油糧種子と植物油の国際市場は、バイオ燃料という新しい需要の登場により需給構造に大きい変化が生じ、国際価格が上昇を続けていることはこれまでにもご紹介してきました。
また、油糧種子だけではなく、小麦、大麦、とうもろこしなど穀物類の価格も並行的に上昇し、世界的な農産物価格高騰時代を迎えています。
このため、原料供給を海外に依存する食品産業や畜産業は大幅な生産コストの上昇を余儀なくされています。私ども製油業においても、原料の国際価格の趨勢に沿った水準へ製品価格を改定することをお願いしてきましたが、油糧種子と植物油の国際価格は5月中旬以降更に高い段階に達し、今後も上昇の気配を見せています。
世界の油糧種子価格を牽引するシカゴ市場における大豆の価格は、5月中旬以降1ブッシェル当たり8ドル台に上昇しました(図1参照)。
【 図1 大豆及び大豆油の国際価格の推移 】
(シカゴ市場、期近ものの価格)
大豆を含む油糧種子の需給は、南米における大豆生産の着実な拡大もあり、当面の不足を懸念する必要はありませんが、2007/08年度には、需要が一層増加する一方、生産が減少するため供給不足の懸念があることが予測されています。この先行きの需給予測により、投機資金の介入もあって、油糧種子と植物油の価格が上昇を続けています。
油糧種子の需給構造は、バイオ燃料需要の登場により大きく変わってきました。
【1】 引き続く中国、インドにおける植物油の食用需要の急速な増加に加え、
【2】 EUにおけるバイオディーゼル生産の拡大による新たな植物油需要の発生、
【3】バイオエタノール向けとうもろこし生産の拡大による大豆生産の減退(アメリカ)、
が、需給を規定する大きい要因になりました。
オイルワールド誌は、6月8日発刊の週報において、2007/08年の第1回需給予測を行っていますが、それによると、主要油糧種子の生産量を4億トン、需要量を4億1千万トンと見込み、その結果、年度末(2008年7月末)在庫率が16.7%に低下するとしています。
油糧種子の生産が減少する最大の要因は、アメリカにおいてとうもろこしの作付けが拡大することに伴って大豆の生産量が大幅に減少することにあります。アメリカ農務省は、6月12日、定例のOutlookにおいて、本年のとうもろこし作付面積が前年より15.5%拡大する一方、大豆の作付面積は約11%減少し、生産量が2006年に比べて約1,200万トン減少すると予測しました。オイルワールド誌の予測は、このようなアメリカの事情を背景に、チリ沖の海水温度が低下するラニーニャ現象がアメリカの大豆生産地域に高温・干ばつをもたらすおそれがあることを懸念しています。
かって、2003年に干ばつによりアメリカの大豆生産量が前年より800万トン減少した際には大豆の価格がブッシェル当たり10ドルにまで高騰するという経験をしましたが、需要がこれまでになく強いという環境で、生産量の減少幅が更に大きいことが価格にどのような影響を及ぼすのでしょうか。上記のオイルワールド誌予測によれば、2007/08年度の大豆の平均価格は前年より17%程度上昇すると見込み、10ドル台の価格を示唆しています。
大豆だけではなく菜種の価格も上昇を続けています。ウィニペッグ市場の菜種価格は、6月には1トン当たり400カナダドルを伺う水準で、昨年同期に比べ約100ドル上昇しています。これに加え、カナダドル高が進んでいるため、実際の取得価格の上昇は更に大きいものとなっています(図2参照)。
【 図2 菜種の国際価格の推移 】
(ウイニペッグ市場、期近もの月間平均)
大豆油、菜種油の価格もバイオディーゼル需要により上昇を続け、油糧種子の価格を牽引してきました。シカゴ市場の大豆油価格は6月中旬には1ポンド当たり36セントと史上最高の水準に達しました。
また、このところ特に価格上昇が著しいのはパーム油で、オイルワールド誌が伝える最近のロッテルダム市場では1トン当たり800ドルを超え、市場最高値を更新しています。パーム油の国際価格は、大豆油価格の概ね60~70%程度の水準というのが過去の経験則でしたが、最近のロッテルダム市場では、菜種油、大豆油、パーム油がともに1トン当たり850~900ドルを示しています。
原材料を海外に依存する日本の製油産業は、これら価格の高騰に加え、大豆1トン当たり80ドルにも達した海上輸送費、円安に振れる為替市場の影響を受け、原料取得コストが一層上昇しています。これらに対応した適正な製品価格の調整を、これからもお願いしなければならないと考えております。
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