科学的検証手法に代替する方法として、トレーサビリティ制度が推奨されることがあります。トレーサビリティ制度とは当該商品の履歴を明らかにするシステムですが、精製された植物油は、前述したとおり、原料となる作物が非遺伝子組換えであろうと、遺伝子組換えであろうと、それらに含まれたDNAやタンパク質は製油処理過程で完全に除去されたピュアな化学成分です。このため、当該商品の原料にあえて遡ってまで遺伝子組換え表示をすることの有意性はなく、逆に消費者をミスリードすることになりかねません。
また、トレーサビリティ制度は、その実行確保にあたっては、立ち入り検査等が不可避であり、社会的コストアップにつながりかねないという、問題点があります。現在、信頼できる国際的トレーサビリティ制度が未構築の状況下において、輸入依存率の高い原料について検証をすることは現状困難であり、表示制度のみ先行することはいたずらに、国内企業のみ負荷をかけるばかりか、国内市場流通製品の信頼低下・混乱を招きかねないことが危惧されます。
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