大豆価格の高騰は、その生産物である大豆油と大豆ミールの価格を押し上げますが、ここでも2008年と2012年では動きに相違があります。
2008年は投機資金の商品市場への流入が石油で始まり、これと関連性を有する大豆油の価格が先行して高騰し、大豆価格がこれを追いかけ、大豆ミールの価格はそれほど上昇しませんでした。これに対し今年は大豆の需給逼迫が主要因となったことから、大豆の価格が先ず高騰し、大豆ミールが並行して急上昇し、大豆油はこれから相場をうかがうという動きを示しています。しかし大豆油価格もじりじりと上昇しており、やがて高い水準に達すると見込まれます。この状況は南米の大豆播種意向が明らかになるまで続き、南米の大豆生産が不調の場合にはさらに高い水準に上昇することも想定されます。オイルワールド誌(週報)は、現時点で南米(ブラジル、アルゼンチン)において8月の十分な降雨によって適正な土壌水分が確保されており、現在の高い大豆価格に刺激されて大豆生産意欲が高いことを伝えています。この情報がシカゴ商品取引所において大豆先物価格の一層の上昇をある程度抑制するものとなっているようです。
シカゴ商品取引所で形成された価格は、世界の飼料や食用油とその加工品の価格を決定する要因となります。シカゴ商品取引所に連動した動きをすることが、食品産業の健全な継続と食料供給の安定にとって最も重要な要件となるからです。ただシカゴ商品取引所の価格は先物価格であることから、現実の影響を有するには1~2か月のタイムラグが生じることが普通です。したがって、6月以降の価格上昇の影響は8月ごろから世界の飼料価格や食用油の価格に現れ始めています。
この状況は日本においても同じです。国際市場に原料供給を依存する私どもの製油業界や飼料業界は、シカゴ商品取引所の価格と連動した商品価格の実現が、皆様への商品の安定供給のために重要な課題となります。このことは豆腐、納豆、醸造業など日本の伝統的食品についても同様です。
「必要な大豆が確保できるのか?」というご懸念もあると思いますが、私ども日本植物油協会の会員企業はアメリカの供給者との強い信頼関係を築いていますので、数量の確保については今のところ心配はなく、またここでご紹介しているように、輸入商社の皆様と協力してアメリカの大豆関係者と定期的な会合を持ち、相互の交流を通じて大豆の確保に努めています。ただ価格は国際市場で決定されるものであり、私どもがそれを覆すことはできません。日本植物油協会に集う会員企業では、今後の商品価格改定のお願いをしているところですが、その背景にはこのような国際市場の変化があることをご理解いただきたいと存じます。
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