トレンディーな食生活と油脂の消費
(多様化が進む食生活)
オーストラリアの伝統的な食生活は、宗主国イギリスの食文化がベースにあり、パン、ジャガイモ、肉食を中心としたものでした。このようなイギリス風のシンプルな食生活は、文化的に多様なバックグラウンドを持つ移民が増加したこと、オーストラリア社会に多文化主義が徐々に浸透してきたこと、オーストラリア人の海外旅行が増加したことなどにより大きく多様化しています。
第2次世界大戦後の1947年から1971年の間にイタリアとギリシャを出生地とする人口が増加し、彼らによってイタリア料理やギリシャ料理がもたらされました。特に、パスタやピザ等のイタリア料理は、オーストラリアで最も人気のある料理の一つで、シドニーのイタリア人街のライカートには、有名なイタリアンレストランが軒を並べ週末は大変な賑わいを見せています。
1972年のホイットラム労働党政権時に多文化主義(マルチカルチュラリズム)が導入されてから、アジア系移民が急増しました。これにより、中華だけでなく、タイやベトナム、韓国等のアジア料理が急速にオーストラリアに普及し始めました。
現在でも、オーストラリアの食生活は、パン、ジャガイモ、肉食を中心にしたものですが、エスニック系レストランでの外食やテイクアウェイの組み合わせ、また、自分自身でエスニック料理を作るなど、バラエティー豊かな食生活を楽しむ人が確実に増えています。
(トレンディーな消費者はオリーブ油を好む)
健康志向の高まりを背景に「ヘルシー食品」が人気を博し、お菓子や乳製品、ドレッシングの多くに”Fat Free”, “Low Fat”, “○○%Less Fat”等の低脂肪を示す表示が多く見られます。また、日本食も、栄養バランスがよく、調理に油をあまり使用しないとの理由で、大きなブームを呼んでいます。一般の大手スーパーでも豆腐やのりなどの日本食コーナーが設置され、シドニーなどの大都市では回転寿司や日本食を取り扱うレストランも増加しています。
このように、消費者は油脂の消費量を避ける傾向にありますが、家庭ではオリーブ油の消費がトレンディーで、その消費は着実に拡大しています。大手スーパーのウールワースにある食用油の棚の約5割はオリーブ油で占められ、残りカノーラ油、ひまわり油などが並べられています。カノーラ油やベジタブル油が750ml当たり約2~3豪ドル(1豪ドル=約75円)、ピーナッツ油やサンフラワー油が同じく約4豪ドルと日本よりやや高い価格になっていますが、オリーブ油は、普通タイプが500ml当たり4~5豪ドル、エキストラバージンが5~7豪ドルとかなり高いものとなっています。
オリーブ油はイタリア・ギリシャ系移民家庭での消費がもともと多かったと考えられますが、国際オリーブ油協会(International Olive Oil Council)などの団体が料理人や雑誌の記者等にはたらきかけて、オリーブ油は老化や心臓病などを防ぎ、健康によいという宣伝活動を積極的に実施したことが、今日のような人気となった大きい理由と考えられます。テレビの料理番組や雑誌などでオリーブ油のヘルシーさや、それを使用した料理が頻繁に紹介されることも理由のひとつとなっています。オーストラリアではテレビの料理番組が盛んで、夜の6時半ころから8時半くらいのいわゆるゴールデン・タイムに集中し、番組では新しいタイプの料理のレシピや異国の食材が紹介されます。また、ニューサウスウェールズ州で最大読者数を持つシドニー・モーニングヘラルド紙には、毎週火曜日の紙面にレシピ等が掲載されています。
2003年5月27日のシドニー・モーニングヘラルド紙には、“アンチョビとニンニクのディップ、鳥レバーのディップ、ピーナッツとなすのディップ、カニの野菜スープ、ラムステーキ、ヒラマサのオーブン焼き”などのレシピが紹介されていましたが、オリーブ油がふんだんに使用されていました。一般の消費者へのアンケートでは、オリーブ油は地中海式料理だけでなく、一部の日本料理や中華料理などの様々な幅広い料理にも利用していると回答する人が多くなっています。
オリーブ油のほとんどはイタリア、スペインなどから輸入されていますが、最近では、需要が増えているなかで、気候がオリーブ生産に適していることから、国内の生産が拡大する機運にあります。
国内産オリーブ油の生産量は1,500トンと全消費量に占める割合は5%程度にすぎませんが、シドニー市内の高級デパートとして有名なデイビッドジョーンズの地下食品売り場では、イタリアなど海外品よりも国内産のエキストラ・バージンオリーブ油が多く陳列されるようになりました。価格は375ミリリットルで15豪ドル~30豪ドルと通常のスーパーの約2~3倍になっています。
生産者団体であるオーストラリア・オリーブ協会(AOA)は、連邦政府の研究機関である農業生産研究開発公社(RIRDC)の支援を受けて、第2次5ヵ年産業開発計画(第1期98-02年、第2期03-08年)を遂行中で、06年までには現在の輸入量(約3万トン)に迫る2.8万トンまで生産を拡大させたいと意欲を示しています。 |
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