大豆の国際需給は菜種とは様相を異にします。昨年12月13日にUSDAが公表した需給予測(Outlook)では、アメリカの2006/07年産大豆は史上最高を記録するかもしれないことを伝えています。また、播種期の最中である南米についてもブラジル、アルゼンチンともに作業が順調であり、生産がやや増加する見込みを伝えています(表2、表3参照)。
この予測において、大豆の消費量、特に製油用の消費量が急速に増加していることが特徴的ですが、それでも期末在庫は最近年では最も高い水準にあります。
【 表2 世界の大豆需給予測(単位:百万トン)】
【 表3 主要国の大豆生産量予測(単位:百万トン)】
通常であれば、この1年間の国際需給は緩和した状態にあり、価格は軟調になりますが、現実の国際価格(シカゴ先物市場)は、3年前の1ブッシェル当たり10ドルには及びませんが7ドル近い水準で推移し、更に上昇の気配が見られます。
この背景には、次のような事情があると見られます。
【1】生産拡大の可能性に比較してより高い需要の増加が見込まれるという長期的懸念があること。
【2】バイオディーゼル需要を反映して植物油価格が上昇しており、これに牽引されて大豆価格も上昇し、大豆価格の上昇が植物油価格を押し上げるという循環にあること。
【3】アメリカ、ブラジルでとうもろこしを原料とするエタノール製造能力の拡大が図られており、このため、とうもろこしの生産が増加し、競合する大豆の生産が減退する可能性があること。
※アメリカの大豆は主としてコーンベルトと称される地帯で生産され、常にとうもろこしと作付が競合しています。既にエタノール生産のため4千万トンのとうもろこしが使用されていると見込まれますが、更に7千万トンにまで拡大するという予測があります。
加えて、エタノールが製造された残滓の大量発生が大豆ミールと競合することから、これが大豆の生産拡大を制約することも予想されます。
バイオ燃料は、アメリカ、EUにおいて高い補助措置により支えられており、更に、日加なたね協議では、カナダも補助措置(燃料税の減税)の検討が進められているとの報告がありました。この補助措置は、“環境対策への補助”であり、WTOが原則削減の対象とする農業補助には当たらないという解釈がされていますが、現実には農業生産者への恩典となっています。
また、石油価格が低下すればバイオディーゼルが有利性を失うことになりますが、昨年11月にアメリカ大豆協会日本事務所が開催した「2006年産アメリカ大豆品質展望会議」で講演された John Baze 氏は「現行の補助措置を前提として、石油価格が1バレル50ドルを超え、植物油の価格が1ポンド30セント程度であれば、有利性は継続する。」という見解を示されました。
石油価格は一時の高騰から落ち着きを取り戻していますが、なお60ドル台を維持していますから、バイオディーゼルの有利性が保たれています。したがって、“需給緩和なのに価格が上がる”ことが一時的な奇妙な現象ではなく、構造的に定着するものと考えることが必要になりました。
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