part2 “うつくしい元気”のための植物油のとり方
『3・2・1のルール』がその決め手
組み合わせの発想
 若い女性にぜひとってもらいたい植物油。でも、そのとり方にはやはりルールがあります。私の考えた『3・2・1のルール』は、簡単で、我慢いらず。誰でもできて、一生続けられる方法です。その考えの根本にあるのが、“組み合わせの発想”なのです。
 ところで、みなさんは植物油のカロリーを知っていますか?
 植物油は、大さじ1杯で約120kcal。コンビニエンスストアのたらこのおにぎりが約180kcal程度なので、大さじ1杯半でおにぎり1個と同じくらい。「ではなぜ太らないの」と不思議でしょうが、答えは簡単。食事のときに植物油だけ飲むことはあり得ず、必ず何かと一緒に組み合わせて食べますよね。ですから、その組み合わせの相手を考えればいいのです。カロリーが高いなら、低いものと組み合わせて食べる。そうして食事全体のカロリーを下げればいい。日本人は何かというと、あれは悪い、これはいいと一言で語ろうとし、肉や脂肪はカロリーが高いからさけろ、といいます。しかし『3・2・1のルール』を守れば、ヒレカツなどのとてもおいしい、けれどカロリーが高いものを食べてもいいのです。

トンカツダイエット  ~総カロリーを減らす食べ方~
 私の行きつけのトンカツ店で調べてみました。ここのヒレカツ定食は肉が実に大きいのですが、持って帰って計ってみると150gありました。これに小麦粉、卵、パン粉をつけてからりと揚げるとそのカロリーは約400kcal。付け合わせのせん切りキャベツは80g。そしてごはんはどんぶり1杯270gくらいで、そのカロリーは約400kcal。これにおいしい漬け物少々と、しじみの味噌汁がついています。全部食べると約800kcal。軽労働の男性の一食のエネルギー所要量 は、700kcal前後。女性の場合は600kcal前後ですから、ヒレカツ定食を残さず食べてしまえば、これはカロリーオーバーとなり、太ってしまいます。それでヒレカツ定食は太る食事の代表とされているのです。
 「だったら、やはり全体のカロリーを考えて、ヒレカツ一切れで我慢しろってことですね」という声が聞こえてきそうですが、そうではありません。ヒレカツは全て食べていいのです。そのやり方はこうです。
 まずせん切りキャベツをもりもりと食べ、ヒレカツをひとくち食べる。またせん切りのキャベツを食べ、ヒレカツをひとくち。これを繰り返し、キャベツがなくなったらおかわりをして、その間にごはんをひとくち食べる。これを繰り返していくと、おなかが一杯になって、ごはんは全部食べきれません。半分残したとすると、ごはんのカロリーは200kcal。ヒレカツと合わせても600kcalくらいですから、総カロリーを減らすことができ、太りません。もっとごはんを減らせば減量も可能です。
 ところで、セットされている漬物と味噌汁が問題。せっかくごはんを残しても、これらがあると食欲が増進して、また食べたくなります。そこでヒレカツ定食をとる時にはまずおかずを食べ、次にごはん、漬物と味噌汁は口直しとして最後に食べることにします。
 だいたい肥満は、脂肪とたくさんの糖質を一緒にとると起こしやすいので、あぶら物をとる時にはごはんの量を減らし、そのかわりに野菜をとればいいのです。キャベツでいうと、1kg(小1個くらい)といってもごはん茶碗1杯と同カロリーの約240kcalですが、一度にこんなにたくさんとれません。300gとったとしたら70kcalくらい。こんなに低カロリーならカロリー計算に入れる必要はないでしょう。

アメリカ食が太る理由 ~糖質と脂肪を一緒にとると…~
 組み合わせを考える時に重要なのが、糖質を意識することです。
 アメリカ人に肥満者が大変多いのは、肉や脂肪をたくさんとるからだ、だからこれらを控えればよい、というのは今までの常識。ところがこれに一つ抜けているものがあります。それは糖質食品を一緒にたくさんとっているということ。アメリカ人は、ハンバーガーやフライドチキン、それも日本よりも大きなサイズのものをよく食べます。しかも一緒にとるのは、フライドポテトやアイスクリーム。これも日本の3倍くらいある。そしてコーラやジュースを水がわりにガブガブ飲んでいます。
 太る最大の原因は、脂肪と一緒に糖質食品、たとえばごはん、パン、めん類、菓子類、甘い果 物、甘い清涼飲料などをたくさんとることです。糖質をとると、インスリンというホルモンの分泌を促し、適量ならエネルギー源として使い切ってくれるのですが、とり過ぎると余った分は体脂肪に変わってしまいます。この際、脂肪を一緒にとると糖質ばかりでなく、脂肪分までどんどん体脂肪になってしまうのです。
 果物は身体によいとよくいわれますが、甘いのは糖質、つまりショ糖、ブドウ糖、果糖といったもので、どれも体脂肪になりやすいものです。最近の果物は品種改良されて、昔のものにくらべて大きさも、糖度も1.5~2倍も多いものがあるのです。当然カロリーも高くなりますから、たくさん食べると太ります。果 物ジュースとなると、グラス1杯にオレンジなら3個分も入っており、とりやすいのでつい飲み過ぎてしまいます。
 先のアメリカ人の食事の例だと、まさに脂肪と糖質を一緒に組み合わせて、しかもたくさんとっているので、その結果 太ってしまうのは明らかだと言えるでしょう。

3・2・1のルール
 トンカツダイエット、アメリカ食の例から、食品の組み合わせの大切さが分かっていただけたかと思います。これを全ての食事に当てはめるルールとしたものが、私の提唱する『3・2・1のルール』です。健康的に植物油をとるための考え方の基本は、1「植物油をとるときにはたっぷりの野菜と一緒にとる」、2「植物油をとるときは糖質(ごはん、パン、めん類、甘いもの)を控える」、3「食事は野菜のようなカロリーの低いものから食べる」ということです。そして、これを実践しやすいような目安で表現すると「十分な植物油をとるときには、見た目で〈野菜3、肉・魚2、ごはん・パン・めん類1〉の割合で、その順番でとる」となります。これが私のおすすめする『3・2・1のルール』です。しかも、この『3・2・1のルール』を守れば、食事の栄養のバランスも整えられるのです。

ルールのポイント1 *はじめに「野菜」、一番たくさん食べましょう
 先ほど、香港女性がスリムだという話をしましたね。その秘密はといえば、あぶらと一緒に大量の野菜を食べているからなのです。野菜はいうまでもなくカロリーの低い食品。そればかりでなく、若い女性の肌のうつくしさに欠かせないビタミンCや最近注目のカロチン(体内で一部がビタミンAに変わる)などのビタミン類を多く含み、さらにおなかの調子を整える食物繊維も豊富で、若い女性には本当にうれしい食品ですから、たくさんとらない手はありません。とりわけ、カロチンやビタミンEを多く含む緑黄色野菜をたくさんとるようにこころがければ言うことなしです。
 しかも、野菜は植物油ととても相性がいいのです。カロチンやビタミンEなどは油と一緒にとった方が効率よく吸収されることがわかっています。何より、野菜の淡白な味は、植物油によってコクや旨みがつけくわえられることで、ぐっとおいしくなりますよね。
 そこで、献立を考えるときは、植物油を使ったおいしい野菜のメニューのウエイトを多くし、食事の最初にそれをたっぷりいただきます。
 また、ここでいう「野菜」には、海藻やきのこ類も含まれます。

ルールのポイント2 *次に「肉・魚」を十分に食べましょう
 植物油を使った野菜メニューである程度おなかが満たされたところで、肉や魚、大豆などのたんぱく質食品を食べます。肉や魚に含まれるたんぱく質は、身体を構成するのに重要な栄養素であり、きれいな肌をつくるのにも絶対欠かせません。そのうえ、体内の脂肪を燃焼させるはたらきもあるので、うつくしくスリムなボディを維持するにはたんぱく質を十分にとる必要があります。ただし、肉類を多くとりすぎると動物性脂肪を多くとりすぎることにつながり、また食事全体のカロリーも高くなりすぎてしまいます。そこで、野菜をたくさん食べたあとで食べるようにするのです。そうすれば、空腹のときにいきなり肉を食べるときよりは少ない量で満足感を得られるわけです。
 肉、魚のほかに卵、乳製品、大豆(及びその加工品)もたんぱく質としてこの分類に入れます。

ルールのポイント3
*「ごはん・パン・めん類・甘いもの」は最後にちょっと食べましょう

 日本人は米を主食とした献立を長く続けてきているので、ごはんやパン、めん類などのでんぷん(糖質)系の食品を食べないと食事をした気にならないという人も多いですね。もちろん、でんぷんなどの糖質もカロリー源として重要で、まったくとらなくていいわけではありません。しかし、先に述べたように、脂肪と一緒にたくさんの糖質をとるというのが、もっとも身体を太らせる組み合わせだということが、さまざまな研究でわかってきました。
 また、食後のデザートとして食べる果物や、のどの乾きを潤す清涼飲料水なども、大きな糖質供給源。脂肪と一緒にたくさんとると、やはり太ってしまいます。
 そこで、私の『3・2・1のルール』では、糖質食品であるごはんやパン、めん類を少しだけ、食事の最後に食べるようにします。おいしい野菜料理、大好きな肉や魚の料理を十分食べた後なら、いつもはたくさん食べる糖質食品も少しの量 で十分満足。気持ちもおなかも、十分に満たされる食事となるわけです。

種類豊富な植物油の使い分けで、『3・2・1のルール』のパワーも倍増
 『3・2・1のルール』を守るなら、あぶら料理も食べられるし、空腹につらい思いをすることもなく、健康的な食事をすることができます。ただし、1食あたりの必要カロリーを超えてしまっては意味がありませんから、総カロリーを頭に入れながら献立を組み立てましょう。最初の野菜料理をあぶら炒めにしたら肉・魚料理は焼き魚や煮魚にするとか、肉・魚料理に揚げ物を選ぶなら野菜は煮野菜にするとか、3つのジャンルであぶら料理が重ならないように気をつけるといいのではないでしょうか。
 どうでしょう、おわかりいただけたでしょうか。食べたいものをやみくもに食べるのではなく、全体のバランスと順番にちょっと頭を働かせるだけで、若い女性のうつくしさに欠かせない植物油を十分とりつつ、太る心配がなく、我慢もいらない食べ方となるのです。もちろん、食事を豊かに楽しむ気持ちを損ねることもありません。
 豊かさといえば、同じ植物油のなかにも、最近はさまざまな原料のものが出ています。『3・2・1のルール』をより楽しく、より身体によいものとして続けていくためにも、植物油はぜひいろいろな種類のものを取り揃えて使ってみてください。原料が変われば、風味や味わいはもちろん、身体へのよい働きも少しずつ違います。毎日のメニューに幅が広がって、楽しさと“うつくしい元気”度が増していくことうけあいです。
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