遠慮がちな優れもの、植物蛋白食品
1.植物蛋白は日本の伝統食品

 日本人が古くから親しんできた植物蛋白食品の代表格は“麩(ふ)”。焼き麩、揚げ麩、車麩など料理に利用するものから、京や加賀では色とりどりの飾り麩が生まれ、生麩に餡をくるんだ麩まんじゅうや砂糖をまぶした麩菓子など、人々の生活に結びついた多様な“麩”に私たちは親しんできました。
 麩は小麦粉に含まれる蛋白質を利用した食品です。日本では各地でその地に適した小麦が栽培され、めん類だけではなく地域の多様な食品原料として広く用いられてきました。

 それでは“畑の肉”と称され、植物性蛋白質の代表とも言える大豆はどうだったでしょうか?
 大豆は、豆腐、味噌、醤油、納豆などの加工食品に広く利用されてきました。このなかで豆腐は大豆の蛋白質を凝固させた食品ですが、蛋白質だけを取りだすという概念には適合しないのではないでしょうか。したがって、日本には大豆の蛋白質だけを食用に利用するという歴史はなかったといってよいでしょう。

 大豆に豊富に含まれる蛋白質を利用する食品の開発は、大豆の大生産地であるアメリカで開花しました。大豆は世界で最も多く生産される油糧種子ですが、油の含有率は20%足らずに過ぎず、むしろ油分を抽出することによって蛋白質含有量を高めた粕(ミール)を得ることが主たる目的であるとさえされています。そしてその蛋白質を分離し、食品として利用しようという考え方が生まれてくるのは当然のことでした。ただアメリカが大豆の大生産国となったのは1930年代のこと。そして大豆蛋白食品の開発は1940年代のことで、まだまだ発展途上の食品と言えるでしょう。

 代表的な植物蛋白食品といっても、大豆と小麦の間には歴史にはこんな大きい差がありました。

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