たちは、その中に独自性を織り込んだ活動を進めようと努力しました。瀬戸内海の諸島でも珍しくなった橋のない島という特徴を生かして、他の高校では見られない成果がありました。
一つは、小さな町であるため、すべての年齢階層の人々について食生活の点検ができたことです。その結果、先ず、自分達が属する高校生の食生活が栄養学的に問題のあるものとなっていることを発見し、文化祭などの校内活動においてそれを発信します。次に、高齢者の食生活を調べるなかで、脂質の摂取が好ましいレベルを下回っていることを発見します。油っこいものが食べにくくなった高齢者のために、植物油を上手に利用した高齢者向けメニューを考案し、高齢者の集会に出かけてそれらを紹介しました。専門家ではない彼女たちの調査手法は稚拙ではありますが、地域に住む人達の全年齢階層の食生活を明らかにするという試みは、優れた視点に立っています。
二つ目は、地域の特産物が、植物油という調理素材を活用することによって生かされるということの発見です。地産地消という言葉が、植物油というグローバルな調理素材によって現実のものになるという視点も優れたものでありました。この視点は、食事の主役にはなりがたい植物油の特徴を的確に理解したものであると評価されるものです。植物油は料理の主素材ではないため、テーマに取り上げてもアピールすることが非常に難しいという欠陥がありますが、その欠陥を補う視点に脱帽します。
地域で生きることの大切さを知ること
彼女たちは、植物油という素材を通じて、植物油の枠を超える発見をしました。栄養改善普及会がこの活動を推進されている究極の目的は、与えられた素材について知識を深めることよりも、素材を通じて自分と身の回りにある食生活の実態に目を向けさせ、改善を実践していくきっかけをつくることと理解しています。この目的からすれば、大崎海星高校の研究活動は、期待通りの成果を上げたものと考えます。
しかし、彼女たちは、この活動を通じて更に大きなものを得ました。彼女たちは、成果発表を次の言葉で締めくくりました。
「私たちはこの研究活動を通じて、自分達が素晴らしい地域に生まれ、素晴らしい人々に囲まれて生活していることを知りました。私たちは、これからもこの町で地域の人達と共に生活していくことを誇りとしています」。
彼女たちの活動につきましては、日本植物油協会ホームページで紹介していますので、是非ご覧いただきますようお願いいたします。
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