唯一の国産原料、お米の有効利用、優れた風味と高い健康増進機能などこめ油の特徴を述べてきましたが、そんなこめ油にも大きな悩みがあります。
(原料が足りない!)
米糠の数量は、お米の生産量によって決まります。お米自身の消費の減退や転作の奨励によりお米の生産量は減少する傾向にあります。農林水産省の統計によれば、平成20年のお米の生産量(玄米、食糧用)は約866万トンでした。お米(玄米)の8~10%が米糠ですから、約85万トンぐらいの米糠が発生することとなります。このうち、売買用に出回る米糠の数量は60万トン程度と推計されます。この米糠を、こめ油を含む様々な用途に分け合うことになり、こめ油の生産に利用できる数量は約30万トンに過ぎません。もっと、こめ油を皆様にお届けしたいと考えても、数量に限界があるのです。このため、タイなどこめ油を生産している国から一部を輸入しています。平成19年では、国内で生産したこめ油が68千トン、輸入したこめ油が23千トンでした。
政府は、お米の消費拡大を重要な政策課題とされていますが、いまのままでは、着実な需要があるのに国産のこめ油が供給できないという悩みを抱えています。もっとお米を食べていただければ、こめ油の供給も増え、皆様のお求めにお応えすることができるのです。
(原料の劣化が早い!)
米糠は、お米にくっついている間は安定した物質ですが、精米され米糠になると油分の分解が始まり、時間が経てばこめ油の生産に適さなくなるという問題を抱えています。一般に、米糠の発生後24時間以内に搾油することが望ましいとされています。このため、こめ油の製造工場は、精米所で米糠が発生すればすぐに集荷できるような体制を整えなければなりません。特に、お米の流通制度が変わり、美味しいお米を食べたいという要望に応えて消費地に近いところに小規模の精米所が増えることとなりましたが、こめ油の製造業の立場からは、少量の米糠をこまめに集めるという作業が増えたことになります。空気のように軽い米糠をこまめに集めることは、運搬費の増加をもたらしています。
(工場規模の拡大が難しい!)
製油業は、食品産業の中では典型的な装置産業です。このため、大豆や菜種の場合は港湾に工場を設置し、大量の原料を処理することで生産性が高くなるという特徴を有しています。しかし、こめ油の場合には、新鮮な米糠の集荷のため地域が限定され、工場の規模も大きくできず、生産性の向上に限界があることになります。反面、地域の皆様によく知られるという長所もあります。
(認知度が低い!)
地域が限定され、数量が少なく、加工用の用途が多いことから家庭用の商品がどうしても少なくなります。おいしく、優れた特徴を多くの皆様にお届けしたいのですが、それができないため、こめ油の認知度が低いという悩みがあります。
先にも述べましたが、日本植物油協会の会員企業は少ないながらも家庭用の商品の供給にも力を入れています。お店で発見したら、是非お試しいただきたいものです。
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