この会議では、2006/07年度(2006年8月~2007年7月)の需給見込みが、次の表のとおり示されました。このなかで注目したのは、急速に拡大するEUのバイオディーゼル需要でした。
【表2 カナダ産なたねの相手国別輸出量予測 】
この表では、2004/05年には輸出がなかった国(パキスタン、バングラディッシュ、アラブ首長国連邦、トルコ)が、2006/06年に突然に大量の輸出を行い、2006/07年にも同程度の輸出が見込まれていることが目を引きます。また、中国向け輸出も2005/06年に急に増加しています。これらの国で、2005/06年になってなたね油の消費が急に増加するような事情があったのでしょうか。
実は、これらは全てEU向けに“なたね油”を輸出することを目的としたものです。EUは、一部の遺伝子組み換えなたねを承認していないため、カナダからなたねを直接に輸入することができません。しかし、一方では、バイオディーゼル製造に利用するなたね油の需要が後に見るように急速に拡大しています。このため、EUはパキスタンなどの国になたねの圧搾を委託し、製造されたなたね油をEUに輸入し、バイオディーゼルに利用するという“迂回輸入”の手法を利用しています。これらの国で製造されたなたね油を、工業用として輸入すれば、未承認の遺伝子組み換えなたねの問題が回避されることになります。
このような種子の迂回輸入に加え、なたね油をバイオディーゼル用に直接輸入する数量も増加しており、2005/06年度には20万トン近いなたね油をカナダから輸入すると見込まれます。これは、およそ50万トンのなたねに相当する数量ですから、迂回輸入のなたねを含めると、EUは約170万トンのなたねを輸入することとなります。
また、表1に戻ると、カナダ国内の製油企業による圧搾数量が350万トン余に達することが示されています。更に、カナダ国内ではEUのバイオディーゼル需要を見込んで製油企業が製造能力を高める動きが進み、カナダのなたね生産と関連産業の間で“バイオディーゼル・ブーム”が巻き起こっていると言っても過言ではありません。
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