油糧種子の需給に不安材料 ― 主要産地を襲う異常高温と乾燥もしくは多雨 ―
2.逼迫基調が強まるEUの菜種需給

(2)EUで急増する菜種需要と供給不安

 菜種の国際需給に大きい影響を及ぼす存在となったEUは、菜種の生産拡大を推進しており、オイルワールド8月24日号は、「2007/08年の生産量は1,740万トンと過去最高の水準になると見込まれる。しかし、この数値は期待されていた数量を下回るものである」と伝えています。

 晩春から夏にかけて全欧を襲った猛暑と局地的な異常気象は、菜種の収量を低下させる結果となりました。春は記録的に暖かい気候に恵まれ、播種が順調に進み、作付面積も増加しました。しかし、開花期における異常な高温が収量を大きく後退させました。

 また、5月にはポーランドを中心に極端な低温(Freezing temperature)が菜種の初期成育に大きい影響を与え、収量の減損を生じました。過去最高水準の豊作にもかかわらず、EUは菜種の供給不足となる懸念があり、国際市場で不足分の調達を行うことが予想されます。
 
 一方、需要はバイオ燃料需要が依然として強く、EUで生産される菜種油782万トンのうち500万トンが消費されると予測されています。これに加えて、食用需要の増加が見込まれています。

 EUでは、菜種油はおもにバイオ燃料に利用され、食用需要はその他の油で充足するという考え方が広まっているようです。しかし、食用需要向けに期待されるひまわり油が十分に供給できないため、菜種油に対する食用需要が高まるという状況が生じています。ひまわり生産の中心地である黒海沿岸国(ウクライナ、ロシア、ルーマニア、ブルガリア、トルコ)が高温・乾燥に見舞われ、ひまわりの生産が激減したことがその理由です。これらの国は各国へのひまわりの主要な供給国でしたが、この減産ため輸出に多くを割くことができず、世界的にもひまわりの供給不足が免れ得ない状況にあります。

 これに加え、EUの2008年産菜種の生産に不安感が生じています。

 多くの農家は、菜種から小麦へ生産をシフトするのではないかと見込まれています。世界的な小麦需給が逼迫する中で小麦の価格が上昇し、菜種の収益性を上回る状況にあることと、適正な輪作体系の確立のため増えすぎた菜種から他の作物へ転換する必要があることによるものと考えられます。

 バイオ燃料が急速な菜種需要を喚起したEUにおいて、今後の菜種の供給不安が現実のものになる懸念が生じています。


【 表2 EUの菜種油需要の推移 】

表2 EUの菜種油需要の推移
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