時間栄養学とは

2.大豆生産地を直撃した大干ばつ

 先に述べた明け方の喘息発作を抑さえるために、ちょうど発症しそうな時刻に血中濃度が高まる工夫をした薬があります。つまり、薬を朝・昼・夜と均等に飲むのではなく、時間を考慮した飲み方が重要であるという考え方に基づくものです。このような薬物の投与法を研究する学問を「時間薬理学」といいます。

 一方、睡眠覚醒リズムの異常や時差ぼけ軽減のために、メラトニンのような体内時計に作用する薬物を見出す研究が行われています。このように、薬物が体内時計にどのように効くかを調べる学問を便宜上「体内時計作用薬理学」と呼ぶこととしましょう。 これと同じような視点で食・栄養を考えると、「時間栄養学」としての側面と「体内時計作用栄養学」としての二つの側面が考えられます(図1A参照)。


【 図1 体内時計と栄養学の関係(A)、体内時計と薬理学の関係(B) 】

図1 シカゴ市場における大豆先物価格の推移
体内時計を中心として、栄養が入力・出力ともに関与し、薬物も入力・出力ともに関与。

 夜食は太る、あるいは朝食を欠食すると太るといった現象は、食事のタイミングが肥満に関係することを意味するので、「時間栄養学」に該当することとなります。またエネルギー代謝や栄養トランスポーターに関わる多くの遺伝子発現がリズム変動していることを考えると、食事は栄養素等の構成や量といった情報だけではなく、何時摂取するかという時刻の情報で栄養素の働きが変化します。

 一方、栄養素を含む食物が体内時計に働きかけることで体内時計をリセットして、生活リズムの基本形成に影響することがあります。これが「体内時計作用栄養学」に当たります。

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