日本人の平均的な脂質摂取はこの20年ほど変化しておらず、平均的には、総摂取エネルギーに対する脂質エネルギー比率が20-25%、飽和脂肪酸:モノ不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の摂取比率が3:4:3、n-6脂肪酸/n-3脂肪酸比が4の水準を維持しており、世界的にみても非常にバランスの良い理想的なものといえます。脂質摂取バランスが良いのは、魚類を多く摂ることも一因ですが、植物油としてn-3系リノレン酸を比較的多く含む大豆や菜種を中心に摂っていることもあります。
また、私たちは、脂質を植物油など目に見える油脂として摂取しているだけではなく、肉・魚・乳製品あるいは加工食品から見えない油としても摂っています。日本人は(図2)のように、植物性の油と動物性の油を概ね半分ずつ摂取し、その動物性油脂のほとんどを見えない油として摂取しています。欧米で脂肪摂取エネルギー比が高く、飽和脂肪酸摂取量が多いのは、この見えない油脂の摂取が多いからと考えられます。日本人が見える油、つまり植物油として摂る量は油脂全体の摂取量の4分の1で、1日に15g(大匙1杯程度)ですから、好ましい植物油を選び、その効果を十分に引き出すためには、それ以外に摂取する油脂、特に見えない油の質や量を考えなければなりません。
日本人の脂質摂取量が理想的であるといっても、それはあくまでも“平均的に見れば”ということで、現実の脂質摂取は非常に個人差があり、欧米型の食生活をしている人も多いので、これを無視してしまってはせっかく健康に良いと思う油をとっても効果が得られません。
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