植物油の栄養問題を問い直す
オレイン酸とリノール酸

 地中海式ダイエットが話題となり、食材として使用されるオリーブ油に多く含まれるオレイン酸(OA)の効能が注目されるようになりました。OAは血中の善玉コレステロール(高比重リポタンパク質;HDL)は下げずに悪玉コレステロール(低比重リポタンパク質;LDL)だけを低下させる機能があるとされています。しかし、このような研究のほとんどは、一日の脂質摂取エネルギー比が40%を超える欧米における研究成果であり、脂質摂取エネルギー比が25%程度で、多価不飽和脂肪酸を多く摂取している日本人では、OAを摂取してもそれほどの効果はありません。リノール酸などの多価不飽和脂肪酸の方が血中コレステロールを低下させる作用が強いからです。

 また、OAは脂肪酸の二重結合が1つしかないので、分子内に多くの二重結合を持つ多価不飽和脂肪酸よりも化学的に安定していて、酸化されにくいという特徴があります。酸化されにくい油は揚げ物に使用したときにはからりと仕上がり、油はねしてもべとべとになりにくいというメリットがありますし、体の中に入ったときにも酸化されにくいので、血中LDLの酸化変性を受けず、動脈硬化になりにくいのではないかと考えられています。しかし、この点についても、特に日本人において、現在の多価不飽和脂肪酸よりOAの方が有効であることを裏付ける大規模な研究結果の蓄積は、現在のところありません。

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