このような野心的な目標は、今後の日加菜種貿易関係にも何らかの影響を及ぼすと考えられますが、カナダも私達も、消費者や顧客の皆様に菜種と菜種油を安定して供給するという究極の目標に変わりがあるわけではありません。
日本にとって、菜種油は最も多く消費される重要な植物油です。最も重要で信頼できる菜種供給国であるカナダが、野心的な計画を策定し、目標達成に向かって努力することは、菜種の安定供給にとって大切なことであると考えています。そして、世界の油糧種子供給の安定に寄与することを願っています。
しかし、この計画にあえて懸念するべき事項を挙げれば、それはカナダ国内の輸送問題です。これまで述べた高い生産目標は、カナダの関係者が結束して努力を傾注していけば、困難を伴うとしても達成が可能かもしれません。しかし、大量の菜種を需要者へ分配するためのカナダ国内の菜種輸送能力に不安があることは否めないでしょう。
カナダの菜種は、日本などアジア向けには主に西海岸のバンクーバー港から、ヨーロッパ向けには主にハドソン湾のチャーチル港から、それぞれ輸出されます。輸出港のサイロなどの出荷施設の能力の増強は比較的容易であり、これまでも輸出業界による投資が行われてきましたが、それぞれの港湾への輸送は、カナダを東西に横断する1本の鉄道に依存しています。過去にも、鉄道輸送に支障が生じ、日本向け輸出が遅延することがしばしば発生しました。現在の西海岸向け貨物の輸送は、既に限界近くに達しているとも言われています。カナダの菜種輸出業界もこのことには強い懸念を示し、これまでにも鉄道会社や政府に輸送能力の向上を求めてきました。私達も、日加菜種協議の場などで、カナダ国内の輸送能力に不安があり、その改善を強く求めてきましたが、鉄道の増設は巨額の投資を要するものであり、実施困難なことでした。
新計画では、菜種種子の輸出について現行の2倍に達する目標が設定され、カナダ国内で製造された菜種油の輸出も増えることが予想されます。そして、将来、中国がカナダからの小麦の輸入を求めるようになれば、西海岸向け輸送能力の大幅な増強が必要となりますが、このことについては、カナダ菜種協会の能力と権限を越えるものです。国家としてのカナダが、この野心的な計画を受け、国内輸送問題などにどのように取り組まれるのかを注目しています。
|