パーム油の主要生産国はインドネシア、マレーシアの2カ国で、世界生産量の86%をこの2カ国で生産しています(2007/08年度)。その他の生産国も、熱帯に属しているアフリカ、東南アジア、南米諸国ですが、生産量はトップ2に比べるべくもありません。ただ、原産地域であるアフリカ諸国の一部では、パーム油生産を産業振興の起爆剤にしようという動きも広がっているようです。
ところで、インドネシア、マレーシアともに決して国土面積の大きい国ではありません。しかし、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンなど広大な面積を有する国の大豆油を凌駕する生産量を挙げています。このことは、パーム油の生産性が極めて高いことを示しています。オイルワールド誌の統計によれば、パーム油は収穫面積1haあたり3.8トンの生産量があります。しかし、大豆の収穫量は1haあたり2.85トン、それから採取される大豆油は550kg程度に過ぎません(アメリカの平均値)。油分の高い菜種でも1haあたり1,200kg弱の菜種油が採れるに過ぎません(生産性の高いEUの事例)。このずば抜けた高い生産性が大豆油を超える生産を実現しています。また、大豆や菜種は1年1作の単年性作物であるため、天候による年ごとの生産の変動が大きいという特徴があります。これに対しパーム油は永年性の樹木であるため20年以上も収穫が可能で、天候による変動はあるものの1年間を通じて収穫ができるという供給の安定性に特徴があります。
このような高い生産性によってパーム油の生産コストは低く抑えられ、したがって、他の植物油に比較して価格が安いものとなっています。法則があるわけではありませんが、これまで、パーム油の国際価格は大豆油の概ね60~70%の水準で推移することが多く見られました。また、工業用にも用途が広いパーム油の特徴から、石油の価格とも連動して動くという現象も見られます。これらが、植物油の国際市場でパーム油が優位を保つ裏付けとなっています。
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