― 割れても末に会わんとぞ想う ―
“割れても末に会わんとぞ想う”は、百人一首にも歌われた崇徳院の“瀬を速み”の下の句です。落語でもおなじみになったこの歌は、速い滝川の流れが岩に二つに分けられても、やがてまた一つの流れになることにたとえて、何時かは添い遂げようとする人の強い恋心を詠んでいます。
ところで、このような熱き恋心を語るせんべい(煎餅)があることをご存じでしょうか。
せんべいは、言うまでもなくお米の粉で作られます。収穫されたお米は固い殻に包まれた籾(もみ)の状態から、籾をはがして玄米となり、これを精米してお米(白米)となります。この精米の過程で、それまでお米としっかり結びついていた米ぬかは無惨にも引きはがされます。
精米されたお米は、せんべい工場に運ばれ、粉になり、せんべいになります。
一方、引きはがされた米ぬかはこめ油の工場に運ばれ、良質の“こめ油”(植物油INFORMATION第62号をご覧ください。)が作られます。このこめ油がせんべい工場へ運ばれ、恋い焦がれていたお米と再会します。
長い別離の旅を経て、せんべいとこめ油へと美しく成長した2人が劇的な再会を果たし、香り高い揚げせんべいを生み出します。まさに、“割れても末に会わんとぞ想う”が実現されたことになります。
熱い恋物語だけではありません。お米が、その分身である油で自らを揚げるわけですから、こめ油で揚げたせんべいは、植物油と調和するECOなお菓子ということもできるのではないでしょうか。
何気なく食べる揚げせんべいも、このように考えるとなんだかものすごく奥深いお菓子のように感じますね。
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