2年前から南米に追い越されたとはいえ、アメリカは世界最大の大豆生産国・世界最大の輸出国である地位に変化はありません。しかし今年の不作を前提とすれば、例年のような輸出ができないものと見込まれています。表1は最近におけるアメリカ大豆の国内搾油量(製油用処理量)と輸出量を含む需給の推移を示しています(2012/13年度は予測値)。明らかなように、2012/13年度の輸出量が前年度より18%(約678万トン)も減少することが見込まれています。
【 表1 アメリカ産大豆の需給予測 】
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2010/11年度 |
2011/12年度 |
2012/13年度 |
期首在庫 |
151 |
215 |
145 |
生産量 |
3,329 |
3,056 |
2,692 |
輸入量 |
14 |
15 |
20 |
供給量合計 |
3,495 |
3,286 |
2,857 |
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国内搾油量 |
1,648 |
1,690 |
1,515 |
種子、飼料、欠減 |
130 |
101 |
117 |
輸出量 |
1,501 |
1,350 |
1,101 |
需要量合計 |
3,280 |
3,141 |
2,741 |
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期末在庫量 |
215 |
145 |
115 |
期末在庫率(%) |
6.55 |
4.62 |
4.20 |
資料:アメリカ農務省「Oil Crops Outlook」(2012.8.13) 注:期末在庫率は、需要量に対する在庫量の比率 |
国際市場への大豆の供給は1980年代まではほぼアメリカ一国が担ってきましたが、その後、収穫期が半年間異なる南米(ブラジル、アルゼンチン及びパラグァイ)の台頭により供給量の増加と端境期の解消が図られてきました。換言すれば1980年代まではアメリカの大豆が国際市場を規定する唯一の要因でしたが、1990年代以降は南米産大豆の供給が加わることによって供給の平準化が図られることとなりました。同時に国際市場における価格形成に二度の変動が生じることとなりました。とはいえ、ブラジルやアルゼンチンは大豆の輸出ではなく大豆油と大豆ミールの輸出を振興し、国内の付加価値発生を高めようとしているため、大豆の国際市場は依然としてアメリカの供給量が重要な決定要因となっていることには変わりがありません。
図4は、2011年(暦年)の世界の主要国別大豆輸出量を示しています。2011年は、アメリカの大豆生産量が約740万トンの減産となったことから、アメリカの輸出量が約820万トン減少しました。このため世界の輸出量が減少し、大豆の国際需給に逼迫感が生じましたが、2012年の南米の大豆生産量が大幅に増加する見通しの下で、大豆の国際価格が高騰することは回避されました。しかしその南米も生育末期に干ばつに襲われ、生産量が激減したため大豆の国際市場は逼迫感が支配するようになり、それに続く今年のアメリカの減産予想により、一挙に需給逼迫感が強まることとなりました。
【 図4 主要国別大豆の輸出量の推移 】
資料:ISTA Mielke社「Oil World」年報 |
無論、大豆の国際価格が上昇していることから輸入国の需要も低調になる傾向にあります。特に今年のように主要な飼料原料であるトウモロコシと大豆の価格がともに上昇し続けると、食肉などの消費の収縮が生じ、一方コスト上昇に耐えられなくなった畜産業が後退して畜産物の供給量が落ち込み、世界の食生活に大きい影響を及ぼすことが懸念されます。このため大豆の需要が落ち込み、価格の低下が生じることが想定されますが、世界最大の輸入国である中国の輸入需要はこれまでのところ衰えることなく、本年前半でも昨年をやや上回る輸入を行っています。大豆の供給量減少が確実となったいま、中国の動向が注目を集めています。
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