これまで述べましたように、フライ類が冷凍食品の需要拡大を牽引してきました。フライは油脂とは切っても切れない食品ですが、その他の調理冷凍食品でも油脂類が多く使われています。冷凍食品の製造工程で利用される油脂の主な用途は、フライ用、練込み用、炒め物用です。
<フライ用> フライオイルには、安定性が高く、色や匂いが良いこと、発煙が少なく熱安定性が良いこと、食感が良くカラッと揚がること、作業性に優れていることなどのほか、長期に保存されることが多い冷凍食品特有の問題として、冷凍保管中に油の染み出しがないことや油脂の劣化が少ないことなどが求められます。フライオイルとしては菜種、大豆などの植物性油脂を単一として利用されるケースがほとんどですが、植物性油脂は「あっさり感」、動物性油脂は「こく」があるので、製品の特性に応じて動物性油脂を混合することもあります。最近はレンジ加熱製品が増えているので、食感の維持が重要な要素になっています。
【 図6 冷凍食品工場でのフライ工程 】
-この後、冷凍工程に移ります-
<練込み用> 練込み用には、製品の特性に応じて各種の油脂が使用されますが、バッター液(小麦粉などを水などで溶いたもの。天ぷらの衣もバッターの一種です)を一例としてご紹介しましょう。
家庭でフライ類を作る場合とほぼ同様ですが、フライ類の中種(エビやイカなど)をバッター液に付けて、その後パン粉をまぶします(パン粉付けと言います)。このバッター液には、パン粉付け作業が簡単になること、フライ時の破裂(パンク)を防止すること、製品が色よく歯触り良く仕上がることなどが求められます。そのためバッター液に使用する油脂には、冷水中でも容易に分散すること、レンジ調理後の食感が維持できること、製品に余計な風味を与えないことが必要になることから、主にマーガリン、ショートニング類が使われています。
<炒め物用> フライ以外の調理冷凍食品の主力商品である米飯類や麺類などにも油脂は重要な役割を果たしています。チャーハン類では、釜離れ性(鍋釜にくっつきにくい性質)やほぐれ性の良さ、つや出しなどのほか、油っぽくない風味が求められます(油っぽくない油脂というのは難しいのですが)。麺類では麺同士が付着せず風味の良さが必要です。また春巻、ギョ-ザなど中華点心類には、例えば皮の食感維持のためにそれに適した油脂類が利用されています。
冷凍食品と油脂のかかわりをほんの少しご紹介しました。冷凍食品の製造工程で油脂は直接、間接にさまざまな目的で利用され、冷凍食品に欠かせない材料であることがお分かりいただけたでしょうか。冷凍食品の新製品開発に当たって、これからも油脂には大きな役割が期待されます。特に植物油は種類も多く、様々な食の場で求められる冷凍食品にとって大切なパートナーとして今後も活躍する素材であることを期待しています。
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